まとめ
  • 猫の多頭飼い時は、十分なスペースや個別のフード容器、猫の頭数よりも多いトイレの用意などが必要
  • 一番重要なのは先住猫のストレスケア
  • 新米猫と先住猫が慣れるには時間がかかるもの、焦らず長い目で見守ろう

猫との暮らしは癒しと喜びの連続です。愛猫との関係性が安定してきたころに「そろそろ2匹目を……」と考える飼い主さんも多いのではないでしょうか。しかし猫の多頭飼いには、特有の注意点が存在しています。

今回は先住猫を飼育している飼い主さんに向けて、新米猫を迎える際の注意点やポイントなどをご紹介します。実際に対面させる際のステップも解説しているため、失敗のない顔合わせのために参考にしてください

新しい猫・子猫をお迎え!多頭飼い時に気をつけたい5つのポイント

ここでは、新米猫を迎える際に気をつけたいポイントを5つご紹介します。どれほど先住猫が穏やかでフレンドリーな性格でも、他の猫との共生がうまくいくとは限りません。事前にポイントを理解し、スムーズな多頭飼育につなげていきましょう。

お互いが離れられる十分なスペース

猫は縄張り意識が強い生き物です。多頭飼育の際は、お互いが離れられる十分なスペースを確保しましょう。具体的には、猫が自由に行き来できる部屋が「猫の頭数+1部屋」あることです。

多頭飼育を希望している飼い主さんは、2匹の猫がいつも寄り添っているような光景を夢見るかもしれません。しかし相性は実際に暮らしてみるまでわからないのです。もし2匹が不仲でもお互いがリラックスできるスペースの確保は必須です。

先住猫のストレスケアを最優先に

新入り猫を迎える際は、先住猫のストレスケアを最優先に考えましょう。家に来たばかりの新米猫をつい構ってしまいたくなりますが、どのようなシチュエーションでも優先して尊重するべきは先住猫です。

先住猫にとっては、自分の縄張りに見ず知らずの新入りが入ってきて心が不安定な状態です。飼い主さんが新入り猫ばかり可愛がっているとプライドも傷ついてしまうでしょう。今まで以上のスキンシップを心がけ、心の平穏を守ってあげてください。

顔合わせ前に寄生虫や感染症の検査

先住猫と新米猫が顔合わせをする前に、お互いの健康管理と検査を徹底しておきましょう。混合ワクチンの接種はもちろん、寄生虫や感染症の検査も必要です。特に新米猫が保護猫の場合は、知らないうちに病気に感染している可能性があります。

今まで健康だった先住猫にも感染してしまい、2匹とも体を壊してしまう……。そんな事態は絶対に避けたいですよね。顔合わせの期間が遅くなってでも獣医師の診察を受け、検査結果が出るまで対面は控えましょう

個別の水飲みとフード容器を用意

多頭飼育の際は、個別の水飲みとフード容器をそれぞれ用意する必要があります。主な理由は、他の猫の匂いがついているとフードやお水を摂取しなくなってしまう可能性があるためです。

自分専用の容器があることで、他の猫がごはんを食べていても気を取られづらくなるという理由もあります。他の猫のごはんが気になってしまう場合は、容器だけではなく食事の空間も別々にしましょう。安心して食事できる環境を確保してあげることが大切です。

トイレは「猫の頭数+1」

多頭飼育で生じる悩みの1つがトイレの個数。適切な数は「猫の頭数+1個」です。日々の排泄物を確認できるトイレは、猫の健康管理の要といえます。1匹ずつトイレを分けることで、それぞれの体調を把握できます。

そして猫は清潔感のあるトイレを好むため、自分のトイレが汚れていると排泄を我慢してしまうことが。かと言って、違う猫のトイレは使いたくありません。そんなときに、スペアとして必要なのがもう1つのトイレなのです。

焦らないで!先住猫と新米猫の顔合わせ4つのステップ

ここでは、先住猫と新米猫の顔合わせを行う際のステップをご紹介します。基本的には以下の順番で顔合わせを行いますが、途中で威嚇や激しいストレスが見られた際は前のステップに戻すことを心がけてください。

STEP1.別々の部屋で過ごす(数日~1週間)

まず注意したいのが、先住猫と新米猫をいきなり直接対面させないことです。何の下準備もしないまま初日にいきなり対面させると、高確率でどちらかの猫(もしくは両方)が威嚇してしまいます。

相手への印象が悪くなり、スムーズな顔合わせが阻害されてしまうでしょう。最悪の場合は、猫パンチでけがをさせてしまうことも。それぞれ別々の部屋で過ごし、お互いの存在や気配に慣れさせていきましょう。

STEP2.匂い交換をする(数日~1週間)

お互いに姿が見えていなくても、フェロモンや匂いによって相手の存在は認知しています。猫にとって匂いは重要なコミュニケーションツールです。顔を合わせる前にお互いの匂いだけを交換し、心の準備をさせてあげましょう。

具体的には、お互いの匂いのついた毛布やおもちゃなどを交換します。もしくは飼い主さんが顔や体を触り、その手で相手を撫でて匂いをつけます。猫は最初は見知らぬ匂いに警戒しますが、少しずつ慣れて反応を示さなくなっていくでしょう。

STEP3.対面はケージ越しから(1ヶ月)

お互いの匂いに警戒心を示さなくなった頃合いで、いよいよ対面です。とはいえ、最初はお互いをケージに入れた状態で姿を見せ合います。ケージを入れた状態でも「シャーッ」と威嚇をしたら、無理をせず離しましょう。

事故防止のため、対面は必ず飼い主さんの目の届く場所で行います。対面させたまま家を空けず、外出時は必ず別々の部屋に移動してもらいましょう。

STEP4.徐々に同じ空間で過ごす時間を増やしていく(1ヶ月~)

ケージ越しの対面を重ね、少しずつ直接触れ合う距離まで縮めていきます。先住猫を抱っこした状態で新米猫に近づき、危ないと思ったらすぐに離れられるように心がけてください。嫌な思い出を紐づけないために、抱っこして無理やり合わせることは控えます。

直接対面の際は、逃げ場ができるように広い部屋で行いましょう。初対面の猫が平和に共存できるまでは、少なくとも1~2ヶ月以上は必要です。決して焦らず、猫たちのペースを尊重してあげてくださいね。

多頭飼い・顔合わせ時に気をつけたい注意点

ここでは、多頭飼育の顔合わせにおいて気をつけたい注意点についてご紹介します。飼い主さんの1つの判断で、顔合わせは成功にも失敗にもなり得ます。正しい知識を身につけ、猫へのストレスをできる限り抑えた状態で対面させましょう。

「早く仲良くなって!」と焦らない

多頭飼育において飼い主さんが最も気をつけるべきことは「焦らないこと」。猫の相性によっては、けんかをせずに一緒に過ごせるまでに1年以上の月日を要する場合もあります。

飼い主さんからすると、1日でも早く猫同士が仲よくなってほしいと感じますよね。「一緒の空間を過ごす時間と比例して仲も深まるだろう」と期待する気持ちもわかります。

しかし、猫は犬と違って元々単独で過ごします。同種族との共生自体に馴染みが薄い生き物なのです。無理強いはせず、気長に見守ることが何より大切です。

先住猫を優先してあげる

多頭飼育では、先住猫と優先的にコミュニケーションをとりましょう。元々先住猫は家を独り占めしていました。家のすべてが自分の縄張りであり、自由に空間を使いながら悠々自適に暮らしていたのです。

そこに現れた突然の新入り猫。自分の縄張りは侵略され、嗅いだこともないような匂いが漂い、我が物顔のように家を闊歩されてしまいます。この上飼い主さんの愛情や注目まで奪われてしまったら、たまったものではありません。

飼い主さんにとっては、先住猫に友達を作ってあげたという感覚もあるでしょう。しかし多くの場合、猫にとって他の猫の存在は邪魔なものです。いかなる場合も先住猫を優先し、心のバランスを保ってあげましょう。

排泄・食事の管理に気をつける

猫は個体によって味の好みが違い、年齢や体質、持病などによって適切な食事内容が代わります。それぞれが自分の食事だけに集中してくれれば心配はないのですが、多頭飼育の場合は自分以外の猫が食べている食事に気を取られてしまいがちです。

飼い主さんが見ていないところで相手のごはんをつまみ食いしてしまうことも。それぞれが十分な量の食事を正しく食べられているかどうかを定期的にチェックしましょう。

また排泄による体調管理も大切です。例えばトイレで下痢をした形跡を見つけたときに「どっちの猫がお腹を壊しているのかわからない」ということがないよう、飼い主さんがしっかりと管理しましょう。

もしも相性が悪かったら…猫の相性が悪いときの対処法

ここでは、先住猫と新入り猫の脚用が悪いときの対処法についてご紹介します。顔合わせを行った際、もしも以下のような行動があった場合は注意が必要です。

  • シャーッと威嚇する
  • うなる
  • 猫パンチをする
  • 噛みつく
  • 頻繁にけんかをする

猫にとって多頭飼育は基本的にストレスを感じるもの。違和感を抱いたら無理はさせず、適切な方法でストレスケアをしてあげてください。

対処法1.別の部屋で生活させる

猫同士の相性が悪い場合は、時期にこだわらず別々の部屋で生活させましょう。この際も先住猫を優先し、お気に入りの場所をキープできるようにしてあげること。リビングや台所などの共用スペースも先住猫を優先させます。

お互いに姿が見えなくても、存在はしっかりと認知できます。長い期間がかかっても「違う生き物と共同生活を送っている」という認識を持ってもらうことが大切です。また飼い主さんとのスキンシップを通して違う匂いに触れることで、「新しい匂い=安心」と感じてもらえるように努めましょう。

対処法2.時間をおいて対面させる

猫同士の性格や相性により、数週間程度の期間を置いたら再度対面にチャレンジします。先住猫を抱っこしながらが基本ですが、お互いに触れない程度の隙間越しに会わせるのもよいでしょう。

激しい威嚇がなければ、新米猫をキャリーやケージに入れたまま、先住猫を少しずつ近寄らせてみても構いません。ただし必ず飼い主さんの目の届く範囲で行うこと。少しでも手を出しそうな場合はすぐに離します

猫同士がお尻や鼻を嗅ぎ合ったらもう一歩です。お互いに匂いの持ち主を認識し、歩み寄ろうとしています。多頭飼育では、SNSで見かけるような「超仲良し」になる必要はありません。「お互いに同じ家で暮らしていても気にならない」程度でも、大成功といえるでしょう。

もしも同居が難しかったら…

飼い主さんがどんなに努力しても、猫同士の相性が悪いままの場合があります。仲がよくないだけならまだしも、先住猫がストレスでごはんを食べなくなってしまったり、体調を崩してしまったりすることも。

ストレスは、食欲不振・湿疹・脱毛・下痢など、さまざまな症状で現れます。フラストレーションを発散したり飼い主さんの気を引いたりするために、粗相や夜鳴きなどの問題行動が発生することもあるでしょう。

新しい猫を迎え入れるために、先住猫を不幸にしてしまっては本末転倒です。万が一のときに備え、新米猫を迎え入れる際はトライアルが可能な団体やブリーダーであることを確認しておきましょう。

前提として、一度受け入れた新米猫を「やっぱり駄目でした」と戻すのはNGです。しかし実際には、さまざまな理由からリターンしてしまう子も多いものです。

  • 先住猫が体調を崩してしまった
  • 猫を迎え入れたら猫アレルギーが発症してしまった
  • 突然生活が激変し、狭い家に引っ越さなくてはいけなくなった

だからこそ、トライアルの制度が重要視されています。もしもトライアル期間を過ぎてしまっている場合は、自分で新しい里親を探しましょう。

ここでお伝えしたいのは「飼えなければ里親を探せばいい」という問題では決してない、ということです。厳しい言い方になってしまいますが、一度家族として受け入れたペットを手放すのは、どのような理由があろうと無責任な行為です

猫は家に懐く生き物。基本的には、同じ家でいつまでも安心して暮らせる人生が幸せです。猫にとっての幸福を考えて、考えて、考え抜いた結果、それでも「うちにいるよりもっと幸せになれる道がある」と思ったときに、里親も1つの手段というだけです。

しかし「万が一」はないに越したことはありません。不確定要素が想定される段階では、まだ新米猫を迎えるべきではないといえるでしょう。多頭飼育を始める前に、今一度「本当に可能なのか」「もし駄目だったときにどうするか」を真剣に考えてみましょう。

【実体験】威嚇していた先住猫が、子猫と仲良くなるまで

猫を飼っている編集部メンバーのEさんが実際に新米子猫を迎えたときの体験談をご紹介します。

はじめは威嚇していた先住猫ですが、時間が経つにつれ少しずつ存在を許していったそう。新しく猫を迎え入れたい方や、顔合わせに不安を感じている方の参考になれば幸いです。

2歳のきょうだい猫2匹と、新米の子猫2匹。はじめての対面は…

Eさん宅にはすでに2匹のきょうだい猫がいました。そこにとあるご縁で、2ヶ月になる子猫のきょうだいを2匹迎え入れたそうです。

2日ほどは様子を見ながら対面はさせなかったEさん。しかし、3日目に「もういいだろう」と思い先住猫と新米猫をケージ越しに対面させました。

見たことのない子猫に戸惑う先住猫。ひと目見て、気の強い猫はうなり、シャーッと威嚇をしました。それから、においのついた飼い主の手にも威嚇する始末。2週間くらい威嚇は止まりませんでした。

これは警戒MAXな先住猫の様子です。

ストレス?感染症?先住猫の体調が悪化

2週間ほど経って「少しずつ慣れてきただろう…」そう安心したEさんでしたが、ある日、先住猫の1匹が頻繁に嘔吐をするようになりました。すぐに病院に行き、その場では「胃炎」と診断。

「新米猫がストレスなのかな…」「新しい猫を迎え入れるのは、先住猫にはストレスなのかもしれない」そう、不安になり一時はトライアルの中止も考えました。

しかし、もう1匹の先住猫も体調不良になり、先の先住猫が結膜炎を発症したことで子猫からの感染症が発覚。先住猫のストレスケアをしつつ「子猫たちは、もう私たちの家族だ」。そう決心して正式譲渡をしました。

猫たちが安心できる環境に変えた結果…

Eさんは1ヶ月ほど経ったころ、より広い新居に引っ越します。その頃には1日4〜5時間、人が家にいる間は先住猫と新米猫を同じ空間で過ごさせる時間を増やしていきました。人が家にいないときや、先住猫のストレスを感じたときは新米猫は個室に移動

安心できる環境にして時間をかけた結果、1ヶ月ほど経ったころにはお互いの存在を許せるまでになり、新米猫の近くで先住猫がくつろげるように。

さらに1ヶ月半、2ヶ月半と時間を過ごすにつれて、猫同士が互いにグルーミングをし合う「アログルーミング」や、一緒に追いかけっこをして遊ぶ姿が見られました。

これは気難しい先住猫が「いてもいいよ」と許してくれた瞬間の記念すべき1枚。

一時は威嚇を繰り返すなど仲良くなれずに別部屋生活も覚悟していましたが、時間をかけてゆっくり過ごす時間を増やすことで「いてもいいよ」と存在を許せるようになった猫たち。

「時間はかかるけど、いつかは一緒に過ごせるときが来る」そう信じて焦らず、先住猫のケアを忘れない。それが多頭飼育・顔合わせで何より大切なことだとEさんは語ります。

多頭飼いでは猫のストレスを減らすサポートをしよう

今回は、先住猫と新米猫の顔合わせのポイントや注意点などをご紹介しました。猫は犬のように上下関係がありません。平和的な共存のためには相互理解が必要であり、飼い主さんのサポートが重要です。

  • すぐに仲良くなれなくても焦らない
  • 「側にいてもいいよ」くらいになれればOK
  • 先住猫のケアを第一に
  • 長い目で見守ってあげる

以上を念頭に置きながら、猫にとってストレスが少ない顔合わせを目指しましょう。理想的な部屋の数が足りない場合は、引っ越しをするまで新入り猫を迎えるのはやめるのも1つの手段です。