この記事は2024年5月時点の内容です。

まとめ
  • 犬や猫も花粉症にかかる
  • 犬の花粉症は皮膚に出やすい
  • 猫の花粉症は皮膚の他に鼻水やくしゃみといった症状が出るケースもある
  • 普段から花粉症の対策をしておくことが大切

花粉症は日本人の国民病とも言われるほど、多くの人が悩む症状ですね。

花粉症に苦しむ季節にペットの犬・猫がくしゃみをしたりすると、犬・猫も花粉症なのではないかと気になることがあるのではないでしょうか。

今回のコラムでは犬・猫の花粉症に着目します。花粉症とはなにかをおさらいし、人とは少し異なる犬・猫の花粉によるアレルギーの症状を解説します。花粉の時期に、自宅でできる花粉への対策法も紹介します。

◆監修:獣医師プロフィール

ttm 医師

岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

人だけじゃない!犬・猫の花粉によるアレルギー症状!

人の花粉症がアレルギーの一種だということは比較的よく知られていますね。犬・猫にも花粉によるアレルギー症状が出ることがあります。

この症状を、わかりやすさのために花粉症と説明する獣医師もいるかもしれません。しかし、多くの動物病院では「アレルギー性皮膚炎」や「アトピー性皮膚炎」と診断されることが一般的です。

花粉症のメカニズムをおさらいしよう

人における花粉症の定義は、花粉をアレルゲン(アレルギーの原因物質)とする「季節性アレルギー性鼻炎」です。体に花粉がなんども侵入すると、血液中の免疫システムが花粉に対する「IgE抗体」という免疫タンパク質を作ります。

IgE抗体は「マスト細胞(肥満細胞)」という免疫細胞にくっつき、次に花粉が侵入すると「IgE抗体つきのマスト細胞」が、ヒスタミンなどの炎症性の化学物質を放出します。これが血管や神経などに影響してアレルギー症状が出るのです。

植物によって変わる注意すべき時期

春はスギやマツなどの花粉が飛散する時期です。人が最も花粉症に悩まされる時期ですね。夏はイネ科植物が花粉を持つ季節です。

夏は温度と湿度が高く、もともと皮膚病が増える時期でもあるため、一年の中で最も注意が必要です。特に犬の場合、散歩のコースにイネ科植物が生えていることが多く、これらの花粉が散歩中に体に付着することで症状が出ます。

秋はブタクサなどが飛散する時期なので、夏に引き続き注意が必要です。

人とはちょっと違う、皮膚に症状が出る犬の花粉症

犬の花粉によるアレルギー反応は、体のかゆみ、皮膚の発疹・赤み・脱毛・皮膚のべたつきなどの皮膚症状が一般的です。

人に多い大量の鼻水・くしゃみ・目の充血といった症状は少ないです。理由は上で解説したアレルギー反応に関わる「マスト細胞」の分布の違いにあります。

マスト細胞は、人の場合目や鼻に多く分布しているため、目や鼻に症状が出やすいですが、犬のマスト細胞は皮膚に多く分布しているため、皮膚の症状が強いのです。

人に近い症状が出ることもある猫の花粉症

猫も犬と同様、花粉によるアレルギー症状は主に皮膚症状として出ることが多いです。猫の場合、鼻水・涙・目の粘膜の腫れ・のどの腫れかゆみなど、人の花粉症に近い症状が出ることもあります。

ただし、猫の鼻水やくしゃみは、多くの場合で花粉症よりも感染症などの可能性が高いでしょう。猫の鼻水やくしゃみが続いたり、目に異常がみられる場合は、花粉のせいだと判断せずに動物病院を受診しましょう。

うちの子花粉症?と、思ったら

人の場合、軽い花粉症であれば病院を受診せずに市販の薬などで対処することもあるでしょう。

犬・猫の花粉による皮膚のアレルギーの症状は、放置すると細菌や真菌などの二次感染をおこし、悪化するケースが多いです。ペットの皮膚や体調に異常がみられる時は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

花粉症の症状に気づいたら、まずは病院を受診

動物病院では、犬・猫の症状がなんらかのアレルギー反応だと判断した場合、それ以上の原因の追究よりも症状を緩和させる「対症療法」を中心に進めることが一般的です。

飼い主としては、花粉症かどうかをはっきりさせたいところですが、現在の獣医学領域では、アレルギー検査などを行ってもアレルゲンの特定ができる可能性は大変少ないです。ペットの花粉症が疑われる場合は、獣医師とじょうずに連携しながらペットを楽にしてあげることを考えましょう。

花粉症は根本治療が難しいって本当?

多くのアレルギー反応と同様、花粉に対するアレルギー反応も根本治療はできません。症状を抑えながら、気長につきあう必要があります。

犬・猫の場合、症状が皮膚に出ることが多いので、動物病院で正しいシャンプー方法の指導などを受けると良いでしょう。薬も適切に使い、ペットの生活の質を上げることが大切です。

日頃から花粉症の対策をしよう

花粉へのアレルギー反応の対策は、犬・猫を花粉にさらさないことが一番大切です。犬・猫自身や、飼い主の体に付着した花粉はできるだけ落とし、室内の花粉を持ち込まないなどの対策が必要です。ここでは自宅でできる具体的な花粉の対策方法について解説します。

こまめなブラッシングで花粉を落とす

体に付着した花粉を落とすために、こまめなブラッシングが効果的です。

部屋に花粉が飛び散らないように、まず濡れタオルなどで体を軽く湿らせてブラッシングし、ブラシについた花粉を雑巾などでふき取りましょう。ペットの足元にも、軽く湿らせた新聞紙などを置いておくと、足元に落ちた花粉を簡単に捨てられます。

正しいシャンプー選びと正しい洗い方をする

シャンプーは、花粉を落とすだけでなく、皮膚の状態を良くするために効果的です。ただし、正しいシャンプー剤を選び、正しい方法で行わないと逆効果になります。シャンプーは可能な限り、動物病院で紹介してもらうと良いでしょう。お湯の温度が高すぎるのはNGです。シャンプーしたあとに、すぐに乾かすことも大切です。

部屋に花粉を持ち込まないような工夫をする

外出から帰宅したら、まずはペットの体を濡れタオルで拭きましょう。特に、指の間や股の間、尻尾の下のお尻の部分は見落としがちなので注意が必要です。花粉の多い時期は、飼い主も帰宅後まずはシャワーを浴びるのがおすすめです。難しい場合は、衣服用の粘着性のあるクリーナーなどでしっかり花粉を取りましょう。

こまめに部屋の掃除をして花粉を減らす

花粉の対策にはこまめな掃除も欠かせません。花粉は掃除機で吸うのが一番です。カーペットなどは、掃除機を往復させ念入りに吸いましょう。カーテンは見落としがちですが、花粉が付着しやすいです。定期的に洗濯することを意識しましょう。衣服の脱ぎ着が多い脱衣所も花粉が溜まりやすいです。バスマットなども定期的に洗濯しましょう。

花粉の多い日や時間帯にはペットを外に出さない

花粉の多い日や花粉の多い時間帯は、ペットを外に出さない工夫も必要です。花粉の飛散時間は、植物の種類などによって様々です。スギの場合、午前中から昼過ぎと、夕方の2回、花粉のピークがあると言われています。イネ科植物は、花粉が重くそれほど飛散しないため、時間帯よりも草むらを歩かせないなどの工夫が効果的でしょう。

外に出るときはウェアを着せる

外出の際は、花粉がペットの体に付着しないように、ペットにウェアを着せるのも良いでしょう。ウェアはできるだけ凹凸のないものがおすすめです。レインコートのような素材をイメージすると良いでしょう。ペット用の花粉対策ウェアなども販売されているので、利用すると効果を感じられるかもしれません。

犬・猫の花粉によるアレルギー症状を知って対策を行いましょう!

犬・猫の花粉によるアレルギー症状は、かゆみが中心です。かゆみは痛みと比較すると軽視されがちですが、犬・猫にとっては大変つらい症状です。アレルギー症状は原因がわからないことも多く、飼い主にとってもストレスの多い状況になることが多いでしょう。

疑問がわいたら、遠慮せずに獣医師に質問しましょう。アレルゲンとして花粉が考えられる場合は、できるだけペットに花粉をさらさないように対策して花粉の時期を乗り越えましょう。