水族館や動物園で行われる動物たちのパフォーマンス。実際にパフォーマンスを行うスタッフや、パフォーマンスのトレーニング、日々の動物たちへの接し方に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。

今回は東武動物公園のアザラシとオットセイのベテラン飼育スタッフ、宮本さんにお話を聞いてきました!

アニマルパフォーマンス~海と空のなかまたち~とは?

東武動物公園では、平日1回・土日祝日2回、オットセイプールでパフォーマンスが行われています。海を自由に泳ぐオットセイやアザラシと、大空を舞う鳥たちのパフォーマンス。

宮本さんはこのパフォーマンスを行うトレーナーでもあります。器用に技を披露している動物たちのトレーニングの様子を聞いてみました。

オットセイと鳥たちとトレーナーが織りなすパフォーマンス

海の生き物はオットセイとアザラシが、空を飛ぶ鳥はハリスホークなど3種類が参加します。海の生き物と空の生き物、そしてそれぞれのトレーナーがついて、全員でパフォーマンスを造り上げていきます。

パフォーマンスには台本はないのだと宮本さんは言います。

「ある程度の流れは決めておきますが、ここでこれを話す、などの細かいことは一切決めていません。その日の動物たちの調子や、観ている人の反応でどんどん変えていきます。

時間を一緒に過ごせて楽しかったって、お客さんにも思って欲しい。だからそのときそのときでベストは違っていいと思うんです」

にこやかに笑いながら、とても楽しそうに宮本さんは話します。自分自身もパフォーマンスを楽しんでいることがとてもよくわかる笑顔でした。トレーナーが楽しんでいるからこそ、動物たちも観ている人も、楽しめるのですね!

普段の練習ってどうしてるの?

東武動物公園には3頭のアザラシと、2頭のミナミアメリカオットセイがいます。アザラシはお父さんのアラシくんとお母さんのポプラちゃん、その娘で3月で1歳になるモチモチちゃん(2022年東武動物公園生まれ)。

オットセイはオスのメテオくん(11歳)とメスのキャメルちゃん(推定13歳)のペア。

トレーニングの内容は餌を人の手から食べられて、移動ができればOKなんだとか。1ヶ月もあればデビューできると宮本さんは言います。

あとは日々の健康管理や遊びの中でできたことがパフォーマンスになるので、毎日この練習をする、というような練習はないのだそうです。

頭が良く動きの速い俊敏なオットセイのトレーニング

オットセイの方がアザラシに比べると動きが速く、トレーニングが難しいのだとか。1頭1頭の個体差があり、頭が良くて人をよく見ていると宮本さんは言います。

東武動物公園のメテオくんはとても真面目なのでトレーナーの出すサインに厳しく、曖昧なサインを出すと怪訝な顔をされてしまうそう。

キャロルちゃんはじっとしているのが苦手で、高いジャンプが得意で動きがとても良い分、パフォーマンスに間ができてしまうと催促されてしまうのだとか。

怪訝な顔をしたり、進行を促してくるオットセイって、何だか人間みたいで面白いですね。宮本さんのようにベテランになるとそれも上手く紹介できそうですが、新人さんがドキドキしてしまう気持ちはよくわかります。

動きはゆっくりでも食いしん坊なアザラシのトレーニング

アザラシの方が動きがゆっくりな分、新人の飼育員はまずアザラシを担当するのがセオリー。素直で穏やかな性格で、噛んだりすることはほとんどありません。

ただ、人の動きをちゃんと見ているそうです。食べることが大好きなアラシくんは、パフォーマンスに対しても意欲が高く、その分ゆっくり進行していると隙をみてバクッと餌に食いついてくることもあるのだとか。

1日に何回くらい練習するの?

アラシくんとポプラちゃんは観客に対してとても愛想が良く、手を振ってくれるパフォーマンスもしてくれます。そういったパフォーマンスの内容は、特に練習をしてやらせるというよりは、日々の健康管理や遊びの中で自然に生まれてくるそうです。

遊んでいるときにできることが、コンスタントにできることがわかったら、パフォーマンスに取り入れていく、というような流れがあると宮本さんはいいます。

パフォーマンスありきでトレーニングするのではなく、できたことをパフォーマンスに取り入れていくので、特にパフォーマンスのために練習をする、ということではないのだと宮本さんは話してくれました。

パフォーマンスの時のトレーナーはどんなことをしているの?

パフォーマンス中は動物を自在に操っているように見えるトレーナーですが、実際にはどんなことに気をつけて、何をしているのでしょうか?そんな疑問を宮本さんにぶつけてみました。

パフォーマンスの時に一番気をつけていることとは?

宮本さんたちスタッフがなによりも気をつけていることは、動物たちのケガや体調不良の兆候なのだそうです。

健康でないといいパフォーマンスはできませんから!

そう話す宮本さん。動物たちに何かあった時はすぐに対応すると話してくれました。

「あと気をつけているのは悪い状態で終わらない、ということですね」

宮本さんは「できなかった、やれなかったという状態で終わらせない」ということだと話します。

もう1回やってもできない場合は、何度もできないことをさせないで、スモールステップを戻って、できるところで終わらせる。

動物たちも気持ちよくパフォーマンスが終われるようにすることが大事だと宮本さんは話してくれました。

動物がうまく動いてくれないときはどうするの?

動物が指示通りに動いてくれないときは「なんで動いてくれないのか?」の理由をまず考えるのだそうです。

「お腹がいっぱいで食べたくないのかな?今は恋の季節でパフォーマンスどころじゃないのかな?

動いてくれない時は必ず理由があって、その理由のヒントを動物は必ず出してくれています。その理由を考えるのはトレーナーの仕事

実際のパフォーマンスの最中に動いてくれないときは、その理由をパフォーマンスで話しちゃいますね」

恋の季節は性格も変わってしまうそうで、そんなときはそのまま観客にその話をすることで、パフォーマンスを盛り上げるのだとか。

パフォーマンスのとき一番困るアクシデントとは?

「あんまりないかなー……」明るく宮本さんは言います。

動いてくれないことには理由があって、それはトレーナーが考えること。近くに嫌なものがあって動けないなら、嫌なものをどかしてあげる。それでもやりたくないなら無理にやらせない

何か困ったことがあったとしても、パフォーマンス中なら「良くあるんですよー」と話してしまうのだそうです。

宮本さんの明るい話術にかかると、どんなアクシデントも楽しいパフォーマンスの一部になってしまうようです。

トレーナーが一番観てほしいポイントは?

宮本さんが一番観てほしいポイントについて聞いたところ…。

「パフォーマンスでは種(しゅ・アザラシやオットセイという動物の種類)の話ではなく、個の話をすることにしています。図鑑には載っていない話、ここでだけ聞ける話。アザラシはこう、とか、オットセイはこう、というような固定概念にとらわれない内容を話し、パフォーマンスを行います。

絆の深め方がパフォーマンスのメインで見せたいところ。動物の動き一つひとつ、何気ない動きも、最初からできた訳ではないんです。動物の動きは何年もの積み重ね。

何度も同じことを繰り返して積み上げて、この動きができるようになったという証。その過程も含めて観ていただきたいですね」

笑顔でこう話してくれる宮本さん。この笑顔に観客も動物も、魅了されてしまうのでしょう。

台本のないパフォーマンスは動物とトレーナーの一体感から

動物たちとトレーナーの織りなす大迫力のパフォーマンス。その日によって出演する動物もトレーナーも変わります

その日出演している動物の気持ちまでちゃんと伝えてくれるトレーナーたちと、トレーナーの様子をちゃんと観察しながら動く動物たちの息のあったパフォーマンスが楽しめます。

宮本さんのお話を思い出しながら観ると、今までとはまた違った感動のポイントがありそうですね。

※2023年4月14日現在、鳥インフルエンザ感染防止対策のため、鳥の出演は見合わせとなっています

◆今回インタビューに答えてくれたのは

東武動物公園オットセイ・アザラシ担当 宮本さん

オットセイとアザラシの飼育を担当をして7年。アニマルパフォーマンスのMCも自在にこなすベテラン飼育員。台本のない、そのときだけのパフォーマンスを楽しんで欲しい!と話す
東武動物公園

所在地:埼玉県南埼玉郡宮代町須賀110

休園日6月の水曜日、元日、1月の火・水曜日、2月火・水・木曜日

入園料:大人1,800円・中人1,500円・小人800円・シニア1,100円

アクションパスセット:大大人5,100円・中人4,800円・小人3,800円・シニア3,800円

東武動物公園のビルマニシキヘビの飼育員さんのインタビューもぜひチェックしてみてください。

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