この記事は2024年5月時点の内容です。
猫と一緒に住んでいる身としては、こんなに興味をそそられるうれしいニュースはないですね!猫だけに限らず、動物と暮らしている人は、寿命について一度は考えたことはあるのではないでしょうか。
今回は東京新聞で取り上げられた『猫の寿命を30年に 腎臓病の治療薬 完成間近 東大辞め起業の宮崎さん』のニュースを紹介します。
目次
猫の死因の1位は泌尿器疾患
家猫の寿命は平均12年〜18年と言われており、外猫の場合平均寿命は2〜3年程と言われています。家猫と外猫の場合で10年以上も寿命に違いがあることにはおどろきですが、外猫は死因の原因として外的要因が多く、約10年寿命の変化はありません。
動物病院からの報告によると、猫の死因の原因として上位に上げられるのは、泌尿器系の疾患・腫瘍・循環器系の疾患・感染症で、その中でも泌尿器疾患が最も多く全体の約3割を占めることがわかりました。
参考:『動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命 と死亡原因分析』
腎臓病の治療薬開発取り組む宮崎博士
2022年3月末に東京大学大学院医学系研究科を退職して立ち上げた研究機関「AIM医学研究所」の代表理事の宮崎徹博士は、猫の腎臓病の治療薬開発に取り組んでいます。
2021年に研究費が打ち切られ研究を中断しなければいけない状況が報道されると、全国の愛猫家から3億円近い寄付金が殺到し、現在は起業し研究もヤマ場を迎えているそうです。
宮崎博士は、「猫の寿命を30年に延ばすことも可能」と薬の可能性に期待しています。
猫の寿命を伸ばす治療薬とは
治療薬の要となるのがAIM(apoptosis inhibitor of macrophage)と呼ばれる宮﨑さんが発見し1999年に論文発表した血中タンパク質です。
血中たんぱく質のAIMについて
AIMは、抗体の一種であるIgMに結合した形で血液中に存在しています。健康時にはほとんどのAIMはIgMに結合することで、不活性状態になっていますが、体の中に細胞の死骸や形が崩れたタンパク質、死んだ細胞から放出される炎症を惹起(※1)する分子、重合したタンパク質など、そのまま体内に放置されると様々な病気の原因になるような「ゴミ」がたまってきますと、AIMはIgMから離れ、こうしたゴミと結合します。
このゴミに結合したAIMが目印となって、マクロファージを始めとした、ものを食べる細胞(貪食細胞)が、AIMごとゴミを食べて掃除します。こうしてゴミは常に掃除されており、私たちの体は病気にならないように守られています。
ところが、生まれつき持っているAIMの量が少なかったり、AIMが働かなかったり、あるいは十分な量のAIMを持っていても、大量のゴミが出て自分のAIMでは処理できない場合などに、ゴミはうまく片付けられずに体の中に蓄積し、その結果色々な病気が発症し悪化していきます。
すなわち、健康でいるか病気になるかは、体の中で出るゴミの量と、AIMと貪食細胞がそれを掃除する力とのせめぎあいで決まると言えます。
※1:惹起(じゃっき)とは、問題や事件を引き起こすこと。事象を誘発すること。
引用:研究概要 AIMとは 『AIM医学研究所』
猫にはAIMがどう関係するのか
他の動物に比べ、ネコは腎臓病の頻度が突出して高く、多くのネコが腎臓病で亡くなることはよく知られています。その原因は長く不明で、人間の腎臓病と同じくその確実な治療法もありません。
私たちは、腎臓にゴミがたまってもネコのAIMはIgMから離れず掃除ができないため、腎臓にゴミが持続的に蓄積し慢性的な炎症が生ずることが、ネコの腎臓病の重要な原因であることを突き止め、2016年に論文発表しました。
すなわち、猫の腎臓病は先天的にAIMが働かないことによる一種の遺伝病であると言えます。AIMが働いていないから腎臓病になるのですから、当然AIMを補えば腎臓病は防げるはずです。
そうした考えから、ネコ用AIM薬の開発を開始しました。早い時期からAIMを定期的に与えゴミを掃除しておけば、そもそも腎臓病の発症は抑えられるでしょうし、進んでしまった腎臓病でもAIMの投与により進行を抑え、長期的には腎機能の回復の可能性もあると考えられます。
引用:研究概要 ネコとAIM 『AIM医学研究所』
薬の完成に期待!
「寿命が伸びる」だけ聞くと魔法のような言葉ですが、実際に研究技術や宮崎博士のような研究者のおかげで、愛する動物たちの寿命が伸びるのはとてもうれしいですね。ニュースから今後も目が離せません!
実は編集者Sは研究が中断になるという記事を見て、少額ではありますが寄付をしました。宮崎博士は人間の腎臓病の薬についての研究は国の研究費から、猫の腎臓病については寄付や企業の支援から研究を行っているそうです。
是非寄付に興味のある人は、チェックしてみてください!猫だけでなく、すべての動物たちが心も身体も健康に生き続けられることを願っています。
参考
・東京新聞『猫の寿命を30年に 腎臓病の治療薬 完成間近 東大辞め起業の宮崎さん』
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