• 犬も人間と同様に、室内・室外ともに熱中症のリスクがある
  • 重症化すると命にかかわることも
  • 犬種や犬の状態によって発症リスクに差がある
  • 症状が出たら冷やしながらすぐに病院へ

春になりポカポカ陽気が続くと、愛犬とのお散歩も楽しくなりますよね。暖かくなってきた時期に注意したいのが、犬の熱中症です。

今回は、犬の熱中症の特徴や対策方法などを獣医師監修のもと、紹介していきます。夏はもちろん、春や秋でも高温多湿の日は熱中症のリスクが上がります。愛犬の目線に立ちながら、暑さや湿度との関係性を考えていきましょう。

 

◆この記事を監修してくださった獣医師プロフィール

ttm 医師

岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

熱中症ってどんな病気?

ここでは犬の熱中症における基礎知識を紹介します。基本的には人間の熱中症の症状と変わりませんが、犬は犬種によって体つきに個性が生まれるため、熱中症のなりやすさにも違いが生まれます。

また症状自体は人間と似ていても、発症に至るまでのプロセスには違いがあるものです。犬の熱中症について学び、愛犬の健康を守りましょう。

参考:厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」

重症化すると命に関わることも!熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなった結果、体の中に熱がこもってしまう状態を指します。

人間や犬は体温を調節するために発汗しますが、犬は体のわずかな部分からしか汗をかけません。その分、口を開けて呼吸で水分を蒸発させ、体温調整を行います。

しかし調節できる熱の量のキャパシティを超えると、犬も人間と同様に熱中症を患ってしまいます。室外だけではなく、室内でも熱中症のリスクがあることも人間と同じです。

どんな時になりやすいの?

以下に、犬が熱中症になりやすいとされるシーンを紹介します。

  • 高温多湿環境の放置
  • 過度な運動
  • 気温が暑い日のお散歩
  • 病気や老化などによる体温調節機能の低下

特に日本は全国的に高温多湿な環境であるため、犬が熱中症を患いやすいとされています。蒸し暑い時期にエアコンを点けずにお留守番をさせてしまうと、短時間でも体調が急変してしまうこともあるでしょう。

夏のお散歩では体に熱がこもりやすく注意が必要です。また子犬や老犬は体温調節機能が低いため、成犬では耐えられる環境でも熱をためこんでしまう可能性があります。

ひどくなる前に気づいて!荒い呼吸も熱中症の症状かも

犬の熱中症では、初期に以下のような症状が現れます。

  • パンティング(激しい口呼吸)
  • 心拍数の増加
  • 歩くときにフラフラしている
  • 体温の上昇
  • 口の中や舌が赤くなる
  • 倦怠感(動きたがらない)
  • よだれが多い
  • 体温が40度を超えている

犬の体温は平均37.5~39℃です。小型犬よりも大型犬のほうが平均体温が低い傾向にあるため、愛犬の犬種やサイズによって危険な体温のボーダーラインは変わることを念頭に置きましょう。

初期症状の発見や処置が遅れ、危険な状態になったときには以下のような症状が現れます。

  • 口の中や舌が青くなる・歯茎が白くなる(チアノーゼ)
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 体温の低下
  • 痙攣・震え

体温が41℃を超えるような重度の熱中症では、全身の血管に血栓がたくさんできる「播種性血管内凝固(DIC)」という状態に陥ることがあります。DICになると、重度の出血傾向となるため、体内のあらゆる臓器から出血したり、多臓器不全をおこすなどの過程を経て、死に至ってしまうこともあるのです。

特に注意の必要な犬種とは

犬の熱中症では、犬種によって発症リスクが変動します。以下に、特に注意が必要な犬種を紹介します。

  • 寒い地域出身の犬種……サモエド・シベリアンハスキー・秋田犬など
  • 短頭種(上部気道が狭い犬種)……パグ・シーズー・フレンチブルドッグ・ボストンテリア・チワワなど
  • 犬種にかかわらず、被毛が黒い犬(日光の熱を吸収しやすい)
  • 犬種にかかわらず、肥満な犬(気道が狭くなりやすい)
  • 犬種にかかわらず、心臓病や呼吸器疾患などを患っている犬(呼吸困難や脱水のリスクが上がる)

もちろん、上記に挙げていない犬種でも平等に注意が必要です。特に暑くなり始めの季節は、まだ体が暑さに慣れていないため温度変化に体がついていかず、人間も救急搬送が増える季節です。常に愛犬の状態を気に掛け、すぐに異変に気づけるように心がけていきましょう。

ちょっとの注意でできる熱中症予防

ここでは、比較的ローコストでできる犬の熱中症対策について紹介します。

熱中症は犬にとっても命にかかわる症状です。「ちょっとくらいのお留守番なら大丈夫」「近所を散歩するだけなら大丈夫」と楽観視することが最も危険といえます。まずはできる予防策を取り入れた上で、愛犬の健康を守ってあげてください。

暑くなったら絶対必要な熱中症対策

高温多湿の時期が近付いてきたら、常にチェックしておきたいのが飲み水の残量です。入れ忘れが絶対にないように、家族で重ねてチェックしていきましょう。日中に人がいない場合は、不足しないように普段よりも多めに入れておくことをおすすめします。

また犬が水を飲む機会を増やすために、一ヵ所ではなく室内の複数の場所に飲み水を用意してあげると安心感が高まるでしょう。犬種にかかわらず夏場は基本的に室内で過ごしてもらい、エアコンで室温を調整してください。

留守番中のエアコンはどうしてる?

暑い時期のお留守番では必ずエアコンをかけ、快適な環境を整えてあげましょう。

犬種にもよりますが、犬にとって適切な室温は20~25℃、湿度は40~60%がベストだといわれています。不安であれば温度計や湿度計を取り入れ、愛犬が過ごす空間に設置するとよいでしょう。

また愛犬が普段お昼寝をしている場所に日光があたる場合は、エアコンを点けていてもカーテンやパーテーションで日陰をつくってあげてください。

人がいないからと言って、エアコンを消して家を出るのではなく、動物のいる部屋のエアコンだけは必ず適温で稼働させておくのを忘れないようにしましょう。

日中の散歩は人もツライんだから犬はもっとツライ!

暑い季節の散歩は、熱中症が発症しやすいシーンの一つです。気温が高い時間帯の散歩は避け、早朝や夕方以降に出かけましょう。

また夏の散歩では愛犬を歩かせる前にアスファルトをさわり、犬が肉球をやけどをしてしまわないかを確認してください。

真夏日のアスファルトの表面温度は60℃を超えることもあります。犬は常に裸足です。人が素手でさわって熱ければ犬も熱いのだということを忘れないでください。

また短頭種をはじめとする熱中症リスクが高い犬種は、真夏日の散歩を避けることも選択肢の一つです。特に犬は人よりもアスファルトに近いため、地面からの熱を受けやすいことも忘れないでください。

あまりにも暑い時期のお散歩は無理をせず、水遊びをさせたり室内ドッグランの利用なども選択肢としておすすめです。

車のお出かけ中にエアコンを切った車内に置いて行ってない?

毎年夏になると、車内に置き去りにされた子どもの悲しいニュースを耳にしますよね。犬を乗せて車でお出かけする際も同様のリスクが生じます。普段のお出かけよりも飲み水を多めに用意して、エアコンを常に点けておくように心がけましょう。エアコンをつけていても、車内が均一に涼しくならないこともあるので、キャリーバッグを置いている場所の温度を確かめることも重要です。

エンジンを切って車を降りる際は必ず犬も同伴し、犬だけで閉じ込めることがないように注意してください。また愛犬が快適に過ごすために、車内に冷却シートや凍らせたペットボトルなどを持ち込むのもおすすめです。

あまり知られていませんが、冬でも晴天の場合は車内の温度が40℃台にまで上昇することがあります。冬でも、エンジンを切った車に犬を置きっぱなしにすることは絶対に避けましょう。

屋外で犬を飼育している場合

普段は屋外で飼育している場合も、熱中症のリスクがある時期だけは室内に入れてあげたいものです。何らかの事情でどうしても室内に入れられない場合は、日よけをつくり日陰で涼める場所を用意してあげてください。

水場を作り、飲んだり水浴びができたりといった環境をつくるのもよいでしょう。体温が上がり過ぎない環境や、下げるのをサポートする環境を整えることが求められます。

ただし真夏に室外で犬を飼育することは、場合によっては命にかかわります。日よけや水場はあくまで一時的な処置としつつ、室内飼育への移行を検討するべきだといえるでしょう。

熱中症対策グッズ3選

ここでは、愛犬の熱中症対策に取り入れたいおすすめグッズ3つを紹介します。一度購入すると翌年も使えるグッズが多いため、なるべく早めにそろえることをおすすめします。

愛犬の犬種・サイズ・性格・ライフスタイルと照らし合わせながら、ベストなグッズを選んであげてください。

クールネックバンダナ【SHAKA LABO】

価格:1,280円

夏のお散歩にはぜひ首につけてあげたい、犬の冷却用バンダナです。メッシュ素材で通気性が高く、熱をこもらせにくいデザインになっています。柔らかく肌ざわりがよい生地で、伸縮性にも長けているため着脱も簡単です。愛犬の首の周りの太さを確認し、適したサイズを購入してあげましょう。

クールジェルマット【Peto-Raifu】

価格:2,360円

ペットの夏対策には欠かせない、持ち運びがしやすい冷却マットです。ジェル素材のため持ち歩きもしやすく、車内やキャリーにも敷きやすいことが魅力です。PVCカバーで甘噛み対策もされており、裏表どちらでも使えます。今回紹介している50×90cmは25kg以上の大型犬でも使いやすく、小型犬も伸び伸びリラックスできるためおすすめです。

ドッグブーツ【ASMPET】

価格:2,980円(4個セット)

夏のアスファルトは、歩いても危険がない温度であっても、熱を完全にカットすることはできません。熱中症のリスクを最小限にするために取り入れたいのが、メッシュ素材のドッグブーツです。着脱部が広いため使いやすく、肉球をけがしているときにも使えます。

愛犬のサインに気づこう!症状が出たら冷やしてすぐに病院へ

今回は、犬の熱中症の症状や対策などを紹介しました。犬は人間に言葉で苦しさを伝えられないからこそ、飼主が異変に気づける環境を整えることが大切です。

一見すると元気そうでも、実は体の中で熱中症の症状が進んでいる場合があります。もし症状に気づいた場合はすぐに体を冷やしたり、水分を与えながら、迷わずに動物病院を受診してください。