まとめ
  • 保護猫カフェはさまざまな理由で引き取られた保護猫たちが在籍
  • 所属している猫のほとんどは“一緒に暮らす家族”を探している
  • 保護猫カフェの経営は厳しく赤字のお店も多い
  • 「お金の寄付」「ほしいものリストでの物資支援」「ボランティア」などの支援方法がある


「猫を飼ってみたいけど、猫と暮らしたことがなくて不安…」「今は飼えないけれど、猫のためにできることはないかな?」そんな人におすすめの「保護猫カフェ」を知っていますか?

保護猫カフェとは、事情があって引き取られたり、外で暮らしていたところを保護されたりした「保護猫」と呼ばれる猫たちとふれあえるお店です。

一般的な猫カフェと異なる点は、所属している猫のほとんどは“一緒に暮らす家族”を探していること。つまり、気に入った猫の譲渡を希望すれば、引き取ることができるのです。しかし、そんな保護猫カフェは閉店してしまう店も多く、どの施設も経営・運営が厳しいのが現状です。

千葉県・木更津市にある保護猫カフェ「PURR(パー)」も、そのひとつ。今回は、PURRのオーナーである鈴木真澄さんに、保護猫カフェのリアルを伺いました。「動物のために、なにかしたい」そんな人にできる、支援のヒントになったら幸いです。

◆取材・監修:保護猫カフェPURR(パー)

オーナー 鈴木真澄(すずきますみ)さん
1980年生まれ。千葉県木更津市出身。愛犬ちば動物学園(現愛犬動物フラワー学園)を卒業後、君津市の市川動物病院に勤務。出産を機に退職し、3人の子育てをしながらシングルマザーに。
接客の経験を経て、2022年8月に保護猫カフェPURRを開業。

保護猫カフェ「PURR」とは?

千葉県木更津市にある保護猫カフェの「PURR(パー)」。「PUPR」は、猫がゴロゴロと喉を鳴らすことを意味するのだとか。

そんなPURRはどんな場所なのでしょうか?

動物の専門家に“相談できる”猫カフェ

PURRのオーナーの鈴木さんは、動物病院の勤務経験があります。そんな鈴木さんは動物病院での勤務経験を活かし「相談できる猫カフェ」を実現しています。

実際に、PURRに足を運ぶお客さんやペットシッター・ペットホテルの利用者、PURRから保護猫をお迎えした飼主さんからも、定期的に相談を受けているそう。

鈴木さん
鈴木さん

とくに初めて猫を飼う方は、不安なことが多くて一歩を踏み出せないことが多いです。

PURRでは、正式譲渡した後もLINEでいつでも相談できるようにしています。実際に「相談できる環境があるから、猫をお迎えしてみよう」と思って、譲渡を決めてくださった方もいます。

猫について“正しく知ることができる”場所

PURRを通じて「保護猫についてもっと知ってほしい」と、鈴木さんは語ります。

鈴木さん
鈴木さん

お客さんのなかには「1匹目はペットショップから迎えたけれど、保護猫という存在を知って『2匹目は保護猫がいい』と思って来ました」とご来店する方もいます。

ただ、「1匹目をペットショップで飼った」とは言いづらいそうで……。保護活動に熱心な方や友達から、きついことを言われてしまうことも。

それは「正しい情報や選択肢を知る場所がないこと」が原因だと思っています。

ブリーダーには「種を残す」という意義のもとで働いている人もいます。「生体販売=悪」と決めつけずに、動物についての知識を正しく知ること、そして保護猫という“選択肢”を知ることが大切だと、鈴木さんは語ります。

保護猫カフェにやってくる猫は、どこからくるの?

PURRには、22匹の猫たちが在籍しています(2024年2月現在)。看板猫である「アイラ」「カイラ」を除き、猫たちはみんな“おうちを探している”猫たちです。

在籍している猫たちは、さまざまな理由で保護された保護猫たち。地域の保護猫団体と提携し、譲渡会などで引き取り手が見つからない猫たちがPURRにやってくる場合が多いそう。

鈴木さん
鈴木さん

譲渡会では猫たちが緊張してしまって、本来の魅力が伝わらずに、譲渡に繋がらないことも多いです。

そんな猫たちも、保護猫カフェでは“普段の姿”を見せてくれます。そんな猫たちを見て、その子の魅力が伝わったり、少しでも一緒に暮らすイメージをもってもらえたりしやすいのが、保護猫カフェの魅力だと思っています。

実際にPURRを訪れたときも、のびのびしている猫たちの様子が伺えました。なかにはお腹を出したり、のびきって寝ている子も。「自分の家にこの子がいたら…」と妄想が広がる空間です。

オーナーが語る、保護猫カフェの経営と現状

お店に行けばたくさんの猫たちに会える、夢のような空間。そんな保護猫カフェの経営の裏には、オーナーやボランティアさんの苦労がありました。

普段は知ることができない、保護猫カフェの“リアル”を伺いました。

保護猫カフェはほとんどが赤字?!

冒頭で書いたように、保護猫カフェの経営は厳しく赤字のお店も多いと聞きます。オーナー・鈴木さんに伺ったところ、PURRも売り上げだけではすべての経費はまかなえず、赤字の状態だと語ります。

保護猫カフェの経営には、以下の出費がかかります。

  • 物件や土地の費用
  • 水道光熱費
  • 猫の食費・消耗品費用
  • キャットタワー・家具などの備品
  • 病院・薬代
  • 人件費 など

出費が多い猫カフェでは、売り上げのほかに支援者の寄付やオーナー個人の出資などでまかなっていることが多いのだそう。

PURRでも、猫の飼育費のほかに店舗の維持費などの大きな出費があります。

https://for-good.net/project/1000479

1匹100万円以上?!高額な猫の治療費

猫の飼育には食費や消耗品費用などがかかりますが、いちばんの出費は「治療費」です。

人の出入りに加え、さまざまな猫がやってくる保護猫カフェという環境は、猫の感染症のリスクも高まってしまうそう。

いわゆる猫風邪をはじめ、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの病気を発症してしまう子もいます。とくにFIPは100万ほどかかると言われるほど、高額な治療費が必要なことも

引き取る頭数が増えるほど病気になってしまう猫も多くなるため、治療費の負担が重くのしかかるそうです。

「保護猫のためになにかしたい」と思ったら

「保護猫活動で、何か役に立ちたい」そんな人にどんなことをしてもらったら嬉しいのか、鈴木さんに聞いてみました。

お金の寄付やほしいものリストでの支援

保護団体や保護猫カフェは資金が足りていない施設が多いです。そのためお金などの直接的な寄付はありがたいとのこと。

「お金ではなく物資で支援したい」と考える人には、保護団体が公開している「ほしいものリスト」での支援がおすすめです。

一方で「家の子が食べないから…」と開封済みのフードを持ち込むのはNG

保護団体や猫カフェによっては、猫たちのフードやアイテムの種類が決まっていたり、中古品や開封済みのものは衛生面が心配だったりと、送ることが迷惑になってしまう場合があります。

場所によっては、余ったフードであっても小分け・未開封であれば受け取り可能だったり、消耗品の寄付を受け付けている団体も。支援したいと思ったら、まずは「相手が何を受け入れているか」を確認することが大切です。

ボランティアでの支援

「お金はないけど、なにか役に立ちたい」そんな人は、団体さんがボランティアを募集していないか聞いてみるのもひとつの方法です。

▼保護猫ボランティアの例

  • 不妊手術をする猫の送迎
  • 力仕事・掃除
  • 猫と遊ぶなどのお世話
  • 預かりボランティア、ミルクボランティア
  • チラシ作成 など

掃除だけなど、短時間でできるボランティアを募集している団体もあります。「小さなことでもまずは自分ができることから始めてほしい」と鈴木さんは語ります。

「なにか支援したい」と思ったら、まずは支援したい保護団体の発信している情報を見て、話を聞いて、“本当に必要な支援”を届けることが大切だと、鈴木さんは教えてくれました。

また、保護猫カフェは、集客に困っているお店も多いです。たくさん足を運んで、お店の情報を広めてくれることも支援につながると言います。

「殺処分を減らしたい」PURRに込めた想い

岸本さん(写真左)・オーナーの鈴木さん(写真右)

PURRの原点には「殺処分を減らしたい」という、オーナー・鈴木さんの想いがありました。

鈴木さん
鈴木さん

PURRができる以前は、木更津地域には保護猫カフェはありませんでした。保護猫について知る機会も少ない。だから、不妊手術をしていない猫にエサをあげてしまったり、保護猫を引き取る選択肢を知らなかったりする人も多いです。

PURRを通して、保護猫に対する正しい知識をつけてほしい。そんな活動が少しでも殺処分を減らすことに貢献できたらと思っています。

目下の目標は、やはりPURRという場所を維持していくことだそう。「今は店舗の維持が目標ですが、ゆくゆくは店舗数を増やしていきたいですね。店舗が増えれば、救える猫の数も増やせます」と鈴木さん。

「地域の人の“居場所”に」高齢化地域での保護猫の可能性

今後はPURRが「地域の人の“居場所”にもなっていきたい」とも語ります。

大人になると新しい繋がりもなくなって、友達もつくりづらくなります。だから、お客さん同士が友達になれる場所にしたい、そんな思いを話してくれました。

また、高齢化が進む木更津地域だからこそ、猫が飼えない高齢者も猫にふれあえる場所をつくって「地域で見守れる」ようにしたいとも話します。

最後に、鈴木さんは“ある夢”を教えてくれました。

鈴木さん
鈴木さん

高齢の方はペットを飼えない場合が多いですが、動物が好きな方もたくさんいます。

だから、いつか高齢の方が預かりボランティアをしつつ暮らせるような場所で、猫と高齢の方、どちらも見守れるような場所をつくりたいと思っています。

地域に見守られて育った鈴木さんは“恩返し”として、高齢化社会と保護猫のどちらにも貢献したいーーそんな夢を語ってくれました。

保護猫という“選択肢”を知ってほしい

「殺処分を減らしたい」そんな想いから形になった保護猫カフェ「PURR」。猫たちがのびのびと暮らす姿を見て、お家に迎えられた猫もたくさんいます。

「保護猫を家族に迎え入れると、1匹の猫を救えます。そうすると、新しい猫も保護できる。保護猫を迎え入れるという選択は、同時に2匹の猫を救っているのです」

保護猫という選択肢を、もっと多くの人に知ってほしいと語る鈴木さん。今回の取材を通して“知る”ことの大切さを伝えてくれました。

一方で、保護猫カフェの経営は厳しく、さまざまな支援を必要としているのが現状です。

今回お話を伺ったPURRでは、3月17日まで、店舗維持のためのクラウドファンディングを行なっています。保護猫のためになにかしたい」と思う人は、ぜひ小さな一歩から始めてみてください

▼保護猫カフェ「PURR」クラウドファンディングページ

https://for-good.net/project/1000479

◆施設情報◆

保護猫カフェPURR(パー)

所在地:木更津市八幡台3-1-30
電話:090-7468-2523
定休日:木曜日
営業時間:8:00〜20:00(最終受付19:00)
料金:大人250円/15分(+ドリンクバー300円)
※詳細や空き状況はInstagramをご覧ください

 

また、以下の記事では、今回紹介したPURRのほかに、都内の保護猫カフェを紹介しています。保護猫カフェに興味を持った人は、ぜひ足を運んでみてください。

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