まとめ
    • 外来種とは、本来とは異なる地域に生息する生き物
    • 外来種が増える原因は人間によるもの
    • 外来種は「入れない」「捨てない」「拡げない」が原則
    • 外来種自体は人間の生活に必要な場合もある

地球には、人間に観測されているだけでも約175万種類もの生き物が存しています。それぞれの生き物がそれぞれの地域で暮らし、人間との距離感を保ちながら生態系を築いています。

しかし今、一部の生き物が本来の自然環境を破壊しつつあることを知っていますか?人間と生き物のバランスが崩れる根本的な原因は、生き物ではなく人間にあるのです。

今回は、日本における外来種の種類や外来種が増加する原因、今後の外来種との関係性について紹介します。

外来種・特定外来種とは?意味を解説

外来種とは、本来の生息地域とは異なる地域に生息している生き物です。外来種のなかでも、国外由来の生き物を外来生物と呼びます。

侵略的外来種とは、生態系・人の生命や健康・農林水産業への被害を及ぼす外来種です。外来生物と同様に、国外由来の侵略的外来種は侵略的外来生物と呼ばれます。

さらに侵略的外来種のなかでも、国が法律(外来生物法)に基づいて指定した生物が特定外来種です。特定外来種の輸入・販売・無許可の飼育などは、懲役や罰金による罰則の対象になります。

日本国内に生息する外来種の種類10種

ここでは、日本国内に生息する2,000種類以上の外来種のなかでも、とくに日本で生活する上で身近な生き物や知名度が高い生き物を紹介します。動物園やペットなどで見かける機会が多い生き物も、本来は日本に生息していない可能性があるのです。

アライグマ

アライグマはもともと北アメリカを中心に生息しており、ペットとして人気になったことがきっかけで日本に流通しました。

しかし飼育が難しく、多くの個体が遺棄され、野生で繁殖してしまいました。現在は、農作物に対する深刻な被害が報告されています。

ヒアリ

ヒアリは南アメリカが原産の生き物です。交易に伴いさまざまな物資にくっ付いて国内に拡大したと考えられています。

攻撃的な性質を持っており、爬虫類や虫類、小型哺乳類などを集団で攻撃し捕食します。

カメ

カミツキガメ・アカミミガメ・ワニガメなどの一部のカメは、国外からやってきた外来種です。野生で繁殖した大きな理由はペットの遺棄で、現在では北海道から沖縄まで幅広く生息しています。

現在もペットとして人気でありながら、生態系や農作物被害の報告が多い生き物の一種です。

ウシガエル

雨季を鳴き声で彩るウシガエルも、アメリカやカナダからの外来種です。戦後の食糧難を解決するためにアメリカから貰い受けたことをきっかけに、国内での繁殖が始まりました。

捕食性が強く、昆虫・水生生物・哺乳類・魚類などさまざまな生き物を捕食し、生態系を乱してしまいます。

アメリカザリガニ

アメリカザリガニは、都市部から用水路・湖沼など、幅広く定着している外来種です。食用ウシガエルの餌として、同時期にアメリカから持ち込まれました。

ペットの遺棄をはじめとする意図的な放流により、現在は47都道府県すべてで観測されています。

ブルーギル

ブルーギルは、北アメリカ東部を原産とする淡水魚です。1960年に持ち込まれ、研究の後に静岡県に放流されたのをきっかけに繁殖したといわれています。

捕食による漁業被害が示唆されており、とくに湖沼では操業への影響が懸念されています。

 

アフリカマイマイ

アフリカマイマイは、沖縄や近辺の諸島を中心に生息する外来種です。シンガポールから台湾を経由し、食用目的で日本に持ち込まれました。

農業への被害だけではなく、重大な症状を引き起こす寄生虫の宿主として問題視されています。

キョクトウサソリ

キョクトウサソリはアフリカや中米などを原産とする蛛形類(ちゅけいるい)で、日本で唯一飼育できるサソリです。

ペットとして飼育されていた個体が野生で繁殖したと考えられています。刺されると激しい痛みが生じ、変色や壊死を伴うこともあります。

ヌートリア

ヌートリアは、長く鋭い前歯を持つ哺乳類です。毛皮の採取に利用するために南アメリカから持ち込まれました。

水生生物や農作物を捕食するため、生態系や農林水産業に被害をもたらしています。

グッピー

熱帯魚として人気のグッピーも、在来種の住処を奪う外来種です。南アメリカを中心に分布しており、観賞用として持ち込まれました。

現在は野生化している個体も観測されています。おもにメダカにとって生態上の脅威になると考えられています。

侵略的外来種・ノネコとは

ノネコは、野良猫のなかでも「人間から餌をもらわずに野生として生きている個体」です。希少な在来種を捕食したり、他の生き物にウイルスを感染させたりすることから、侵略的外来種に指定されています。

侵略的外来種であるノネコは、動物愛護法で守られている野良猫とは異なり、虐待・虐殺することが違法ではないのです。

猫を飼育していない人にとっては、外で見かけた猫が野良猫なのか、室外飼育の猫なのか、ノネコなのかの判別はつきません。

猫や動物が不必要に殺されないために、そして人間と猫の共存に理解を得るためには、ペットの遺棄や猫の室外飼育の廃止を進めていくべきだといえるでしょう。

外来種による生態環境の問題とは

ここでは、外来種による生態環境の問題を紹介します。人間の手によって繁殖してしまった外来種は、在来種や既存の環境に大きな問題を与えています。現在の状況の背景を学び、今の私たちにできることを考えていきましょう。

外来種が与える環境への影響

以下に、外来種が与える環境へのおもな影響を紹介します。

  • 元々生息していた動植物を駆逐し、土地の生態系を崩す
  • 交配により遺伝子の汚染が進む
  • 農林業や漁業へ悪影響をもたらす
  • 他の地域の病気や寄生生物を持ち込む

生態系は、数十年・数百年という長い期間をかけて築かれます。土地ごとに特有の環境のなかで、在来種同士がお互いの特性を利用し合い、食物連鎖が複雑に絡み合うことで現在の生態系が生まれているのです。

絶妙なバランスで成り立っている生態系に突然外来種が現れると、短期間で生態系が破壊されてしまいます。一見するとスムーズに生態系に入り込めたとしても、その形は本来は存在しない歪な環境です。

在来種と外来種の交配により遺伝子が汚染されたり、従来は存在しなかったウイルスや寄生虫が発生したりすることも。

農業や漁業への悪影響により、経済的・文化的に大きな打撃を受けるコミュニティも増えていきます。

外来種が増える原因

外来種が増える原因は、100%人間によるものです。人間の干渉がない要因によってやってきた生き物は、自然の流れに沿って移動してきたと見なされるため、外来種とは呼ばれません。

  • ペットの遺棄・脱走
  • 家畜用・食用として持ち込まれる
  • 荷物や貨物に紛れ込む

外来種のなかには、私たちの生活に欠かせない生き物も存在しています。家畜・食用だけではなく、ペットもその一つです。外来種自体を否定するのではなく、在来種や既存の環境に悪影響を与えないための付き合い方を、考える時期に来ているといえるでしょう。

外来種を増やさないための対策

環境省では、外来種を増やさないための対策として「外来生物予防三原則」が提唱されています。

  • 外来種を「入れない」
  • 外来種を「捨てない」
  • 外来種を「拡げない」

ペットを飼育したり外国産の生き物にかかわったりするときには、上記の3つのルールを徹底しましょう。

「飼うのが面倒になった」「良かれと思って放流した」「つい魔が差した」……。そんな慢心や出来心が、長い期間かけて培われてきた日本の生態系を破壊してしまうのです。

人間と動物の適切な共存のために…できることを探してみよう

今回は、外来種の意味や代表的な種類、外来種が広まった背景などを紹介しました。

「鳥かごが狭くて可哀相だから、ペットの鳥を逃がしてあげた」

「綺麗な川だから、ザリガニを放流してあげた」

「ホームセンターで買った外国産のクワガタを、公園に放してあげた」

たとえ動機が善意によるものでも、これらはすべて生態系を破壊する行為に他なりません。

一度人間の手で飼育された生き物は、在来種でも外来種でも基本的には自然環境に戻せないのです。

生き物の終生飼育を徹底しつつ、日本の美しい自然や生態環境を守るためにも、外来種への意識を高めていきましょう。

 

以下の記事では2023年版の日本の絶滅種と絶滅危惧種を紹介しています。

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