この記事は2024年6月時点の内容です。

まとめ
  • 新しく家族をお迎えする前に自分の生活を見直そう
  • 近くの動物病院を探しておこう
  • 子犬・子猫の販売・譲渡時期(6週間〜8週間)は免疫の切り替え時期に当たる
  • 子犬・子猫は体調が急変しやすい

4月に新生活がスタートした人も、環境の変化にもそろそろ慣れてきたころではないでしょうか。夏休みも近づき、新しい家族を迎えたいと考える人も増える時期でもあります。

今まで動物を飼ったことがないけれど、実際に犬や猫を飼おうと思ったら、一体何から始めたらいいの?

そんなふうに思った人のために、獣医師として20年以上のキャリアを持つ酒井先生が教える、犬や猫をお迎えするために必要なモノやコトを紹介します。

◆取材・監修:獣医師プロフィール

酒井和紀(さかい あき)先生

TOMOどうぶつ病院 (ともどうぶつびょういん)

東京都内の小動物病院において長年一般診療を担当、あわせてどうぶつ眼科専門病院における研修や2次診療施設での眼科診療を担当。現在は複数の病院で一般診療と眼科診療を主に担当する、柴犬と猫をこよなく愛する獣医師。

はじめて子犬・子猫をお迎えするときに気をつけたいこと

動物を飼いたいと考え始めたとき、どんなことに気をつければいいのか、何を準備したらいいのか、見当もつかず不安に思う人もいるでしょう。

そんな人に向けて、酒井先生に新しい家族を迎える時に考えるべきポイントや、特に子犬・子猫をお迎えする際に気をつけなければいけないポイントについて聞いてみました。

ライフイベントの時期と重なっていない?

まず最初に考えるべきポイントは「今は新しい家族を迎えるのに適した時期なのか?」だと酒井先生は言います。

  • 引越し
  • 結婚
  • 出産 など

このような大きなライフイベント(環境の変化)の前後は、生活も落ち着かず、新しい家族を迎える余裕もない場合が多いはず。

自分の生活が安定して、子犬・子猫との生活が想像できるようになってはじめて、お迎えが可能になると考えましょう。

特に犬の場合は規則正しい生活スタイルを好む傾向があるので、子犬・子猫をお迎えする前に、ライフイベントとのバランスを考えてみましょう。

子犬・子猫を迎える場合、最低でも1週間、可能であれば2週間程度はお留守番の時間は長くても3〜4時間にしてほしいそうです。

「食欲がない・下痢気味・元気がないなどの”小さな変化”を見逃さず、早めに対応するために」と酒井先生は話します。子犬子猫は体調が安定せず、急変することも多いそう。

「24時間監視する必要はありませんが、少しでも不安を感じたら動物病院に相談できるようにしておくことが大切です」と酒井先生は話してくれました。

新しく子犬・子猫をお迎えするなら、旅行に行かない夏休みや年末年始などが良さそうですね。

自分の環境と合うのは犬?猫?

次に考えるべきポイントは「自分に合っているのは犬なのか猫なのか。どの犬種・猫種なのか?」これを整理して考えてみましょう。

  • 今住んでいる家は動物を飼うことができるのか
  • 集合住宅の場合は管理規約にどう記載されているのか
  • 犬・猫が快適に過ごせる環境は整えられるか
  • 犬・猫にどのくらいの時間や費用をかけられるのか

特に犬を検討している場合、家の広さと飼うことのできる犬の大きさには、かなり大きな関係があるでしょう。

自分が飼いたいと思っている犬・猫を実際に飼うことが可能なのかを確認することはとても重要です。

集合住宅の場合は管理規約で動物の飼育の可否や、飼える動物の大きさや頭数が決まっていることがほとんどです。

自分のライフスタイルと、飼いたい犬・猫は適切なのかをよく調べて検討しましょう。

自分に合う犬種・猫種は?

犬・猫を飼う場合、どんな犬種・猫種が自分に合っているのでしょうか?

考えておくべきポイントを以下にまとめてみました。

  • 予防注射やノミ・ダニ予防など、定期的にかかる医療費
  • 食費
  • トリミングなど定期的なケアにかかる費用

などを必ず確認し、自分に支払える範囲の犬種・猫種を選びましょう。

犬の場合は犬種によって大きさにかなり差があります。大型犬は小型犬に比べて医療費も食費も高額になることが多いことも覚えておく必要があります。

  • 毎日散歩に行ける時間的な余裕はあるのか

犬の場合は散歩の時間も必要になります。散歩の時間も大型犬は小型犬よりも時間が必要なケースが多いでしょう。

小型犬であっても、犬種によっては多くの運動を必要とする場合もあるので、事前に必要な運動量を確認することをおすすめします。

猫は犬より比較的手間はかからないことが多いのですが、猫種によっては定期的なトリミングが必要ですし、予防注射や外部寄生虫予防など最低限の医療費がかかることに違いはありません。

飼うにあたって発生するお世話の手間や費用は犬種や猫種で異なりますが、一般的に1か月にかかる費用は犬で2~3万円、猫で1~2万円という統計(全国平均のため、地域によって差があります)が出ています。あくまで健康な場合に限りますので、病気の治療費は別途考えておくことが必要です。

また、犬種や猫種によって、性格にはある程度傾向が認められていますので、事前にそれを知っておくことも大切です。

もちろん、出会いは大事なきっかけです。たまたま出会ってしまった動物と、どうしても一緒にいたい!という想いから動物を飼うことを決めることもあると思います。

しかし、出会いは一瞬でもお迎えしてから一緒に過ごす期間は十数年、最期まで素敵な時間を共有するためにも事前の確認は必要です。

一度家族としてお迎えすることを決めたら、最期まで一緒にいてあげられる環境と覚悟を持って、迎えてあげられるようにしてください。

近くに相談できる動物病院はある?

子犬子猫は無条件に元気いっぱいだと考えている人も多いのではないでしょうか。実は子犬・子猫の場合、体調が安定しないため、状態が急変することもあると酒井先生は話します。

ちょっと体調悪いのかな?ご飯を残したけど大丈夫かな?と思って様子を見ていたら、あっという間に体調が悪化することも。

そんな時のためにも、ちょっとしたことでも気軽に相談できたり、すぐに連れて行ける近くの病院を探しておくことを心がけてほしいそう。

今まで動物病院を利用した事がない人にとっては敷居が高いと感じるかもしれませんが、病院に電話をかけてみたり、実際に病院を訪れてみることによって、病院の雰囲気や対応の感じなどを事前に知っておくことができます。

「今度動物を飼おうと考えているのですが、実際に飼ったときは連れてきたら診てもらえますか?」と、聞いてみるだけで、病院の雰囲気がつかめるので、できればお迎えする前にこれからお世話になる病院の目星をつけておくと安心です。

「こんなことで電話したり受診するのは大袈裟では?病院にも迷惑かも?と心配に思うかもしれませんが、子犬・子猫の場合はちょっと具合が悪いなと思ったら「様子を見よう」ではなく、すぐに病院に相談、来院してください」そう酒井先生は話してくれました。

なぜ子犬や子猫は体調を崩しやすいの?

近年、保護犬や保護猫を譲渡する活動が活発化し、子犬や子猫を迎える以外の選択肢も増えました。一方で新しく家族を迎える場合、ペットショップから子犬や子猫を迎えるケースは依然として多いようです。

ここでは新しく子犬・子猫を家族に迎える場合の注意点について、酒井先生に話してもらいました。

1.免疫が安定しない時期にストレスの多い環境にさらされる

現在の法律では、生後56日(8週間)以下の子犬・子猫の販売は禁止されています。そのためペットショップで見かける子犬・子猫はおよそ2ヶ月以上の月齢になるのですが、この月齢がネックになると酒井先生は話します。

「母親から生まれる時にもらっている免疫が減少し始めるのが6〜8週。その時期に自分の免疫があがり始めます。この時期に合わせてワクチンを計画的に接種すると、適切な抗体が獲得できます」酒井先生は説明してくれました。

この非常に大切な時期に、子犬・子猫は親から離され、長距離の移動やペットショップでの他の子犬・子猫との生活が始まります。さらに新しい飼主の家という新しい環境への適応と、目まぐるしく環境が変わっていきます。

そんな時期にワクチンを計画的に接種できなかったり、不安定な免疫状態で病原体にさらされることになると、感染症の発症や体調不良にもつながりやすい状態になります。

免疫の“はざま”のため、ちょっとしたことが原因で体調を崩しやすく、体もまだ出来上がっていないため、体力にも余力がありません

水分が少し足りないだけで脱水になったり、ちょっとご飯が食べられなかったり、1回吐いたり下痢をしただけでも体力がなくなってしまいやすい状態であるこの時期。だからこそ、「体調が安定するまでは長時間の留守番は避けてほしい」というのも納得です。

2.新しいことの連続でストレスが大きい

元々子犬・子猫は体力に余力がなく体の機能もまだまだ不十分なため、環境の変化というストレスは、体調を崩す大きな要因になりえます。十分な栄養と休息が必要な時期に、移動やペットショップでの展示など慣れない環境にさらされる子犬・子猫は少なくありません。

自分に置き換えてみても、ゆっくり眠れない日が何日も続いたら、それだけでも体調を崩すと思いませんか?

もし子犬・子猫をお迎えすることになったら、かわいくて抱っこしたり撫でたりしたい気持ちも少し抑えて、静かに眠れる時間を確保してあげてください。

3.体の機能が未熟なため、体調が安定しない

子犬子猫は成犬成猫とは違って、まだまだ体の機能や働きが未発達なのだと酒井先生は続けます。

ご飯の量のちょっとした変化でお腹の調子を崩したり、体温調節がまだうまくいかず気温の変化に対応できないこともあります。

また、人の子どもでもそうですが、自分の体力の限界を理解していないため、楽しくなると体力の限界を超えてはしゃいだり遊んだりしてしまうことも。

さっきまで元気だったのに、急にぐったりしてしまったなんてことが起きたら慌ててしまいますよね。

以上のようなさまざまな理由で子犬子猫はすぐに体調を崩したり、時として成犬成猫では問題にならない程度の異常でも重篤な状態に陥ることがあります。

体調を維持するために、

  • 適切な時期に適切なワクチンを接種すること
  • 安心して過ごせる環境を整えること
  • ちょっとしたことでも早めに病院へ相談すること など

「飼主としてできることはたくさんありますよ」と酒井先生は話してくれました。

ライフスタイルを考えながら新しい家族との生活を検討しよう

酒井先生のアドバイスから、お迎えすると決めるまでに、考えておくべきことがいくつもあることがわかりました。

  • 子犬・子猫をお迎えするのに適切な時期か
  • 自分の環境と動物は合っているか
  • 信頼できる動物病院は近くにあるか

ただ「かわいいから飼う」のではなく、家族として迎えるからには最期までちゃんとお世話をするという覚悟も必要です。

お互いが無理なく、素敵なわんにゃんライフを過ごしていくためにも、心と環境の準備を整えることが大切です。

お迎えする!と決めたなら、愛情を持って最期まで責任を持ってお世話をしてあげましょう。

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【獣医師監修】子犬・子猫の迎え方|気をつけたい病気やケガ