水族館でもよく見かけるクラゲ。水中をふわふわと上下に動き、青い水の中に溶けてしまいそうな儚げな姿で、ただ流れに身を任せて流されていく様に、癒された経験のある人も多いでしょう。

でも、その姿は容易に想像がつくものの、クラゲについて詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか?

ここではそんな不思議なクラゲの世界を、少しだけ紹介します。

クラゲには脳も心臓もない!?

クラゲは実はミジンコなどと同じ、プランクトンの一種

脳や心臓・血液はなく、外部からの刺激に対する反射で動く生き物です。

自力で泳ぐ力はほとんどなく、海の中をふわふわと浮遊しているイメージですが、実は卵から生まれてしばらくはイソギンチャクのように岩やサンゴなどにくっついて生活します。そこで長く伸びるように成長していき、伸びた部分がくびれて分裂し、その一つひとつがクラゲの形に成長していきます。一生の間に形が目まぐるしく変わっていくのもクラゲの特徴です。

 

それぞれの時期の名称も違い、

  1. 卵から生まれた時期をプラヌラ
  2. イソギンチャクのような時期をポリプ
  3. ポリプが成長して体を伸ばした時期がストロビラ
  4. ストロビラが分裂した一つひとつをエフィラ
  5. エフィラが成長してクラゲ

というふうに名前も変わっていきます。

クラゲには意外と天敵が多い?

プランクトンといえば食物連鎖の最下層に位置する生物であり、クラゲもその仲間ですのでいろいろな動物に食べられます。

ウミガメがクラゲと間違えて海に流されてきたビニールを食べてしまい、死に至るケースがあります。このお話からわかるように、代表的なのはウミガメマンボウ。最近ではペンギンもクラゲを食べるということがわかってきました。

他にはカワハギ・ウマヅラハギ・マサバなどもクラゲを食べる魚です。

またアオミノウミウシは猛毒で知られるカツオノエボシというクラゲを好んで食べるそうです。カツオノエボシの持つ毒の刺胞を体に取り込み、さらに体内で濃縮して自分の体を毒武装するというのもなかなかすごいお話。人間もおそれるカツオノエボシも、アオミノウミウシにかかっては形無しです。

ちなみに、エチゼンクラゲなどは人もクラゲを食べますよね。

近寄ってはいけない危険なクラゲ

見た目に美しいクラゲですが、中には刺されたら命の危険もある猛毒を持つクラゲもいます。ここではそんなクラゲを紹介します。

刺されたらすぐ医療機関に連絡を!命も脅かす危険なクラゲ

とにかく刺されないようにすることが大事なクラゲです。

海などでその姿を見たら近寄らないこと

刺された瞬間に電気が走ったような激痛!カツオノエボシ

一見すると綺麗な透き通ったブルーの色をしたクラゲです。

しかし見た目とは裏腹に、別名電気クラゲと呼ばれるほど、刺されると鋭い痛みがあります。ヒプノトキシンという毒を持ったこのクラゲは、陸に打ち上げられても、死んでもその毒は消えないのです。そのため、砂浜を歩いていて、青いビニール様のものが落ちていたら注意してください。うっかり素足で踏んだりするとそのまま死に至るケースもあり得ます。

 

大量発生することもあり、その時にはカツオノエボシの色で海が鮮やかなブルーに見えるそうです。うっかり飛び込むと大変なことになるので、海の色がいつもと違うなと思ったら、すぐに海には飛び込まず、注意して海を観察してください。

 

刺されたのが2回目以上の場合は、アナフィラキシーショックの危険もあるので、刺された時は、すぐ医療機関を受診しましょう。

呼吸困難を起こすことも!ハブクラゲ

5月〜10月にかけて熱帯で発生するクラゲで、日本では沖縄から奄美のあたりに生息しています。色は透明で、立方型の傘と長い触手が特徴です。

刺されると激痛が走り、刺された部位にミミズ腫れができます。

過去に死亡例もあることから刺された場合は医療機関に連絡した方がいいでしょう。

 

刺されたのがハブクラゲだと断定できる場合は、大量の酢を患部にかけてから患部を冷やし、医療機関に連絡しましょう。

刺されたのがハブクラゲだと断定できない場合、他のクラゲに刺されていた場合に酢を使うと悪化することがあるので、避けたほうが無難です。

命の危険はないけれど、刺されると痛〜いクラゲ

クラゲにはおよそ13,000種類もの種類があると言われています。その中には刺されても感じない程度のクラゲから、刺された瞬間に激痛が走るようなクラゲまで、いろいろな種類が存在します。ここでは刺されたら痛いクラゲを紹介します。

刺されるとやけどに似た痛み!アカクラゲ

直径20cmくらいの大きさで、放射状の赤い縞模様が特徴的なクラゲです。刺されるとやけどに似た痛みがあり、ミミズ腫れなどを引き起こします。場合によっては呼吸困難になるケースもあるので注意が必要です。

小型だけどピリピリ痛む!アンドンクラゲ

カツオノエボシと同じように電気クラゲと呼ばれるクラゲです。カツオノエボシほどの毒はなく、傘の直径が3cm程度の小さなクラゲですが、触手の長さは20cm程度と長く、刺されるとピリピリとした痛みが走ります。

刺された痛みはそれほどでも。後からヤバイ!カギノテクラゲ

直径2cm程度の小さなクラゲ。多いもので触手が100本もあり、毒も強めです。触手の先が曲がっていることからこの名前がついています。

刺された時の痛みはたいしたことがないようですが、1時間以上してから筋肉の痺れや呼吸困難などの症状が出る場合があります。

クラゲに刺された時の対処法

クラゲに刺されたという経験は、海水浴や磯遊びをしている際に誰しも一度は経験があると思います。

日本近海で多く見られるミズクラゲなどは刺されてもほとんど痛みもないと思いますが、痛みを感じるようなクラゲに刺された場合の対処法を紹介していきます。

海から上がる

海の中で刺されたら、まず海から陸に上がってください。刺されたクラゲの種類によっては、2回以上刺された人の場合、刺されて15分くらいでアナフィラキシーショックを起こす可能性があるためです。海の中でアナフィラキシーショックを起こした場合、溺れる可能性が高く、死亡するケースもある危険な状態になります。クラゲに刺されたらまず、一旦海から上がって状態を確認しましょう。

刺された部位を素手で触らない

刺された場所に触手や針が残っている事があります。「痛い!」と思った瞬間、人は無意識に痛んだ場所を触ってしまうと思いますが、これはNGです。触手や針が残っている場合、触った手にも毒が入り込む恐れがあります。絶対に素手では触らず、まず海水で洗い流してください。

刺された部位をこすらない

前述したように、患部にはまだ触手や針が残っている事があります。その場合、こすることで触手が他の場所にもついてしまい、患部の範囲を広げてしまうことがあります。海水でよく洗い流した後は、ピンセットなどで触手や針を取り除いてから、氷や濡らしたタオルなどで冷やすなどの方法をとるようにしましょう。

真水で刺された部位を洗わない。必ず海水を使う

刺された部位を洗い流す際、つい水道水を使いたくなると思いますが、それもやめてください。それまで海水に浸かっていた患部に水道水をかけると、浸透圧の関係で触手からの毒の放出を促進する可能性があるからです。患部を洗い流す際は、必ず海水を使うようにしましょう。

またお酢をかけることを推奨するケースもありますが、ハブクラゲの毒には効果的でも、カツオノエボシの場合は逆効果、というようにクラゲの種類によって効果が変わるので、何に刺されたのかわからない場合には避けた方がいいでしょう。

40℃以上のお湯をかける

クラゲの毒はタンパク質のため、お湯をかけると毒が和らぐそうです。刺された直後は40〜50℃程度のやけどをしない程度のお湯をかけるといいのだとか。腫れてきた後は冷やすことも必要で、ずっと温めておけばよいということではないので注意してください。

クラゲに刺されると納豆が食べられなくなるって本当?

クラゲの針に含まれるポリガンマグルタミン酸(PAG)は納豆のネバネバに含まれている物質と同じものなのだそうです。そして納豆アレルギーの人の免疫はこのPAGに反応することがわかっています。実際に納豆アレルギーの人はクラゲに刺された経験がある人が多く、クラゲに刺されることでこのPAGが体に蓄積されてアレルギーを引き起こしていると考えられています。

納豆アレルギーはアナフィラキシーショックを起こすこともあるアレルギーなので、マリンスポーツの愛好者など、クラゲに刺される機会の多い人は注意が必要です。

ふわふわと浮遊する姿を眺めるなら水族館がおすすめ

浮遊する姿が愛らしいクラゲですが、触れるといろいろな危険もあるので、海で出会った時は注意が必要なことはお分かりいただけたでしょう。

でもやっぱりその姿には癒されたい!そう思う人は多いのでは?

安全にクラゲに癒されるには、水族館がおすすめです。最近ではクラゲを集めた水族館や、クラゲの水槽を充実させる水族館も増えていますので、ぜひそんな水族館に、クラゲに癒されに行ってみてください。