この記事は2024年10月時点の内容です。
- シャー猫は、人と一緒に暮らすことに慣れていない
- シャーシャーしてしまうところも一つの個性
- ハンデがある猫は優先的に殺処分されてしまうケースも多い
- シャー猫だけではなく、“譲渡先の決まりにくい”猫のずっとのおうちも探したい
メイン画像:https://www.instagram.com/p/C4ff1bvp1vZ/?img_index=1
SNSで話題になっている「シャー猫譲渡会」を知っていますか?警戒心が強く、人に馴れていない「シャー」と威嚇をしてしまう猫たち。少し怖いイメージのあるシャー猫たちも、ずっとのお家を探しています。
今回は、そんなシャー猫だけが参加する「最強の保護猫譲渡会」を主催している、保護猫カフェ「ねこかつ」さんにお話を伺いました。
なかなか里親が決まりにくいシャー猫たちを主役にした「シャー猫譲渡会」には、どんな想いが込められていたのか――。シャー猫の意外な魅力についてもご紹介します。
◆取材・監修:保護猫カフェ「ねこかつ」
1994年生まれ埼玉県出身。幼少期より動物が好きで、自身が小学校3年生の頃に知り合いから保護猫を迎える。中学生の頃吹奏楽部に入ったのをきっかけに一時は音楽の道を志し、音楽高校、大学と通ったが、やはり動物を助ける仕事に就きたいと卒業後は保護猫団体や動物病院などで働き始める。2019年より『保護猫カフェねこかつ』で常勤スタッフとして勤務開始。現在に至る。
目次
家族を探す猫たちと出会える、保護猫カフェ「ねこかつ」
画像:https://www.instagram.com/p/C-sOCS8JS3S/(ねこかつ圧迫排泄5の颯くん)
今回お話を聞いたのは、保護猫カフェ「ねこかつ」さん。ねこかつは家族を探している「保護猫」と会える場所です。
川越店と大宮日進店の2店舗を運営しており、2024年7月には南青山にオープンした「D-Lab Cafe」の1階にも、ねこかつの猫と出会える保護猫カフェができました。
ねこかつは保護猫カフェだけではなく、保護猫の譲渡会や野良猫のTNR活動(※)なども行っています。
※TNR…Trap・Neuter・Returnを略した言葉で、捕獲器などで野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術(Neuter)を行い、元いた場所へ返す活動
ねこかつの店舗や非公開のシェルター、提携している預かりボランティアを合わせると、約200頭の保護猫たちが里親さんを待ちながら暮らしています。
“誤解”されやすい「シャー猫」が集まる譲渡会?!
画像:https://www.instagram.com/p/C3q_SU6pOOD/?img_index=1
シャー猫譲渡会とは、人に慣れておらず威嚇をしてしまう「シャーシャー猫」だけが参加する保護猫譲渡会です。
ねこかつさんが初めてシャー猫譲渡会を開催したのは、2024年の2月。譲渡会には44頭のシャー猫を連れて行き、18頭が里親さんにつながりました。
「シャー猫」をメインにした譲渡会を開催したきっかけは?
ねこかつさんが「シャー猫」をメインにした譲渡会を開催したきっかけを伺いました。
シニア猫や人馴れしていないシャー猫は、引き取り手が見つかりにくいことが一番の理由です。
シニア猫やシャー猫は、里親が見つかりにくいのですね。
保護されるのは子猫だけではなく、成猫やシニア猫、病気や障がいをもった猫もいます。特に警戒心が強く「怖い」という印象を抱かれるシャー猫にも里親さんを見つけてあげたいと思い、「シャー猫譲渡会」を企画しました。
本当は臆病なだけ…「シャー」と威嚇してしまう理由
野良生活が長い子が元野良で4〜5歳を超えた成猫がシャー猫になるケースが多いと萩原さんは話します。人と一緒に暮らすことに慣れていないことが主な理由だそうです。
元々の性格が臆病な子や、本能的に警戒心が強い子もシャー猫になってしまうケースがあります。
シャーと威嚇をしてしまうのも、基本的には猫の暮らしてきた環境や性格、そして個性のひとつです。
譲渡会が“シャー猫”を知るきっかけに
実際に、シャー猫譲渡会に参加した人から寄せられた声について伺いました。
譲渡会の参加者の中には、シャー猫の存在を知らない人もいました。SNSで多くの人にシェアをしてもらい、まずはシャー猫の存在を知ってもらうきっかけになりましたね。
シャー猫譲渡会が、シャー猫の存在を知ってもらう良いきっかけになったのですね。他にはどんな方がいらっしゃいましたか?
「自分で保護した子が元々シャー猫ちゃんだったので、私なら経験があるから飼えるかもしれません」と言って、実際に里親として家族に迎えてくれる人もいらっしゃいました。
実は怖くない!「シャー猫」の“意外”な魅力
画像:https://www.instagram.com/p/C_m9DqlpNp7/(ムーラン様も人馴れをがんばってます)
シャー猫の魅力はどのようなところにあるのでしょうか?ねこかつさんに聞いてみました。
「シャー猫」と聞くと、少し怖いイメージをもってしまう人もいると思いますが……。
そんなことはありません。実はシャー猫って、自分から襲いかかる子はあんまりいないんです。こちらから無理にさわろうとすると、猫の防衛反応が働いてしまうだけなんですね。こちらから嫌なことをしないかぎりは大丈夫です。怖がらずに会いにきてみてください。
怖い猫だと感じたり、攻撃されたりするイメージがあるシャー猫。実は人間が、猫が嫌がることをしなければ、手が出てしまうことはないそうです。
シャー猫であってもおやつが好きな子やおもちゃで遊ぶのが好きな子もいます。また、時間や愛情をかけて接していると、なついてデレデレのかわいい姿を見せてくれる子になることも。かわいいギャップが見られるのも、シャー猫の隠れた魅力だそうです。
シャー猫は心を開くまで時間がかかることもあり、触れるようになるまでに時間がかかります。猫のペースに合わせて暮らしたり、触れなかったとしても「猫がいるだけでも楽しいし、癒される」と考えられる人におすすめです。
シャー猫が心を開いていく過程を見守る楽しみも
シャー猫に里親が見つかりにくいことをわかっていて、シャー猫譲渡会に参加していただいている方も少なくないそうです。
シャー猫と暮らす楽しみは、どのようなところにあるのでしょうか?実際に、シャー猫を家族に迎えた方の声をねこかつさんに伺いました。
若いシャー猫ちゃんは家族に迎えられた後、少しずつ慣れて、甘えてくる様子が見られるようになった、と聞きました。
また、以前お迎えしたシャー猫ちゃんが慣れてしまいシャーシャー言わなくなって物足りないから、次のシャー猫を迎えたいというもの好きな人もいらっしゃいますね(笑)
シャーシャーしなくなると、物足りなさを感じる方もいるのですね。
そうなんです。甘えんぼになってしまったので、もう1回シャー猫をお迎えして人馴れを進めたいと。
シャー猫の心を開いていくその過程を見守り、楽しみたいとおっしゃる人が多いですね。人つの個性として、シャー猫との暮らしを楽しんでもらえたらなと思います。
シャー猫と楽しく暮らせる人の特徴は?
先ほど伺ったお話にもあったように、シャー猫と暮らすことで得られる楽しみもあるそうです。シャー猫と楽しく暮らしやすい人の特徴などはあるのでしょうか?ここでは、シャー猫をお迎えすることをおすすめする人の特徴や、条件を紹介します。
- 心を開いて人馴れしていく過程を見守りたい人
- 猫1匹の時間を作ってあげられる人
- お世話や体調チェック、愛情は大前提として必要
シャー猫ちゃんを家族に迎えた方の声にもあったように、心を開いて人馴れしていく過程を見守りたい方におすすめです。シャー猫とじっくり向き合う気持ちの覚悟があれば、一緒に暮らしているだけで楽しい暮らしになるはずです。
甘えん坊の猫ちゃんの場合は、構ってあげないとかえってストレスになることもありますが、シャー猫ちゃんはさわられるのを嫌う子が多いため、あえて構いすぎないでいいところも特徴です。1匹の時間を作ってあげたほうがいい猫ちゃんもいることを、覚えておきましょう。
シャー猫たちと暮らす・お迎えするうえでの注意点
シャー猫のお迎えを考えたときに、暮らすうえでの注意点はあるのでしょうか?ここではシャー猫と暮らす・お迎えするうえでの注意点を解説します。
- 最初はケージで飼育する
- 最初は構いすぎないようにする
- 安心できる囲われた空間を用意する
- 爪切りや病院などは工夫が必要かも
シャー猫は基本的に警戒心が強く、怖がりな子が多いため、最初はケージで飼育をしましょう。いきなりお部屋に放ってしまうと、ソファなど家具の下に隠れて出てこないことがあり、食事や排泄に影響が出てしまうからです。
囲われている空間を用意し、目隠しをかけてあげて、最初はそっと見守るようにしましょう。
人馴れしていないため、病院に連れて行くときや爪切りなどは少し大変かもしれません。シャー猫ちゃんのお世話は、洗濯ネットや目隠しなど、技術や工夫などが必要になってきます。
シャー猫だけではなく、“譲渡先の決まりにくい”猫のずっとのおうちを探したい
画像:https://www.instagram.com/p/C-sOCS8JS3S/(シニア猫の新水さん)
ねこかつは、シャー猫だけではなく、“譲渡先の決まりにくい”な猫のずっとのおうちを探したいと考えています。ねこかつで暮らす、ハンデのある猫たちの話を伺いました。
現在、川越店には40頭ほどの猫たちがいると伺いました。どんな猫たちが在籍しているのでしょうか?
ねこかつでは、いろいろな性格や特徴の猫に出会えます。下半身麻痺や手足の奇形など、ハンデのある子も一緒に暮らしています。圧迫排泄が必要な子も5頭在籍中です。
下半身麻痺で高いところに登れない子が、ある日キャットタワーの上を見つめていたので、前足をポールにかけてあげたら、自分で登っていったんですね。そこから登り方を覚えて、前足だけで登るようになりました。
ハンデがあっても猫の適応能力は高いため、他の猫たちと同じように暮らしているそうです。
ハンデがある子は優先的に殺処分されてしまうことも…
現実として、ハンデがある子を愛護センターから引き出せる保護団体は少ないです。シャー猫はさわれないため、お世話が難しい猫も多く、不清潔なまま放置されるケースや、引き取り手がないと判断されて優先的に殺処分されてしまいます。
エイズ・白血病・シニア・障がい・負傷した猫などが、どうしても殺処分対象に入りやすい現状があります。その中でもねこかつさんは、ハンデや緊急性のある猫をセンターから優先的に引き出しているそうです。
シャー猫に続いて、シニア猫やエイズ猫の譲渡会も開催予定
ねこかつではシャー猫に続いて、シニア猫やエイズ猫の譲渡会も計画しています。
2024年9月16日の敬老の日には「シニア猫の譲渡会」を開催しました。シニア猫は高齢のため、譲渡先がなかなか見つからず、保護施設で亡くなってしまう子もいます。ねこかつでは、ご自宅で看取ってもらえたほうがいいと考え、条件さえ合えば、保護猫が譲渡されにくい高齢の方でも猫を譲渡しています。
また、猫エイズ陽性でも、エイズを発症して亡くなる確率と、エイズを持っていない猫が疾患で亡くなってしまう確率は同じくらいといわれています。エイズにかかっていても発症率は低く、長生きできる子もいるそうです。
エイズは血液感染なので、基本的に多頭飼育も大丈夫だといわれています。エイズだからといっても構える必要はないです。“譲渡先の決まりにくい”猫にもずっとのおうちを探してあげたいと考えています。
すべての猫に、ずっとのおうちが見つかってほしい
画像:https://www.instagram.com/p/C_PzyuWpxaQ/?img_index=2(目は見えないけれどかわいいボニーちゃん)
この記事では、シャー猫だけが参加する保護猫譲渡会を主催している、保護猫カフェ「ねこかつ」さんにお話を伺いました。
なかなか里親が決まりにくいシャー猫たちを主役にした「シャー猫譲渡会」には、「すべての子にずっとのおうちが見つかってほしい」というねこかつさんの想いが込められていたことがわかりました。
シャー猫にもかわいい魅力があり、シャーシャー言わなくなると物足りなくなってしまう人がいることも驚きでした。
病気の猫やシニア猫、シャー猫など、ハンデがある子も同じ命です。まずはいろいろな猫がいることを知っていくところから始めて、 保護猫カフェに会いに行ってみませんか?シャー猫に興味を持っていただけたら、あと少し踏み出して引き取りをご検討いただければうれしいなと思います。
◆施設情報
保護猫カフェねこかつ
所在地:埼玉県川越市脇田町8-3 MTFビル3F(川越店)
埼玉県さいたま市北区日進町2-851-1 MKビル2F(大宮日進店)
料金:大人600円/30分(+1ドリンク)※18歳以下の方は、半額となります。
営業時間:12:00〜19:00
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は営業、翌日が定休)、毎月第1火曜日(祝日の場合は営業、翌週火曜が定休)