まとめ
  • 「猫が吐くのは当たり前」はウソ
  • 犬に比べれば吐くことは多いが、現在のようにキャットフードを食べ、室内で生活する猫が吐く理由はほとんどない
  • 長毛種の場合は毛玉を吐くこともあるが、短毛種は毛を飲み込んでも便と一緒に出る
  • 猫が吐くのは病気のサインかも。月に2回以上吐いたら受診の検討を

「猫は吐くのが当たり前」と、聞いたことはないでしょうか?

実際に猫を飼っている人でも、そう思っている人は多いようです。

しかし本当に「猫が吐くのは当たり前」なのでしょうか?病気を疑うようなケースが隠れているのはどんなときなのか、獣医師藤原先生に「猫が吐く」ことについて聞いてみました

「猫が吐いた!」それって嘔吐?吐出?

実際に猫を飼っていると、猫が吐いている現場に遭遇することもあるでしょう。

一見するといつも同じに見える「吐く」という行為ですが、実際には「嘔吐」と「吐出」という2種類の状態があると藤原先生は話してくれました。

この2つには大きな違いがあり、獣医師はその違いによって異常のある部位を判断するのだそうです。

ではその違いとは何なのでしょうか?

嘔吐(おうと)とは

胃や腸まで届いた食べ物や飲み物が、何らかの異常によって吐き出されることをいいます。

  • 吐き出されたものは消化が始まった状態のものである
  • 胃の逆蠕動で吐き出すので下向きで吐く
  • 食べたり飲んだりしたあと少し時間を置いてから、または食べたり飲んだりとは関係なく吐く

このような特徴があります。

吐き出したものが消化途中のものであったり、直前に何か食べたりしていないことが確認できる場合は嘔吐に当てはまります。

吐出(としゅつ)とは

食道のトラブルや腫瘍などの影響、神経・筋肉からの反応や異常によって、食べたものや飲んだものが食道から吐き出されることをいいます。

  • 吐き出されたものはまだ消化が始まっていないものである
  • むせるような感じで前に吹き出すように吐く
  • 何かを食べたり飲んだりした後に吐く

猫が吐く前に何かを食べたり飲んだりしている場合や、吐き出されたものがまったく消化されていないものの場合は吐出である可能性が高いといえます。

このような違いから、獣医師は異常が起きているのは食道なのか、胃や十二指腸なのかを判断するのだそうです。

飼主は猫が吐いた前後の状況をできる限り把握して、獣医師に話せる用意をしておきましょう。

猫草は必要?

ペットショップやお花屋さんなどに行くと、店頭に「猫草」として葉の細長い草が植えられた鉢植えが置いてあるのを見かけることがあります。

だいたいエン麦やイネ科の植物で、植えて芽が出たばかりの柔らかい状態の葉であることが多い「猫草」。

「猫は吐くのが当たり前」だから吐くのを補助するために「猫草」は必要。

こんな風に考えている人も多いようです。

しかしこれは本当に「猫に食べさせなければいけないもの」なのでしょうか?

藤原先生は「猫には本来的には猫草は必要ない」と言います。実際に猫の中には猫草を好む子もいるようですが、猫に「猫草を食べさせる必要は特にはない」そうです。

「猫は吐くのが当たり前」ではない

以前から「猫はよく吐く動物である」と言われており、こういう固定概念を持っている人は多いと思います。

しかし、獣医師である藤原先生にお話を聞くと「猫は犬に比べれば吐く回数は多いかもしれないけれど『吐くのが当たり前』なわけではない」と言います。

ではこの固定概念は、どうして生まれたのでしょうか?また実際に猫が嘔吐する理由はどこにあるのでしょうか?

長毛種は毛玉を吐くことがある

猫は頻繁に毛づくろいをする習性がある生き物。そのため体をなめ、抜けた毛を飲み込んでしまい、胃に溜まった毛を吐き出すことがあります。

特にメインクーンなどの長毛種の場合は、その毛の量が多くなるため、毛が溜まりやすく、嘔吐につながると考えられます。

しかし日本猫や短毛種といわれる猫の場合、毛づくろいで飲み込んだ毛はうんちと一緒に排出されます。これが嘔吐の原因になることは少ないようです。

長毛種も日頃からブラシをかけてあげるなどの対策で、嘔吐の心配はかなり減らすことができるでしょう。

室内飼いと外飼いで猫の吐く原因は変わる

室内飼いされている猫は、普段から口にしているものを飼主が把握できていることが多いでしょう。

しかし外飼いや外を自由に歩き回れる猫の場合、吐く原因がわからなかったり、異常があるかないかを判断する材料が足りない場合がほとんどではないでしょうか。

ここではその違いから判断される危険について解説します。

室内飼いの猫の場合

室内飼いされている猫の場合は、飼主の与えたキャットフードやおやつなど、飼主が猫の食べた物を把握できているという利点があります。

部屋の中にうっかり置き忘れたものを誤食してしまう危険もありますが、だいたい何を食べたかの察しはつくことがほとんどでしょう。

危ないものを口にしてしまった場合も含め、猫が吐いたら基本的には病院の受診を検討しましょう。悩んだらまずはかかりつけの病院に電話で確認するという方法もあります。

室内飼いの猫が嘔吐する主な理由

  • 食べたものの中毒を起こしている
  • おもちゃなどの誤飲をした
  • 毛玉などの消化できないものを口にした
  • 胃腸炎や腸閉塞などの病気にかかっている

外飼いの猫の場合

室内外の猫に対して外を自由に動き回る猫の場合、飼主が猫の口にしているものを把握できていないという危険があります。

近所で除草剤が撒かれていて、かかったものを猫が食べてしまっても飼主にはわかりません。

また猫には狩猟本能があるため、外で獲物を捕まえて害のある生き物を食べていても、何を食べたかを飼主が把握するのは難しいでしょう。

問題ない嘔吐の場合もあると思いますが、何を食べて吐いているのかわからないため、外飼いの猫が吐いた場合は手遅れになる前に、まず病院の受診を考えましょう。

外飼いの猫が嘔吐する主な理由

  • 除草剤などのかかっている草を食べて中毒を起こしている
  • 飼主の知らないものを誤食して体調不良になっている
  • スズメやヘビなどを食べ、消化しきれないもの(鳥の羽など)を吐き出した
  • 胃腸炎や腸閉塞などの病気にかかっている

「猫は吐く動物」という固定概念はどこから生まれたのか

少し前までは猫は外で飼われていることが多く、外でいろいろなものを獲って食べていました。

その際には猫には消化のできないものも多く食べており、それを吐き出すことが頻繁にあったため「猫は吐く動物」という固定概念が生まれたようです。

室内飼いが主流になり、餌を外で獲るものに頼る必要のない現在では「猫は吐く動物」ではなくなっていると考えたほうが良いでしょう。

吐いた前後の様子と吐いた回数から判断する受診の目安

一口に「吐いた」と飼主が病院で言う場合にも、実際の状況は違っていることがあると藤原先生は言います。

何かを食べて吐いたとき、たて続けに3回吐いたけれど病院では「1回吐いた」と獣医師に告げる飼主と「3回吐いた」と言う飼主がいるのだそうです。

どう答えるのが獣医師には診察がしやすいのでしょうか?

「1回吐いた」の考え方

吐いた回数は、実際に猫がものを吐き出した回数を獣医師に報告しましょう。

例えば、昨日の朝ごはんを食べて立て続けに2回吐いた。夜は1回も吐かなかったが、翌朝また立て続けに3回吐いた、というような場合は、吐いたのは「2回」ではなく「昨日の朝は2回で今朝は3回、トータルで5回吐いた」と起こったことをそのまま正確に伝えましょう。

基本的には続けて2回以上吐いた場合は受診した方がいいと考えてください。

吐く前に何か食べたり飲んだりしていたか?

外飼いの猫の場合は難しい場合もあるでしょうが、室内飼いの場合は食べたものや飲んだものはある程度正確に把握できていると思います。

吐く前に何か食べたり飲んだりしていたか、吐くだいたい何分前に、何を食べたのか、などをメモに残しておきましょう。

可能であれば吐いたものをそのまま診察の際に持っていったり、持っていけない場合でも何を吐いたのかもメモに残しておきましょう。

吐いて様子を見ていいのは月に1回程度まで。それ以上だったら元気そうに見えても受診を検討

吐いた後の猫の様子はしっかりと観察してください。吐いた後に食欲がない・元気がないなどの場合は病院を受診する必要があります。

また続けて2回以上吐くという場合も、受診を考えてください。吐いたものに血が混じっているような場合も受診が必要です。

様子を見ても大丈夫なのは、月に1回程度、単発で吐いて、吐いた後も猫の様子がいつもと変わらない元気な状態である場合。吐いたものが消化できなかった毛玉などだとわかり、血が混じっているようなことはないと判断できる時だけだと考えてください。

吐いた後、様子を見てもいい場合

  • 連続ではなく、1回だけ吐く
  • 吐いたものの内容が毛玉などで、異常がないと判断できる
  • 吐いた後も元気で食欲もあり、いつもと変わった様子がない
  • 吐いたものに血液だと思われるようなものはない

「猫は吐く動物」は思い込み。猫が吐いたら受診を考える習慣をつけましょう

現在「猫は吐く動物」ではなくなってきている、ということは理解できたでしょうか?長毛種・短毛種によって若干の判断の違いはあるものの、やはり他の動物と同じように「吐く」という行為には病気が隠れている可能性が高いのです。

放っておくことで、手遅れになってしまってから後悔しても間に合いません。

「猫だから吐いても当たり前」とは思わずに、受診や病院への相談をする習慣を身につけましょう。

 

◆インタビューに答えてくださった藤原先生のプロフィール

藤原 光宏 獣医師

藤原動物病院院長。西洋医学による治療はもちろん、動物の体にやさしい治療を目指したホモトキシコロジーや漢方などの東洋医学・オゾン療法などを取り入れた、いいとこどりの統合医療を軸にした診療に定評がある。

ふじわら動物病院 

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