この記事は2024年5月時点の内容です。

まとめ
  • 小型犬・高齢犬は肛門絞りの必要あり!
  • 飼主でも肛門絞りが可能
  • 肛門が赤くなっていたら無理に絞らず病院へ
  • 肛門絞りの頻度は2週間〜1カ月を目安

犬の肛門絞りは飼主がしなけれないけないと聞いたことのある人は多いでしょう。「絞ったことがないけど、うちの子は大丈夫?」と心配な人もいるかもしれません。

今回は、犬の肛門腺の役割や、肛門絞りの必要のある犬、絞らない場合におこりえるトラブルなどについて紹介。動物病院を受診する目安や、具体的な肛門絞りのやり方やコツについても解説します。

◆執筆・監修:獣医師プロフィール

ttm 医師

岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

肛門腺とは?その役割とは?しぼらないとダメ?

そもそも肛門腺とは何なのでしょうか。必ず絞らないといけないものなのでしょうか?ここでは肛門腺の役割や肛門腺が詰まってきたときに起こるトラブルについて解説します。

肛門腺とは?役割は犬のコミュニケーション!

肛門腺は、肛門嚢(のう)とも言います。犬の肛門に左右対称にあり、独特かつ強い臭いの分泌液を分泌する役割を持っています。分泌液は犬ごとに異なる臭いを持ち、犬同士はこの臭いで相手の性別や健康状態など、色々な情報を得ることができます。犬はよく他の犬のお尻の臭いを嗅ぎますね。これは、肛門腺からの分泌液の臭いを確認して、相手について知ろうとしているのです。

分泌液は自然に排泄されるので、肛門絞りが必要ない犬も多い

肛門絞りが必要ない犬も多いです。肛門腺からの分泌液は「導管」という管を通って自然に外に排泄されます。犬がウンチをする時にウンチと一緒に出たり、オナラをした時や、驚いた時など、肛門に力を入れた時にも排泄されます。

特に健康な中型犬以上の体格の犬は、ほとんどのケースで分泌液は自然に排泄されるため、肛門絞りの必要はあまりありません。

絞らないとどんなトラブルが考えられる?

肛門絞りが必要な犬の肛門腺を絞らないと、分泌液がたまり過ぎることがあります。たまった分泌液を放置すると、分泌液に粘り気がでてきて、さらに排泄されにくい悪循環になります。

その結果、分泌液の中で細菌が増殖して「肛門嚢炎(こうもんのうえん)」という病気になることがあります。病気になる前に肛門腺を絞ったり、動物病院を受診する必要があります。

犬の肛門のチェックは定期的に行うべきですが、特に

  • 犬のお尻を臭いと感じる
  • 犬がお尻をしきりに舐める
  • 犬がお尻を床にこすり付けたり、そのままの姿勢で前進する
  • 普段自分の尻尾を追いかけない犬が、突然自分の尻尾を追いかける行動をとる

などの場合にすぐに行いましょう。この時、犬の肛門が赤くなっていなければ肛門絞りをしましょう。

ただし、肛門がすでに赤くなっている場合は、炎症がはじまっています。無理に肛門腺をしぼると悪化させる可能性があるため、犬の肛門が赤くなっていたら、動物病院を受診してください。

肛門絞りの必要のある犬はどんな犬?

小型犬や高齢犬などは飼主が肛門絞りをしてあげる必要があることが多いですが、飼主が自分で絞るのが心配な時は迷わず動物病院やトリミングサロンを頼りましょう。

小型犬は「導管」が細いので肛門絞りの必要あり

小型犬は、分泌液を排泄する導管が非常に細い場合があります。そのため、分泌液がスムーズに出ていかず、途中で分泌液がたまってしまうことがあります。肛門括約筋などの筋力が弱いこともあり、ウンチやオナラで自然に分泌液が排泄されないことも多いでしょう。

小型犬は定期的に肛門絞りの必要がある犬の特徴のひとつです。

高齢犬は筋力低下や排便回数の低下などで肛門絞りをする必要あり

高齢犬は、肛門括約筋などの筋力が低下して、分泌液が自然に排泄されにくい傾向が。特に肥満気味の高齢犬は、肛門括約筋がかなり低下します。

高齢犬はウンチ自体の回数も減ったり、軟便傾向になる場合もあります。このような理由で高齢犬は肛門腺の分泌液がたまりやすいため、飼主が絞る必要がでてきます。

動物病院やトリミングサロンを頼るのもOK

肛門絞りは、動物病院やトリミングサロンでもやってもらえます。慣れない飼主が絞ると犬が痛みを感じたり、肛門の炎症をひきおこすこともあるため、心配な場合は無理をせず、動物病院やトリミングサロンを頼りましょう。

肛門絞りのやり方や頻度は?

いきなり肛門絞りをすると言われても、どうやったらいいのかわからない!という人がほとんどだと思います。ここからは肛門絞りの具体的なやり方や、絞る頻度について紹介します。

2人でやるとやりやすい!肛門絞りのやり方

肛門腺は、肛門の左右にそれぞれ1個ずつあります。位置は、お尻の穴を中心に、時計に見立てて、4時と8時の方向が目安です。

まず、尻尾を利き手でない方の手で、ピンと上に引っ張りましょう。次に、利き手の親指と人差し指を、肛門の4時と8時の方向に置き、下から上へ押し上げるような感覚で絞ります。内側に絞らないことを覚えておきましょう。

これで簡単に分泌液が出る犬もいれば、かなり固い犬もいるため、感覚は何度かやらないとつかめないかもしれません。肛門腺絞りは、可能であれば2人で行うとよりやりやすいです。

ひとりが愛犬を押えて、尻尾を上に上げておく役割を担うと、もうひとりが比較的楽に絞れます。

臭いが強烈!シャンプー時に一緒にやるのがおすすめ

肛門腺を絞ると、分泌液が周囲に飛び散ることが多いです。分泌液の臭いが家具や周囲につくとなかなか取れず、家族が不快な臭いの中で暮らさなくてはなりません。

絞るときに、ティッシュやキッチンペーパーなどを押し当てると良いでしょう。絞ったあとに犬のお尻も流すと毛に臭いがつきません。

もっともおすすめなのは、シャンプーをするときにバスルームで一緒に肛門絞りをすることです。バスルームなら分泌液が飛び散ってもすぐに洗い流すことができます。飼主に分泌液がついても、すぐに洗い流せることもメリットです。シャンプーとセットにすれば忘れることも少ないでしょう。

肛門絞りの最適な頻度は?

肛門絞りの頻度は、犬ごとに異なります。おおまかな目安として、子犬や成犬は1ヵ月に一度と考えると良いでしょう。

高齢犬の場合は状態にもよりますが、2週間に一度くらいを目安にしておくと忘れずにケアできます。高齢犬はシャンプーの頻度が減るため、肛門腺絞りも忘れがちです。高齢犬は成犬よりも分泌液がたまりやすいので、お尻周りのケアは特に注意しましょう。

上で紹介したとおり、お尻が臭い・犬がお尻を床にこすりつけるなどの様子が見られたら、すぐにお尻の状態を確認して、赤くなっていなければ肛門腺を絞りましょう。

肛門腺ケアも念頭に、愛犬に快適な生活を!

肛門腺絞りは、必ずしも飼主がやらなくてはならないものではありません。しかし高齢になったときなど、犬にできるだけストレスをかけずに肛門腺を絞るためには、飼主がやってあげられるとベストです。

動物病院では肛門絞りの方法を教えてくれます。可能な範囲で練習し、愛犬の肛門腺ケアもできるようになると良いですね。