- クラゲの中には毒(刺胞)を持たないクラゲがいる
- 体が七色にキラキラ光っていたらクシクラゲの可能性が高い
- ウリクラゲはカブトクラゲが大好物
ツノクラゲ
海水浴をしていたら、チクリ!「痛い」と思ったら赤く腫れて…。そんな思いをした人も多いでしょう。海にはクラゲがつきもので、クラゲといえば刺すもの。そう思っていませんか?
実はクラゲの中には刺胞(毒針)を持たない種類もいるのです。
今回は毒を持たない、刺さないクラゲについて、山形県鶴岡市にある加茂水族館・クラゲ担当飼育スタッフの池田さんにお話を聞きました。
◆取材・監修:飼育スタッフ
1987年生まれ。2011年北里大学大学院水産学研究科卒業後、いおワールドかごしま水族館、すみだ水族館の勤務を経て、2015年に鶴岡市立加茂水族館入社。加茂水族館のクラゲ担当飼育スタッフとして活躍中。
目次
有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)に属するクシクラゲとは?
トガリテマリクラゲ
クラゲには大きく下記の2種類に分けられるそうです。
- 刺胞動物門に属する刺胞(毒針)を持つクラゲ
- 有櫛動物門に属する刺胞を持たないクラゲ
有櫛動物門のクラゲは、櫛板(くしいた)と呼ばれるクシのような繊毛を体の表面に持っています。
通称「クシクラゲ」と呼ばれる、有櫛動物門に属する刺胞を持たないクラゲについて、池田さんに解説してもらいました。
毒針を持つクラゲの生態はこちらをチェック 【あわせて読む】
触手を使ってプランクトンを捕食する有触手綱のクラゲ
カブトクラゲ
有櫛動物門のクラゲは触手を持つもの、持たないものの2つに分類されます。はじめに有触手綱に分類される触手を持つクラゲについて聞きました。
触手のあるクシクラゲには、触手に膠胞(こうほう)という粘着細胞があります。この粘着細胞を使ってエサをつかまえます。この触手に毒はありません。
ただフウセンクラゲモドキというクラゲは、ほかの刺胞動物門のクラゲを食べ、食べたクラゲの刺胞を自分で使うことがあります。
有触手綱に属するクラゲの種類
- オビクラゲ
- キタカブトクラゲ
- チョウクラゲ
- ツノクラゲ
- カブトクラゲ
- フウセンクラゲ
- フウセンクラゲモドキ
クラゲが大好物!意外と豪快な無触手綱のクラゲ
シンカイウリクラゲ
触手を使ってエサをつかまえることのできない、触手のないクシクラゲですが、一体どうやってエサをつかまえるのでしょうか?
無触手綱のクラゲは、触手がない代わりに口の周りに膠胞があります。ほかの種類のクラゲを食べることも多く、ウリクラゲなどは有触手綱のカブトクラゲが大好物で、自分よりも大きなカブトクラゲを食べることもあります。食事シーンはかなり豪快ですよ。
無触手綱に属するクラゲの種類
- ウリクラゲ
- アミガサクラゲ
- シンカイウリクラゲ
クシクラゲってどんな生き物?
カンパナウリクラゲ
まだまだ研究されていないことが多く、その生態には謎の多いクシクラゲについて、池田さんにいろいろ質問してみました。
雌雄同体って本当?
クシクラゲには性別がなく、雌雄同体(しゆうどうたい)だと聞きますがそれは本当なのでしょうか。池田さんに疑問をぶつけてみると…。
ほとんど雌雄同体です。ただ全部が雌雄同体かといわれると、一部雌雄異体だといわれている種類もいます。まだそこまで研究が進んでいないので、厳密にはわからないというのが本当のところですね。
クシクラゲにはポリプの状態はない?
刺胞動物門のクラゲには、岩や貝殻などにくっついて生活する「ポリプ」と呼ばれる状態の期間がある種類が多いそうです。一方でクシクラゲには、このポリプの状態はないのだと池田さんはいいます。
クラゲの種類によって生活環は違いますが、ポリプの状態があるのは刺胞動物門のクラゲだけで、クシクラゲにはポリプの世代がありません。
クシクラゲは雌雄同体であることがほとんどで、ひとつのクラゲの体の中に精子と卵が存在するため、受精卵の状態で生まれてくるのです。
ひとつのクラゲの体の中から受精卵が生まれて来るのですね。
一部着底生活をするクシクラゲもいますが、生まれたときからクラゲの形をしていることが多く、一生ふわふわと海の中を漂って生活するクシクラゲは多いです。
虹色に光って見えるのはどうして?
海の中でキラキラと光る透明なクラゲの姿を見たことのある人も多いでしょう。
虹色に光って見えるのは、そのほとんどがクシクラゲなのだそうです。ここではキラキラと虹のように光る、クシクラゲのメカニズムについて聞きました。
クシクラゲは体表に櫛板(くしいた)と呼ばれる繊毛の束をもっています。この櫛板が動くことでクシクラゲは泳ぐことができるのです。
この櫛板が当たった光を反射することで、キラキラと虹色に光って見えます。光を反射して光るのはクシクラゲの特徴なんですよ。
クシクラゲにも刺されることがある?
オビクラゲ
有櫛動物であるクシクラゲにも刺されることはあるのでしょうか?有触手綱のクラゲの触手にも刺されることはあるのか、池田さんに解説してもらいました。
クシクラゲの触手の役割とは?
「クシクラゲの持つ触手には毒はない」と池田さんは話してくれました。では、クシクラゲの持つ触手にはどのような役割があるのでしょうか。
クシクラゲの触手には毒はありませんが、エサをつかまえるのに使われます。触手は切れてしまっても、何度でも再生しますが、体は傷ついてしまうと再生できません。これは刺胞動物門のクラゲも同じです。
触手は再生するけれど、体は傷つくとどうなるのでしょう?
傘の部分が傷つくと修復できないのはクシクラゲも刺胞のあるクラゲも同じで、一度傷ついてしまうとそのままボロボロになってしまいます。
クシクラゲにも毒はあるの?
クシクラゲにも毒はあるのでしょうか?刺されると痛いなどの症状があるのか、池田さんに聞きました。
有櫛動物門のクラゲには毒はありません。
ですが例外として刺胞動物門のクラゲを食べ、その刺胞を自分で利用する『盗刺胞』を行うクラゲがいます。フウセンクラゲモドキなどがそれにあたります。
刺胞のあるクラゲを食べて刺胞を体内に貯めておくということでしょうか?
そうです。貯めた刺胞を使えるため、うっかりふれると刺されてしまう可能性がありますから、注意が必要です。
あまりクラゲにはさわらない方がいいですね。
人がふれると壊れてしまう繊細なクラゲ
池田さんがクラゲにはさわない方がいいというのには、もう1つ理由があるのだそうです。
クラゲはとても柔らかい生き物です。刺胞のありなしに関係なく柔らかいため、人がさわることで、壊れてしまいます。
壊れてしまうと再生できないため、できるだけさわらないようにしてください。
意外性がいっぱい!美しくて謎の多いクラゲを楽しもう
キタカブトクラゲ
毒針を持たないクシクラゲについていろいろお話を聞きました。刺胞は持たなくても、刺胞のあるクラゲを食べて、その刺胞を自分で利用するクラゲもいるという驚くようなお話も聞けました。
自分の体よりも大きな別の種類のクラゲを食べるクラゲがいることも、池田さんが教えてくれました。
知っているようで知らないことの多いクラゲの世界。次に水族館に行ったら、びっくりするようなクラゲの生態を自分の目で確かめてみてください。
加茂水族館の公式YouTubeチャンネルでは、毎週土曜日にオールナイトでクラゲの様子をライブ配信。週によって違う種類のクラゲの様子を配信しているそうなので、土曜の夜はクラゲナイトを楽しみましょう!
◆施設情報
加茂水族館
所在地:山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
入館料:一般1,500円(団体1,350円)・小中学生500円(団体450円)・幼児無料・年間パスポート3,000円 ※学校行事やシニア料金あり。公式HPを参照してください
営業時間:9:00〜17:00 ※最終入館は16:00まで
駐車場:500台