まとめ
  • 猫の熱中症は命にかかわり、回復後も後遺症の危険がある
  • 猫は人間よりも熱中症の進行が早く、迅速な対応が必要
  • 室温が23~25℃になるようにエアコンを設定する
  • 猫が水を飲んでくれるための工夫を取り入れる
  • 迷ったときは自己判断せずにすぐに動物病院へ

猫は犬とは異なり、毎日の散歩に連れていく必要がありません。そのため夏の熱中症のリスクは犬よりも低いですが、人間と同じように室内でも熱中症を発症する可能性があります。

今回は、猫の熱中症の症状や見極め方、対策方法などを獣医師監修のもと、紹介していきます。熱中症は命に関わる症状であり、回復後も後遺症が残ってしまうかもしれません。飼主の工夫や気づきで愛猫の熱中症を防止し、ペットの健康を守っていきましょう。

 

◆執筆・監修:獣医師プロフィール

ttm 医師
岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

猫の熱中症の症状による見極め方

「ちょっと買い物に行くくらい大丈夫」「飲み水を用意しているから心配ない」。そんな軽率な自己判断が、ペットの熱中症のリスクを増加させます。

ここでは、猫の熱中症の症状による見極め方のポイントを紹介します。人間と猫では、同じ空間にいても環境の感じ方が変わるものです。少しでも猫の様子に違和感を抱いたら、楽観視せずに病院の受診と応急処置を行いましょう。

猫は自分の体調の悪さを隠そうとする動物

犬は群れで生活する生き物ですが、猫は集団をつくらずに単体で生活します。野生の猫にとって体調不良は、狩猟ができないことや仲間のサポートが得られないことから、死と直結するといっても過言ではありません。

そのため猫は天敵に体調不良を悟られないように、痛みや違和感があっても隠す習性があります。ペットとして飼育されている猫にも野生の名残りがあり、熱中症の症状が現れても見た目では気づけないケースが多いのです。

飼主が異常に気づいた頃には、中度や重度の症状に進行してしまっているケースもあります。症状の重さによるサインを学び、愛猫の変化にいち早く気づけるようにしましょう。

口を開けて呼吸し始めたら要注意!【軽度の場合】

  • そわそわと落ち着きがなくなる
  • 呼吸が激しくなる
  • 体温が上がる
  • 大量によだれが出る
  • 歯肉・舌・結膜が充血している
  • 口の中や耳の内側が赤くなる

熱中症では体温が40℃前後まで上がり、なかなか下がりません。普段よりも体温が高いと気づいたときには、熱中症の症状が進行していると認識しましょう。

初期症状ではまず猫を涼しい場所に移動させ、少しでも呼吸をらくにさせるために首輪や胴輪などをはずします。体に霧吹きで水をかけ、扇風機やうちわなどで風を送って体温を下げましょう。

もちろん、水を飲ませてあげることも忘れてはいけません。猫用の経口補水液があるとより効果的ですが、緊急時には人用の経口補水液を2~3倍に薄めて与えてもよいでしょう。

タオルで巻いた保冷剤を太い血管が通っている内もも・脇・喉などに当てる方法も、体温を下げるためには効果的です。

軽度の場合、症状が落ち着いても数日間は猫の尿量の変化などに異変がないか注意深く様子をみましょう。

足元がふらついていたら病院を受診【中度の場合】

  • 下痢・嘔吐
  • 歩き方がフラフラしている
  • 手足が痙攣する

中度では脈が速くなるので心臓に負担がかかり、明らかに元気がなくなります。歩き方も弱々しく、水を飲んでも症状が回復しない場合もあります。

早急に動物病院の予約をとりつつ、通院までの間に少しでも回復できるように前項の【軽度の場合】でお伝えした方法で体を冷やしましょう。移動時もできるだけエアコンで車内の温度を下げることが大切です。

キャリーの中の温度を下げるために、保冷剤や凍らせたペットボトルをタオルで包んで設置してあげましょう。また濡れたタオルで猫を包むと、体温上昇を防止できます。

意識がない・痙攣を起こしていたら即病院へ【重度の場合】

  • ぐったりして舌が口の横から出る
  • 舌の色が紫になる
  • 血尿・血便・血の混じった嘔吐
  • 全身で痙攣の発作が起こる
  • 意識を失う

脱水状態をさらに超えると、脳の温度上昇が始まります。臓器の機能障害が引き起こされ、非常に危険な状態です。声をかけても反応が鈍くなり、意識が朦朧としていきます。

意識がないからといって、慌てて冷たい水をかけてはいけません。急激に表面温度だけを冷やしすぎると、深部体温が高いまま毛細血管が縮まり、多臓器不全を起こす可能性があります。

また意識の無い猫に無理に水を飲ませるのも厳禁です。誤飲する恐れがあるためです。

中度と同様に、速やかに体を冷やしながら動物病院に向かってください。猫の重度の熱中症の場合、救命にはできるだけ早い治療の開始が重要です。熱中症の場合、症状が現れてから90分以内に治療を開始することで生存率が上がるともいわれます。

症状の程度にかかわらず、異常を察知したらまずは動物病院に連絡しましょう。猫の様子から自己判断せず、専門医の適切な判断を仰ぐことが何より大切です。

猫の熱中症の致死率は30%以上ともいわれ、後遺症の可能性もある怖い症状

人間は上がった体温を下げるために、汗をかいたり服を脱いだりできますよね。しかし猫は肉球というわずかな部分でしか発汗できず、犬のようなパンティング(口を開けて舌を出し、気化熱で体温を下げる行為)は得意ではありません。

さらに脱げない被毛をまとっており、一度熱中症の症状が現れると熱を体内に閉じ込めやすい状態です。猫の熱中症は重度になると、24時間以内に30%以上が死亡するともいわれています。

また回復後も、中枢神経や消化器の障害をはじめとした後遺症を患ってしまう可能性もあります。数分のお留守番でも猫が過ごしやすい環境を整え、熱中症を予防する習慣を身につけましょう。

熱中症になりやすい猫とは?

ここでは、熱中症のリスクが特に高い猫の特徴を紹介します。熱中症はすべての飼主が対策をとる必要がありますが、中でも特別な注意が必要な猫を知り、ペットの安全に役立てていきましょう。

豊かな被毛で暑さに弱い長毛種

ノルウェージャンフォレストキャット・ペルシャ・ソマリ・メインクーンなどの長毛猫は、豊かな被毛で体温が守られています。その分暑さには弱く、熱を上手に放出できずに熱中症になりやすい傾向にあります。

空間の通気性を高めて室温を下げることはもちろん、熱中症のリスクが高い時期だけサマーカットを取り入れる方法もおすすめです。ただし、猫によってはサマーカットで体調を崩してしまう可能性があるため、獣医師やトリマーと相談しましょう。

鼻が短く、平坦な顔の形をした短頭種

短頭種は鼻が短く、口の中の面積が狭いことが特徴です。呼吸が荒くなりやすく、熱中症のリスクが高い傾向にあります。代表的な短頭種の猫は、ペルシャ・エキゾチックショートヘア・ヒマラヤンなどがあげられます。

短頭種は気道や食道も詰まりやすいため、少しでも水を飲みやすくすることが大切です。水が入った容器をやや高めに設置したり、ケージに備え付ける縦型タイプを導入したりなどで対策しましょう。

体温調節機能が弱い子猫・高齢の猫

子猫は体温調節機能がまだ弱く、老描は若い頃よりも機能が劣ってしまっている可能性があります。子猫とは一般的に生後半年までを指しますが、月齢に関係なく対策が必要です。

特に高齢の猫は暑さを感じにくくなっている場合もあるため、成猫よりも環境の整備が求められます。また認知症を患っている場合は、水を飲む場所がわからなくなっていたり、家具の隙間から出られなくなったりしていることも。

不必要な部屋の扉は閉め、部屋の各所に水飲み場を用意してあげましょう。体温調節のサポートとして、ペット用の冷却シートの設置もおすすめです。

熱によって内臓に負担がかかりやすい肥満・持病のある猫

猫の持っている持病によっては、熱中症による合併症のリスクが高まります。例えば循環器疾患・慢性呼吸器疾患・内分泌疾患・脳神経疾患・腎疾患などは、体温上昇により呼吸状態の悪化を招きやすいといわれています。

また通常よりも体重が重い肥満状態の猫は、皮下脂肪が多いため熱が外に逃れにくいことも特徴です。かかりつけの獣医師と相談しながら、猫の病状に沿った対策を行いましょう。

体温調節の苦手な動物だからこそ、早めの対策が必須!

ここでは、猫の熱中症を予防するための対策方法を紹介します。体温調節が苦手な猫だからこそ、早めの対策が重要です。温度や湿度が高くなる季節に向けて、愛猫が安心して暮らせる環境を整えていきましょう。

エアコンを有効活用する

熱中症のリスクがある時期は、エアコンの冷房や除湿の機能を活用します。猫が快適に過ごせる室温は23~25℃程度が目安です。

外気温が25℃以下の日でも、窓から太陽の光が入り込むと室温は上昇します。基本的には窓を閉めてエアコンで調整しつつ、リモコンはペットの手が届かない場所に収納しましょう。

サーキュレーターや扇風機を併用する

猫が快適に過ごせる環境のためには、室温の調整だけではなく通気性も大切です。サーキュレーターや扇風機を併用しながら、生活環境の風通しをよくしましょう。

羽のついた扇風機が不安な人は、ペットが近づけないようにサークルを設置することをおすすめします。万が一触ってしまったときのために、羽がないタイプを新調するのもよいでしょう。

上下移動のできるような部屋の構造にする

一般的に、熱は下から上へと移動します。そのため一階よりも二階のほうが温度が高くなる傾向にありますが、日当たりや間取りによってはその限りではありません。

家の造りによって、熱がこもりやすい場所や温度が高くなりやすい場所は違うものです。猫が少しでも快適な場所を見つけられるように、上下移動ができるような部屋の構造にすると安心感が高まります。

キャットタワーを利用するのもおすすめです。

水の飲める場所を複数用意する

猫はもともと砂漠で生活していた生き物です。少量の水分でも生きていける体の仕組みを持っているため、水を頻繁には飲みません。しかし熱中症のリスクが高い時期には、猫の飲水量の少なさが危険を招きます。

熱中症防止のためには、猫が水を飲みたくなるような工夫を取り入れることが大切です。猫は動くものや流れる水に興味を持ちやすいため、電気で噴水のように稼働するタイプの水飲みがおすすめです。水飲み場は一ヵ所ではなく、室内に複数ヵ所設置しましょう。

また猫はギリギリの水分量で生きていることが多いため、体温の急激な上昇で急性腎不全を引き起こす可能性があります。不安があれば、普段の飲水量を確認しながら、室内環境とあわせて獣医師に相談しましょう。

保冷グッズの有効活用と選び方

猫の熱中症対策では、ペット用の保冷グッズが役立ちます。ただし猫の場合は爪で引っ掻いたりかじったりしてしまうため、ジェルタイプのような中身が出てくる商品は危険です。

特に保冷剤にはエチレングリコールを使っているものがあり、うっかり舐めてしまうと腎不全を起こして命の危険が生じることもあります。アルミ板やベッドタイプなど、安全性が高い商品を選びましょう。

凍らせたペットボトルを一本置いておくと、周りの空間が冷えるだけではく、結露で表面に生じた水分を猫が舐めてくれることもあります。ペット用商品とあわせてぜひ活用してみてください。

猫の熱中症は悪化が早い!迷ったらすぐに病院へ

今回は、猫の熱中症の症状や対策方法などを紹介しました。

毎年、春から秋にかけて多くの熱中症のニュースを目にします。全国で毎日のように熱中症が発生していますよね。人間でさえ命にかかわる熱中症を、可愛い愛猫の小さな体に生じさせるわけにはいきません。

猫の熱中症は人間よりも進行が早いといわれています。人間の熱中症のケア以上に、猫の対策には万全を期すことが大切です。今からできる対策を取り入れ、安全・快適に暑い季節を過ごしましょう。

犬も熱中症になる危険があります。予防や対策をまとめているのでチェックしてみてください。

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