まとめ
  • 園長は朝から掃除をしながら、園内の補修の必要な場所を見つける
  • 繁忙期は人手の足りない部署の応援にも行く
  • 園内にいる動物の種類はすべて把握している

動物園の園長さんって、日頃どんなお仕事をしているのか興味を持ったことはありませんか?

『動物園の偉い人』というイメージですが、具体的に何をしているのか、想像がつかないという人も多いのでは?

そこで今回は、伊豆シャボテン動物公園の中村園長に、園長のお仕事内容について聞いてみました。

「こんなことまでしているの?!」と驚くような、意外な仕事の内容も!

1500種類のシャボテンと140種類の動物がいる伊豆シャボテン動物公園

静岡県の大室山のふもとに位置し、約20万㎡という広さを誇る伊豆シャボテン動物公園

国内でも類を見ない1500種類ものサボテンを集めて展示するとともに、檻のない動物園をコンセプトに140種類の動物を集め、動物とのふれあいスポットとして公開しています。

特に日本で最初にカピバラを露天風呂に入れるようにして展示した動物園でもあり、話題にもなりました。

現在では5つの動物園が協力してカピバラの長風呂対決などのイベントを毎冬に行い、メディアでも取り上げられています。

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伊豆シャボテン動物公園ってどんなところ?

伊豆シャボテン動物公園の見どころを、園長さんに聞いてみました。

「1959年10月に大室山のふもとにオープンし、動植物との共生、サボテン・多肉植物の現地の生息風景の再現を目指し園内の雰囲気を作ってきました。

柵を極力目立たせず動物が自由な空間でのびのび生活できるように展示するコンセプトで、動物との距離感がとても近い状況を作り出しています。

ピラミッド型温室には奇妙で多種多様なサボテン類を展示しており、国内でサボテン・多肉植物の展示公開規模は随一と言えます」

1959年開園の動物公園は64年の歴史があり、開園当初は伊豆シャボテン公園の名称でした。

開園当時から動物もいたそうで、来園者のニーズも動物を求めていたことから、2016年に名称変更し、伊豆シャボテン動物公園となったそうです。

現在も動物の餌やりスポットが多数あり、動物とゼロ距離でふれあえる動物園として人気があります。

朝イチは園内清掃から!園全体を見渡す園長の仕事

シャボテンの展示も動物の展示も行う伊豆シャボテン動物公園の中村園長のお仕事内容について詳しく聞いてみました。

園長さんのお仕事ってどんなことしてるの?

園に関わることは事は何でもする、と言えるでしょう。お客様の満足度を上げるための施策を実現するために、常に動物飼育・植物管理等の職員が仕事をしやすい環境を作ることを考えて動きます。

また、広報的に園の顔として活動することもあります。園内の整備やメンテナンスも行うし、繁忙期には混雑したところの応援に加わり、アニマルボートツアーズの乗船案内やテレビの対応など、さまざまです」

アニマルボートツアーズのボートでの案内までされるのかと思いましたが、そこはボートへの案内係までなのだそう。でも繁忙期は、中村園長がアニマルボートツアーズまでの案内をしているところに遭遇するかもしれません!

アニマルボートツアーズに乗る時は、案内してくれるスタッフをしっかり確認してしまいそうですね。

園全体に目を配る園長さんの1日を紹介

動物園の園長さんはどんなお仕事をしているのか、おおよその1日の仕事内容を紹介してもらいました。

「まずお客様を迎えるため朝イチは園路全域を清掃します。掃除をしながら、目に入る動物の様子を確認し、お客様が園路を歩く目線で整備が必要な部分を感じ取れるように見ていきます」

毎朝園長自ら清掃をされるというのは驚きです!

来場者の目線を大切に園内をチェックすることで整備箇所を探すのだそうです。

「日中はすぐ改善しなければならない事柄に手を加え、園内各職場との調整や、広報部・総務部・営業部からの会社全体の連携につながる要望を進めます。案件を形にするために社内手続きの書類作成も必要な仕事になります」

園全体の動きを常に見渡すことが大切なお仕事であることがよくわかります。

仕事で一番気をつけていることは?

いつもお仕事の際に注意していることについて聞いてみました。

「常に先の方向を見ながら業務を行うことでしょうか。

お客様に園内で楽しいひとときを過ごしてもらいたいので、退園時に『あー面白かった、楽しかった』と思ってもらえるように、そのために必要な各要素のポテンシャルを上げる仕事をしないといけないと思っています。

動物が健康的に生き生きと生活できる環境を整えたり、奇妙な形の多数のサボテンでお客様を圧倒できるように展示の工夫を考えることも必要です。

またスタッフの力を発揮できるように現場を整えなければいけません。レストランやショップ、窓口の対応も同じです。

園全体でお客様が楽しく過ごせる空間を作るために、それぞれが努力できるような環境を作ることも私の仕事ですね」

中村園長は売店以外の担当はすべて経験があるのだそうです。園全体を見渡して仕事をするというのも難しそうですが、ほぼすべてのセクションの担当経験があるからこそ、気づけるポイントもあるようです。

メンテナンス作業も得意だそうで、ちょっとした修繕などは自分でやってしまうというほど。朝の掃除の際に見つけた場所も、簡単なものなら自分で直してしまうそうです。

園内の動物の名前を全部言えますか?

伊豆シャボテン動物公園に140種類いるという動物たち。その動物たちの種類って全部把握しているものなのでしょうか?ちょっと意地悪な質問かもしれないと思いつつ、聞いてみたところ……。

種名はわかりますが、個体名、愛称などは飼育員が独自にどんどんつけていきますからとてもわかりませんが(笑)。個体数が多いだけに難しいです。

例えば、リスザル・ワオキツネザルは、個体によって顔つきもすべて違いますので、担当飼育員はちゃんと識別してますね。とても私にはそこまではわかりません(笑)」

おお!各個別の名前を想定したお答え!それは難しそうですよね……。

しかし140種類の動物をきちんと識別できるというのはさすがです!

5園国の露天風呂協定とは何ですか?

カピバラが大人気の伊豆シャボテン動物公園ですが、5つの園で結ばれている露天風呂協定があると聞きました。その露天風呂協定とはどんなものなのでしょう?

「カピバラの露天風呂を初めて実施した当園としては、このカピバラの露天風呂を広めていこうという想いから、仲間の5園国で毎年露天風呂実施していこうという趣旨で作っている協定です。

伊豆シャボテン動物公園・長崎バイオパーク・埼玉県こども動物自然公園・那須どうぶつ王国・いしかわ動物園の5園国で、冬季にカピバラの長風呂対決などのイベントも行なっています。メディアの注目度も高く、各園国取材が入る人気イベントです

夏にはスイカの早食い対決もやりますよ。ただスイカの早食い対決は管理が難しくて、エントリーした子以外の子が食べちゃったりと、いろいろアクシデントがあるのでなかなか正確な対決が難しいですけど……」

他の子がスイカを食べちゃうのもそれはそれで微笑ましいですね(笑)

カピバラの長風呂対決はたしかに観てみたいイベントですね!

カピバラの飼育スタッフのお話では、3時間以上お風呂に浸かっていられるカピバラもいるとか。

露天風呂に浸かって気持ちよさそうにしているカピバラを見ているだけで、こちらも幸せな気持ちになれそうです。

伊豆シャボテン動物公園の見どころを教えて!

毎日園内をチェックしている園長さんならではの視点から、伊豆シャボテン動物公園を紹介してもらいました。

ほかに類を見ない展示や、意匠を凝らした展示などを紹介してもらいます。

園長さんおすすめの1番の見どころはココ!

長年勤めている園長さんだからこそ推したい、見どころはどこなのでしょうか?

「日本で伊豆シャボテン動物公園だけで楽しめるアトラクション、ボートに乗って動物探検気分・アニマルボートツアーズ!一度は体験していただきたいアトラクションですね。

ほかにもたくさんの動物にエサあげ体験、カピバラと同じ空間でふれあいができるカピバラ虹の広場、園路を自由に歩いているインドクジャクなど、動物との距離感ゼロを感じる空間が広がっています。

大室山をバックに高原竜ヒドラ、ピラミッド型温室の風景が印象的です。多様なサボテン類とメキシコの遺跡群、その中でラマが私たちを見下ろしています」

園内には遺跡を模したモニュメントが数多く置かれています。

サボテンと動物たち、モニュメントの織りなす景色も、ぜひ楽しんでみてください。

こんなところも観てほしい!

大室山のふもとにある伊豆シャボテン動物公園は高台にあるため、景色の美しさも見どころの1つ。そんな絶景ポイントについて聞いてみました。

「まず、園内メイン駐車場からの海の眺めが素晴らしいです。初島、大島、日によっては伊豆七島も見えます。

放飼いのインドクジャクの遭遇率は非常に高いです。タイミングが合えばリスザルにも出会えます」

さらに、シャボテン公園ならではのおやつあげ体験についても教えてくれました。

「おやつあげ体験が充実していて、ほとんどの動物におやつあげ体験ができるというのも大きな特徴です。ぜひ来園した際にはいろいろな動物にエサをあげてほしいですね。

動物園は命あふれる空間です。

お客様も動物も居心地の良い空間を作りたいと思い、日々勤めていますので、ぜひ躍動する動物たちのパワーを受け取って帰っていただきたいと思います」

たしかに、動物と近い距離で接することで、たくさんパワーをもらえそうです!

動物たちとゼロ距離でふれあい、140種類の動物と遊ぼう!

園内に放し飼いになっている動物たちと遊んだり、エサをあげたりボートに乗って動物を探したり、シャボテンを観て歩くのもよし、伊豆シャボテン動物公園の楽しみ方はいろいろです。

時には園内を散策しながら中村園長の姿を探してみるのも、1つの楽しみ方かもしれませんよ!

◆今回インタビューに答えてくれたのは

伊豆シャボテン動物公園園長
中村 智昭 (なかむら ちあき)さん

少年期は昆虫採集、田んぼでカエル、ザリガニ採り、フナ釣りに夢中になる。TV「野生の王国」を欠かさず見て野生動物への興味を膨らませる。動物に関わる仕事を目指し動物関係の専門学校に進み1990年伊豆シャボテン公園(当時)にて飼育員の職に就く。途中営業部も経験し現在は伊豆シャボテン動物公園の園長となる。

 

伊豆シャボテン動物公園

園内には放し飼いにされている動物が多数いて、30ヶ所以上で動物にエサやり体験ができる来園者参加型の動物公園。1500種類以上のシャボテンを展示している国内でも有数の植物園でもある。

所在地静岡県伊東市富戸1317-13

料金

大人・平日(中学生以上)2,700円 土日祝および繁忙期 2,800円

小学生・平日 1,300円 土日祝および繁忙期 1,400円

幼児・平日 700円 土日祝および繁忙期 700円

営業時間:9:30〜17:00 ※季節により変動あり