まとめ
  • 世田谷区では人と動物が共生するための取り組みが行われている
  • 地域住民と世田谷区が協力して「地域ねこ活動」に取り組んでいる
  • 世田谷区動物連絡員制度が2024年1月末から活動スタート!

日本全国の自治体で、「地域ねこ活動」への取り組みが盛んになっています。どこの自治体も工夫をこらして、さまざまな方法を模索する中で、新しい取り組みが生まれることも。

世田谷区では2023年度から、ふるさと納税で寄附金を募集し「せたがや動物とともにいきるまちプロジェクト」を開始しています。

「せたがや動物とともにいきるまちプロジェクト」とはいったいどのような活動なのでしょうか。ここでは世田谷区の取り組みについて、担当者にお話を聞いてきました。

世田谷区の取り組むふるさと納税で行う地域ねこ活動

世田谷区では「地域ねこ活動」に力を入れていると担当者は話します。

飼主のいない猫について、地域住民主体でボランティアや行政と連携・協力し、不妊・去勢手術を行ったうえでもとにいた場所に戻し、地域住民で一定のルールを作って猫を見守る「地域ねこ活動」と、それを推進する世田谷区の取り組みについてお話を聞きました。

地域全体で見守る「地域ねこ」とは

飼主のいない猫に関する相談は、区民から区に連絡が入るそうですが、そこに生息する飼主のいない猫の数や手術の状況によって対応が変わると言います。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

まずは現状の確認を行います。対象の猫が1〜2匹の場合で、相談者ご自身が捕獲などの対応可能な場合は捕獲器の貸出しや使用方法、区の補助金制度についてご案内したうえで、TNR(Trap:捕獲・neuter:去勢・return:リリース の略語)をご案内します。

対象の猫の数が多く、個人での対応が難しい場合には、町会・自治会・ボランティア団体に協力を仰ぎ地域の問題として、一緒に対策を考えます。

猫の捕獲が難しい場合はボランティアさんに、捕獲器の使い方や捕獲方法を地域住民にレクチャーしていただく場合もございます。

避妊・去勢手術をした猫は、手術が終わっているしるしとして耳の先をカットするなどのしるしをつけ、餌やりの管理や、トイレの設置・管理など一定のルールを決めて、1代限りの命を地域住民に見守ってもらいます。

また、人に慣れている猫はボランティア団体などを通じて里親を探すこともあります。

地域には猫の好きな人も嫌いな人も、猫に関心のない人もいます。

「地域ねこ活動」を、一部のボランティアや行政にゆだねるのではなく、地域の活動として人と人をつなげ、地域ぐるみの活動にしていくことが目標です。

世田谷区の推進する「地域ねこ」活動とは

「地域ねこ」がCMで放映されたこともあり、「地域ねこ」の認知度もあがりましたが、活動をするうえでは地域の理解と協力が大切なのだそうです。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

世田谷区では、飼主のいない猫が多数生息する地域が見つかった場合は、ボランティアさんと一緒にその地域の町会・自治会・マンションの管理組合などに行って説明を行います。

ご理解をいただいたうえで一緒に取り組み、掲示板・ポスター・回覧板などで地域ねこ活動を開始することを周知していきます。

「地域ねこ」活動についての取り組みを説明をすることで、理解しご協力いただける町会・自治会も増えつつあります。

実際に町会・自治会で野良猫対策委員会が設置されたり、猫の避妊・去勢費用を町会・自治会予算に組み込んでくださるケースもあり、飼主のいない猫対策として「地域ねこ」活動を町会・自治会ぐるみで行ってくださる町会・自治会もあります。

地域住民への理解を深めるために、これからも普及・啓発活動を続けていきます。

ふるさと納税の使い途

世田谷区では、ふるさと納税で集まった寄附金をどのように使っていくのでしょうか。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

世田谷区では現在、飼主のいない猫の不妊・去勢手術の費用をメスは1万円、オスは5千円の補助をしています。

また飼主のいない猫の手術を行い、猫を新たな飼主に譲渡した場合、譲渡した猫の不妊・去勢手術や医療的処置の費用をメス猫の場合は3万円、オス猫の場合は2万円を上限に追加で補助する制度を2023年度から開始しました。

ふるさと納税でご寄附いただいた寄附金は、これらの「地域ねこ活動」をサポートする現行の制度やその拡充、また人と動物との共生社会を実現するための事業に活用させていただく予定です。

飼主のいない猫をもっと減らすために

地域でかかえるペットと飼主の問題は、初期段階ではなかなか情報をつかみきれないと担当者は言います。

その状況を早くつかむことで対策が立てやすくなるため、世田谷区では今年度から積極的に地域の状況を知るためのある取り組みを始めました。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

犬や猫などが多く飼われている世帯での多頭飼育崩壊の恐れが無いかや、独居の高齢者がペットを飼っている場合に万一の際の預け先を決めているか、などを先に知っておくことで、多頭飼育崩壊などが発生する前に対策を立てることが可能になることがあります。

こういったケースは飼主が区にあらかじめ相談することは珍しく、気がついたら手遅れになってしまうことも少なくありません。

そういった人とペットに関する問題の予防といった観点で、2023年度から導入した制度が「世田谷区動物連絡員制度」です。

活動地域のペットや飼主などの情報収集を行い、課題があればしかるべき部署に情報を伝える動物連絡員。

次に動物連絡員について詳しく紹介していきます。

世田谷区が進める動物連絡員とは

世田谷区は今年度から「世田谷区 人と動物との調和のとれた共生推進プラン」の第2次をスタートさせており、そのプランの中に動物連絡員制度の導入があります。

動物連絡員とはどのような存在なのか、担当者にお話を聞きました。

世田谷区動物連絡員制度とは

世田谷区では2024年1月末から、動物連絡員の活動を予定しているそうです。

この新しい制度である動物連絡員とはどのような活動を行うのでしょうか。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

動物連絡員は地域がかかえるペットに関する問題について、情報収集をして関係機関と情報共有を行ったり、ご自身で対応できる簡単な内容であれば相談にのったり、アドバイスをしたりといったことを行います。

収集した情報を地域団体や行政、場合によっては獣医師会や警察などと共有することで、問題の早期解決をめざします。

例えば急な入院によりペットの飼育が困難になった高齢者や、多頭飼育崩壊の予兆など、地域に密着して情報を集めることでより早く対応し、問題が大きくなる前に解決することを期待しています。

動物連絡員は毎年募集する予定だそうで、今年度は8月に募集があり、現在講習などを行っており、来年の1月末から活動の予定です。2024年度も募集が予定されています。

 

都の管轄と23区の管轄するもの

動物との共生を考える上で知っておきたいのが、東京都が管轄する業務と、23区が管轄する業務が違うということなのだと担当者は話します。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

23区には全ての区に保健所が存在します。各区の保健所では犬の登録や、飼主のいない猫の相談業務を行っていますが、動物の収容施設を有し、犬や猫の引取りをするのは東京都の業務となります。

23区の保健所には基本的に収容施設はないので、放浪犬や負傷した犬・猫などの保護の依頼の場合は都の業務となります。

業務の違いを理解することが、相談したい問題を解決することの近道になるようです。

【東京都の詳しい業務】東京都動物愛護相談センター

これからのふるさと納税で実現したいこと

現在までの活動でだいぶその形が見えてきた「せたがや動物とともにいきるまちプロジェクト」。動物と人がともに生きるために、これから実現していきたい未来とはどのようなものなのでしょうか。

動物の適正飼育に関する普及・啓発活動

猫は繁殖能力が高いため、あっという間に数が増えてしまうことで問題が大きくなりやすいのだそうです。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

「地域ねこ活動」にしても、多頭飼育崩壊にしても、数匹のうちに気づければ対応もしやすいですが、30匹50匹と数が増えてしまうとどんどん対応が難しくなってしまいます。

「ならば野良猫にエサをやらなければいい」という考え方もありますが、そうすることでゴミ箱を漁る猫が増えてしまったり、エサやりをする人が隠れてしまって、気づかれないところで繁殖が進んでしまうという悪循環を招く可能性が高くなります。

 

そうなる前に状況を正確に把握し、エサやりのルールを決めたり、爆発的な繁殖を防ぐための避妊・去勢手術を行うことで、住民と猫が共生できる環境作りが可能になることをお話しています。

現在では町会・自治会・マンションの管理組合など、ご理解をいただけるところも増えてきました。これからも継続してご理解いただけるようにお話していきます。

そのための有力な切り札として期待されているのが動物連絡員制度なのですね。

来年からの活動が楽しみです。

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

地域と一緒に考える今後の展望

これからの活動についてもお話を聞いてみました。

生活保健担当者さん
生活保健担当者さん

今後はTNRだけではなく、地域ぐるみで「地域ねこ活動」ができるようにもっと普及・啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。

世田谷区は23区内で一番住民の多い区でもあります。

そこには高齢者も若い人も、動物の好きな人も嫌いな人も動物に関心のない人も、いろいろな人が生活しています。その住民の方々みんなが、動物と一緒に共生できる世田谷区を作っていけるように今後も活動していきます。

昔に比べると地域の中での人のつながりが希薄になりつつある現代社会ではありますが、一人ひとりが「地域ねこ活動」に関心を持つことで、実現可能な未来は広がっていくように思います。

ふるさと納税の返礼品を少しだけ紹介

世田谷区にふるさと納税を行うと、金額に応じて返礼品を受け取ることができます。

動物好きの人には動物に関連した返礼品も。

世田谷区外の方が30,000円以上納税いただくと、わんちゃん用のカスタムオーダー帽子の返礼品を選ぶことができます。

そのほかにも世田谷ならではのお菓子などもあるので、ふるさと納税をどこにしようか迷ってる人は、ぜひチェックしてみてください。

世田谷区では人と動物の共生のためにふるさと納税が使われます

世田谷区が取り組む、人と動物がお互いに住みやすい環境を作るためのプロジェクトについてお話を聞いてきました。

人と動物の「どちらかだけが住みやすければいい」という考え方ではなく「どちらにとっても住みやすい環境を作る」というとても優しい考え方が、これから日本中に広がってくれたらいいなと、お話を聞きながら思いました。

 

世田谷区に住んでいる人は実際の活動に携わることができ、世田谷区外に住んでいる人は、ふるさと納税という形でこの活動に参加できるこの取り組み。今後も日本各地の自治体で、このような取り組みが行われるためのモデルケースになることでしょう。

 

◆今回インタビューに答えてくれたのは

世田谷保健所 生活保健課 生活保健担当者さん

世田谷区では、人と動物がお互いに住みやすい環境をつくるために、住民と区が協力して活動しています。「人だけが住みやすい」ではなく「人と動物のどちらも住みやすい」調和のとれた共生社会実現のために、これからも住民と区が一体となってこの活動を支えていきます。

以下の記事では、保護動物を支援できたり、動物にちなんだ返礼品がある自治体をご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください!

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