まとめ
  • ジンベエザメは魚類の中で一番大きい最大種
  • ジンベエザメは卵を産まず、母親から直接仔ザメが生まれてくる
  • ジンベエザメは立ち泳ぎで餌を食べることができる
  • ジンベエザメの目の周りにはたくさんの鱗が生えている

真っ青な海を悠々と泳ぐ姿がダイバーの憧れとなっているジンベエザメ。今ではジンベエザメを観られる水族館も増えました。今回は世界で初めてジンベエザメの展示・長期飼育に成功した沖縄美ら海水族館に、ジンベエザメとその飼育方法についてお話を聞いてきました。 

ジンベエザメってどんな生き物?

魚類最大種のジンベエザメはテンジクザメ目ジンベエザメ科に属しており、ジンベエザメ科に属する唯一の種となっています。背中全体にある淡黄色の斑点模様が特徴的で、その模様でジンベエザメだと認識できます。

世界中の暖かい海に生息しており、雄よりも雌の個体の方が大きいそうです。寿命は100〜130年くらいと考えられていますが、まだまだ謎の多い生物です。

沖縄美ら海水族館で飼育されているジンベエザメ・ジンタは雄で、2023年1月現在、全長8.8m・体重(推定)6t。

1995年に沖縄美ら海水族館に来た時はまだ全長4.6m・体重(推定)0.8tで、推定年齢は3〜8歳だったということなので、現在のジンタは30〜35歳。水族館の研究でジンタは25歳以上の年齢で成熟したと推定されています。

大きな体でもおとなしいジンベエザメ

大きな体のジンベエザメですが、性格はとてもおとなしく、他の魚などの生物を襲うことはないそうです。海の中でもダイバーが近寄っても逃げるわけでもなく、もちろん攻撃してくるようなこともなく、ただ悠々と泳いでいる姿が印象的なジンベエザメ。

ジンタも水槽に清掃などで人が入っても、ぶつかってきたりするような事は全くなく、穏やかにしているのだそうです。まれにびっくりすると、泳ぐ速度が上がるのだとか。

ジンベエザメは水槽にぶつからないの?

沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」の水槽は深さ10m・幅35m・奥行き27mの大きさがあります。これだけの大きさがあるので、ほとんど水槽にぶつかる事はないのだそうです。

ただ曲がるときや方向を変えるとき、他の生物を避けるときなどに体が擦れるような行動をとることがあるので、水槽の凸凹がある一部にはシートが設置してあるとのこと。新しい傷が見つかったときには、必ず飼育スタッフが潜って確認するなどして、対策は日々欠かさないと話してくれました。

1日約30kg!豪快なジンベエザメの食事風景

ジンベエザメの主食は動物プランクトン。沖縄美ら海水族館では、ジンベエザメの餌には主にオキアミを与えています。ナンキョクオキアミと三陸産のツノナシオキアミをメインに、シラスやサクラエビ、サバを1cmくらいの大きさに切ったものを混ぜて与えているそうです。

食事は2回〜4回で、1日約30kgを準備。ジンタのその日の体調や食欲、水槽での動きを見ながら量を調整して与えるのだそうです。

食事の時間は基本的には15時・17時の2回ですが、その日のジンベエザメの状態を確認して餌の量を決めるため、午前中にも食事の時間を設けることがあります。

ジンベエザメの食事風景は圧巻で、一気に海水と一緒に餌を吸い込み、エラの裏側にあるスポンジ状の部分で吸い込んだものを濾して海水は外に、餌だけを体内に取り込みます。

ジンベエザメの食道はとても細いため、食道を通らないような大きさのものが口に入るとジンベエザメ自ら吐き出すのだそうです。

魚なのに卵ではなくて赤ちゃんで生まれるって本当?

魚は卵で生まれて水の中で卵からかえるイメージが強いですが、サメは卵ではなく、母ザメから直接仔ザメが生まれてくる種類(胎生)も多いのだとか。

実際には1995年に台湾で見つかったメスのジンベエザメが妊娠しており、お腹の中に307匹の出産直前の仔ザメがいたことから、ジンベエザメは胎生であることがわかっています。

出産時でだいたい全長40〜60cmの大きさがあり、人の赤ちゃんが出生時50cm前後であることを考えると、かなり大きな赤ちゃんが300匹も一度に産まれることになります。

まだジンベエザメの飼育下での繁殖は世界でも成功例がありませんが、その瞬間が見られるとしたら、圧巻の光景であることが想像できます。

ジンベエザメの飼育で気をつけていることは?

世界で初めてジンベエザメの展示に成功した沖縄美ら海水族館。実際にジンベエザメの飼育に携わっているスタッフは常に試行錯誤の連続なのだそうです。

「今やっていることがベストなのか?常に自問自答するようにしています。もっといい改良点はないのか?ジンベエザメの健康を保つために何がいいのか、常に試行錯誤を繰り返す日々ですね。

他の水族館とも飼育の方法を連絡しあったり、大学の研究機関とも連携して研究結果を飼育に役立てることもしています」

ジンベエザメの世界最長飼育記録という唯一無二の実績に慢心することなく、常に改良を考えているという姿勢には本当に頭が下がります。この姿勢に支えられてこその27年間だったことが伝わってきました。

飼育員だから知っているジンベエザメの秘密

飼育していく日々の中で飼育スタッフはもちろん、研究者すらも驚くような生態が解明されることも。かなり細かく見ていないと気づかないような生態や驚愕の動きまで、飼育しているからこそ気づく生態について、お話を聞いてみました。

ジンベエザメは視力を活かして生活している!?目の周りの鱗から判明

サメは魚類の中でも視力には頼らない生き物で、匂いに頼って生活していると思われていました。そのためジンベエザメも目はほとんど使われていないと思われていたのですが、2020年になってジンベエザメの目の周囲には鱗があることがわかりました。

同時にジンベエザメは目を3〜4cmほど引っ込めることがわかっており、これらは目を保護する役割があることもわかっています。

本来生物は使わないものを保護する機能を持つことは珍しいため、この事実からジンベエザメには目を守る必要がある、つまり視力に頼る生活をしているのではないかと推測されています。

これは近年になって浮上した「ジンベエザメは近距離の視界を把握するために目を使っているのではないか」という説を肯定する材料となっているのだそうです。

餌を食べるときはヒレも使わずに立ち泳ぎができる!

ジンベエザメの食事はとても豪快!水面にあるまとまった餌を効率よく食べるために、なんとジンベエザメは立ち泳ぎをしながら食事をすることがあるのだそうです!

沖縄美ら海水族館が誇る世界最大級の大水槽は深さが10mあるため、全長8.8mの大きな体の立ち泳ぎを可能にしているのです。

もともとサメには浮き袋が無いため肝臓で浮力調整をしているそうです。

この浮力と餌を食べるときに吸い込む空気が口腔や鰓腔(さいこう・エラの入っている内腔のこと)に滞留することで、ジンベエザメは尾びれを動かすことなく体を縦にしたままとどまれるようです。

餌を食べ終わったあと、この空気がエラ穴から抜けていく様子が見られることがあるそうです。この大きな水槽ならではのジンベエザメの食事シーンをぜひ観てみたいですね。

ジンベエザメのココが見どころ!

沖縄美ら海水族館の飼育スタッフが疑問に思ったことから研究が始まり、2020年に新しい発見として発表されたジンベエザメの目の鱗と、引っ込めることが自由にできる目

なかなかじっくり見るのは難しい部分ではありますが、この目をぜひ、自分の目で観て欲しい!飼育スタッフはそう話してくれました。

この目の鱗は片目におよそ2900枚ほどびっしり生えているそうです。ジンベエザメの大きな体に対して小さな目ではありますが、ぜひじっくり観察してみて下さい。

飼育記録27年の世界記録を更新中!

世界で初めてジンベエザメの展示に成功し、今なお研究に邁進している沖縄美ら海水族館ならではのお話をたくさん聞くことができました。

まだまだ謎の多いジンベエザメの生態を少しずつ解明しつつ、世界中の水族館や研究機関と連携して日々ジンベエザメのより良い飼育環境を整備し、その知識を活かした展示がとても美しい沖縄美ら海水族館。人気の理由もよくわかりました。

ジンベエザメを観る機会があったら、ぜひこの記事の内容を参考にしてジンベエザメをじっくり観察してください。

沖縄美ら海水族館

沖縄本島北西部の本部半島備瀬崎近くにある海洋博公園内の水族館。

ジンベエザメ・ナンヨウマンタの展示、飼育下での繁殖にも世界で初めて成功するなど、世界的な実績多数。

水族館の目玉である「黒潮の海」大水槽を含め、沖縄美ら海水族館では人工海水は使わず、目の前の海から海水を直接引き込んで利用することで、より自然に近い環境での飼育を行なっている。

沖縄美ら海水族館

所在地:沖縄県国頭郡本部町石川424 国営沖縄記念公園(海洋博公園)内
入館料:大人2,180円・高校生1,440円・小中学生710円・6歳以下無料