まとめ
  • パルボウイルス罹患をターニングポイントに規定を制定
  • SNSを有効に利用することで、猫の保護費用の一部の捻出が可能に
  • いずれはジオラマ食堂 東京店も!?

猫と食事ができると、近年ネットやメディアで話題になっている「ジオラマ食堂」。一時期はその存続さえも危ぶまれた時期を乗り越え、現在に至ったその経緯を「ジオラマ食堂」の生みの親である寺岡さんに、当時を振り返って話してもらいました。

◆取材・監修:ジオラマ食堂

ジオラマ食堂代表 寺岡さん

東京でのアパレルの仕事を経て、趣味の鉄道撮影を活かしたジオラマ製作の仕事などを行い、日本国内でも有数の規模のジオラマを手がけるまでに。そこからジオラマを展示したカフェの経営を始め、現在に至る。

SNSの動画がバズって軌道に乗った「ジオラマ食堂」そして…

子猫との出会いをきっかけにして、2020年に誕生したジオラマ食堂は、SNSにあげた動画がバズり、多くの保護猫を受け入れられるようになっていきました。そんなジオラマ食堂が2店舗目となる伊勢の店舗のオープンを決めたその時期に、転機は訪れました。

ターニングポイントになったパルボウイルス

それまでスペースがある限り、どんどん猫を受入れていきたいと考えていた寺岡さんでしたが、伊勢のジオラマ食堂のオープン予定だった7月25日直前の7月18日に事件は起きました。

愛媛県松山市で殺処分になりかけた猫の受入れ先を探していたNPO団体から、受入れを決めた寺岡さんの元に33匹の猫が届きました。その後、輸送が猫の体力を奪ったのか、到着した猫たちが次々に体調を崩します。細菌などのチェックはしていましたが、当時はパルボウイルスに関しては全くのノーマークだったという寺岡さん。パルボウイルスは潜伏期間が2日〜2週間と、長い潜伏期間を持つのも災いしました。

最初に体調を崩した猫の検査の結果が7月24日に出て、初めてパルボウイルス罹患と判明します。伊勢のジオラマ食堂の7月25日オープンは延期になり、寺岡さんの戦いが本格化しました。

パルボウイルスは子猫が罹患すると、その致死率は75〜90%とも言われる恐ろしいウイルス。集団感染となれば大量死は免れません。パルボウイルスについてはノーマークだったわけですから、愛媛からの猫を受け入れた最初の段階で防護服で対応することなど思いつくわけもなし。そのため一緒に送られてきた猫はもちろん、元々いた猫まで巻添えになってしまい、60匹もの猫がパルボウイルスに罹患することになったのだそうです。獣医師によっては安楽死を勧められるケースもある恐ろしいウイルスですが、寺岡さんは安楽死などあってはいけないと、猫の命を救うために300万円の費用をかけてパルボウイルスと戦います。結果21匹の猫が亡くなってしまいましたが、75%よりははるかに低い数字でなんとかパルボウイルスを乗り越えることができました。

パルボウイルスから学んだこと

「それまでは『とにかく受け入れられる命は受け入れればいい』と思ってました」と、寺岡さんは当時を振り返ります。

「でも本当はそれだけではダメなんですよ。受入れたもの(猫)を守るのも、私たちの役目なんだと、その時本当に痛感しました。あの時亡くなった猫の死を無駄にすることは許されません」

このパルボウイルスの事件を機に、ジオラマ食堂の保護規定を定めることに決め、現在の一見厳しいようにも見える規定が決まりました。

その後10月には延期されていた伊勢のジオラマ食堂も無事オープンし、2023年の年明けを迎えたそうです。

石の上にも3年で頑張ってきた保護猫活動

-どんなことでも最低3年はやってみないとわからない-

これが持論だと寺岡さんは言います。元々鉄道が好きで、鉄道の写真を撮る趣味が高じてジオラマ作成を手がけるようになり、今でも年に1度は大きなジオラマの発注を受けることがあるのだそう。そんな寺岡さんがジオラマと猫という、一見異質な組合せを手がけるようになった当初は、こんなに有名になるとは思わなかったそうです。それでも最低3年は続ける!と決めて続けてきた結果、動物保護の新しい形が見えてきました。

SNSをうまく使うことで、保護費用の捻出に当てられる(もちろんまだまだ全額ではない)ようにもなってきたそうです。ネットのすごいところは日本だけではなく、海外にも訴求できるところ。実際に海外でも知名度が上がり、海外にジオラマと猫をテーマにしたショップができているとか。今はフォロワー10万人を目指して、スタッフさんと一緒に日々頑張っているそうです。

実際の動物の保護にはお金がかかります。医療費だって食費だって、タダでできるだけではないのです。命を守る費用をどのように捻出するか、それは今どこの保護団体も頭を悩ませている大問題。

ジオラマ食堂は、そんな大問題に1つの解決策を見つける大きな足がかりになっています。

ジオラマ食堂、東京に進出!?

現在大阪のジオラマ食堂には110匹の保護猫が在籍中で、伊勢にあるジオラマ食堂 伊勢にゃんこキングダムに25匹が在籍中。最初のきっかけになったシンバは、今も寺岡家の家族として元気に暮らしているそうです。そんなジオラマ食堂の今後について寺岡さんに聞いてみたところ

「最後は東京だろうなあ…」とのお答え。

いずれ東京に出話になるだろうなあと思っていると話す寺岡さん。このスピード感で突き進んできた実績と寺岡さんの行動力を考えると、東京でジオラマ食堂に会える日も、そんなに遠い未来の話ではないのかもしれません。

東京でもジオラマの上を飛び交う猫ちゃんの姿をみられる日が来るのを、首を長くしてお待ちしてます!

◆施設情報

ジオラマ食堂
所在地:大阪府大阪市天王寺区寺田町2-5-16-102
料金:ランチタイム(12時〜14時):おとな2,500円・こども2,000円
ティータイム(15時〜17時):おとな2,300円・こども2,000円
団らんタイム(18時〜20時):おとな2,500円・こども2,000円 ※金曜と土曜のみ

定休日:水曜日
公式HP
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