まとめ
  • 子犬や子猫の時期はお腹の調子が安定しない
  • 子犬は誤飲・誤食しやすい
  • 子犬・子猫の体調に変化を感じたら様子見せずに病院へ

新しい家族を迎えようと思ったとき、これから始まる子犬子猫との生活に期待が膨らむ反面、さまざまな疑問や不安も多いのでは?中でも、健康に関わることは初めて犬や猫を飼う人にとってはとても大切な情報です。

子犬・子猫はその時期特有の体の状態や、かかりやすい病気・事故・ケガなどが存在します。

実際に動物をお迎えしてから「こんなはずじゃなかった!」と思わなくていいように、事前に知っておきたいことを獣医師に聞いてみました。

酒井先生は20年以上のキャリアをもち、臨床の現場に立ち続けるベテラン獣医師。そんな酒井先生が教える、子犬や子猫を育てるときに知っておきたい病気やケガについて紹介します。

 

◆今回インタビューに答えてくれたのは

獣医師:酒井和紀(さかい あき)先生

TOMOどうぶつ病院 (ともどうぶつびょういん)

東京都内の小動物病院において長年一般診療を担当、あわせてどうぶつ眼科専門病院における研修や2次診療施設での眼科診療を担当。現在は複数の病院で一般診療と眼科診療を主に担当する、柴犬と猫をこよなく愛する獣医師。

子犬・子猫がかかりやすい病気やケガと対処法

実際に子犬・子猫をお迎えしたときに、気をつけなければならない病気やケガにはどのようなものがあるのでしょうか。

またその対処はどのようにすればいいのかを酒井先生に聞いてみました。

子犬・子猫に共通して多い「下痢・便秘」

子犬・子猫に共通して言えるのは「お腹の調子が不安定」であることだと酒井先生。

「子どもの時期は消化機能が未熟なので、お腹の調子がとても不安定です。軟便や下痢になることもあれば、便通のリズムが崩れて便秘になることも。

お腹の調子が悪いと、水分や栄養分の吸収がうまく行えず、脱水や栄養不足を引き起こしたり、食欲不振につながることもあります。

ペットショップやブリーダーさんに、それまで食べていたフードを確認して、最初は同じものをあげられるといいですね。

子犬・子猫の時期に限らず、食事を変更するときには、以前のフードと混ぜながら少しずつ新しい食事へ移行するようにしましょう」

「総合栄養食」と表記されているフードを選ぶこと、月齢にあったフードを選ぶこと、などもポイントになるそう。

フードには「6ヶ月まで」「1歳未満用」「成犬用」「7歳〜シニア用」など、与える時期や年齢を記載しているものが多いので、子犬・子猫の場合にはその時期に適したフードを選びましょう。

子犬子猫でお腹の状態が安定しない場合、内部寄生虫などの問題が隠れていることもあるので早めに動物病院で糞便検査を行ってもらうことも大切なのだそう。

「お腹の調子や食欲は、自宅で飼主が分かる子犬・子猫の健康の大切なバロメーターになります。

軟便や下痢、逆に便秘になってしまったり、食欲がいつもよりない(いつもならあっという間に食べ終わるのに残してしまったり、食べるのに時間がかかるなども含め)など、いつもと様子が違って不安を感じた場合には、早めに病院に相談しましょう。

子犬・子猫の体調の変化は急激なことが多く、様子を見ていたら命に関わる状態になることも珍しくありません」酒井先生は話してくれました。

そのくらい子犬・子猫の体調の悪化は急激だと覚えておきましょう。

社会化のチャンスと一緒に気をつけたい子犬に多い病気

子犬の時期に多く認められる病気の一つにケンネルコフ(伝染性気管支炎)があります。

ケンネルコフは簡単にいえば犬の風邪。主な原因はウィルス感染といわれており、症状は軽い咳のことが多く、安静にしていれば自然に治ることがほとんどです。しかし、免疫力の低い子犬の場合、症状が長期間続き、細菌感染を併発することで悪化し肺炎をおこすことも。

「ケンネルコフの原因となるウィルスは感染力が強いため、症状がある子犬やワクチン接種が完了していない時期の子犬は、他のワンちゃんが多く集まる場所へ出入りすることは獣医学的にもマナーとしてもおすすめできません」と酒井先生。

しかし、ずっと家の中だけで過ごさせることによる悪影響もあるそうです。

「犬がさまざまな経験を通して人や犬・モノ・音などに慣れることを社会化といいます。

犬は生涯を通して社会化する動物であることが知られていますが、特に子犬の時期は順応性が高く、14週齢前後までにたくさんの経験をすることが大切だと考えられています。

この時期に適切な社会化が行えないと、極端なこわがりになったり、人や犬に対して恐怖心から攻撃性を示すなど、問題行動につながることがあります」と酒井先生は続けます。

「ワクチン未接種の場合は、自分で歩かせなくてもいいので、外の音や他の人などに早くから慣れさせてあげることが大切です。

抱っこしてちょっとお散歩したり、外の物音を聞かせてあげたり、家族以外の人とふれあったりという経験は早くからさせてあげたほうが、将来的に社会化が進みやすくなります」

決められたワクチン接種が完了するまでは、外の環境(家族以外の人や車、自転車など)に対する社会化をメインに少しずつ外の刺激に慣れてもらい、ワクチンがすべて完了してから徐々に他の犬とのふれあいを始めるのがよさそうです。

犬の場合、ずっと家の中だけで生活するというのは難しく、お散歩したりドッグランで遊んだりと、他の犬と一緒に遊ぶことも増えていきます。

他の犬に慣れることができずにずっと吠えてしまい、誰とも遊べない犬になってしまわないように、社会化の進む3ヶ月半までの間に豊富な経験をすることが必要なんですね。

誤飲・誤食をさせないための工夫を!子犬に多いケガ・事故

成犬でもありますが、子犬の時期に特に気をつけたいのが「誤飲・誤食」だと酒井先生は言います。

「子犬の時期は身の回りにあるものをなんでも口に入れようとします。人間の薬や電池など、飲み込むと命の危険があるものなどは家の中に放置せず、きちんとしまうクセを人間もつけるように心がけましょう。

また、電化製品のコード類も、嚙むことで感電し、やけどや最悪の場合肺水腫を引き起こす場合があるので注意が必要です。

子犬の頃からケージやクレートの中で過ごすことを習慣化し、お留守番の際など思わぬ事故からのケガや誤食を防ぐ工夫も大切です。

それでも何かを誤飲・誤食してしまったときには、すぐに病院を受診してください。早めに相談することで、最小限の処置で対応が可能になることもあります」

人間の薬を飲み込んでしまったり、暑い時期に留守番中の子犬がリモコンで遊んでしまってスイッチを切ってしまい、熱中症になるなどの事故が後を断ちません。

新しい家族を迎えると決めたら、人も部屋の掃除・片付けは徹底する必要がありそうです。

たかが風邪と侮るなかれ!子猫に多い病気

子猫に多い病気にはネコヘルペスウイルスが主な原因となる「猫風邪」があります。猫から猫へ感染する感染症で、症状としては主に以下のようなものがあげられます。

  • 目やに・涙
  • くしゃみ・鼻水
  • 口内炎・咽頭炎

ケンネルコフと同様に、本来は無治療でも自然に治ることが多いのですが、子猫の場合、症状が悪化し食欲低下や細菌感染を同時に起こすことで、肺炎など命に関わる状態にまで悪化することは少なくありません。

人でも風邪は万病のもとと言いますが、たかが風邪であっても悪化し急変することもあるので、心配な症状があれば早めに病院を受診しましょう。

また、子猫の間は体温調節が未熟なこともあり、暖め過ぎや寒すぎることは子猫の体力を奪う場合もあります。長時間過ごす場所(部屋)は、日当たりの良い場所と日陰の両方があって、子猫が心地よい場所を自分で選択できるような工夫をするといいかもしれません。

脱走や落下事故に注意!子猫に多いケガ・事故

子猫の場合は部屋のレイアウトにも注意が必要です。猫にはある程度高さのあるレイアウト(キャットタワーなど)が必要だと言われていますが、子猫のうちはあまり高さのあるレイアウトは落下事故の原因になります。

家具に不用意に上がってしまわないように、配置には気をつけましょう。

また、子猫の場合、窓や玄関のわずかな隙間から外に逃げ出してしまうことがありますので非常に注意が必要です。

子犬と同様に、猫用のケージや仕切りを使って、ドアや玄関の開け閉めを頻繁に行う場合や留守番の間は、限られた空間で過ごすように慣れさせることも必要かもしれません。

子犬・子猫の体調に変化を感じたら様子見せずに病院へ

はじめて子犬や子猫を家族としてお迎えするときに気をつけなければいけないことや、知っておきたい情報について紹介しました。

「人も子どもと大人では気をつけるポイントが違うように、動物でも子犬や子猫の時期特有の心配事やかかりやすい病気があります。

また子犬子猫の体調は急変することがあり、様子見が命取りになることも。今は、インターネットやSNSでたくさんの情報を調べることができますが、全ての情報が正しいとは限りませんし、お家のわんちゃん猫ちゃんには当てはまらないこともあります。不安を感じたら、病院の先生に相談することが大切です」

まだ成長途中の体は余力がなく、ちょっとしたことで症状や容態が悪化してしまうと酒井先生は教えてくれました。

新しい命を家族にお迎えしたなら、注意深く体調の変化を見守りながら、変化があったらすぐに病院に相談できるような体制を整えておきましょう。

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