まとめ
  • 日本の絶滅種は7種、絶滅の可能性が高いのは12種
  • 絶滅種の多くは、人間が与える影響により命を失っている
  • 世界には4万種類以上のレッドリスト指定生物がいる

地球の長い歴史は、生き物の誕生と絶滅の歴史でもあります。過去に存在した生き物の絶滅数は、累計で50億種とも500億種類ともいわれているのです。

今回は、今まさに窮地に立たされている日本の絶滅危惧種を紹介します。絶滅危惧種の中には、私たちの生活に身近な生き物も含まれています。

生き物たちの現状を学び、人間との共存について視野を広めていきましょう。

絶滅危惧種(レッドリスト)とは?

ここでは、絶滅危惧種・レッドリストの意味やカテゴリーを紹介します。

 

レッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成する「絶滅危惧種の情報を記載した資料」です。基本的には約5年ほどの間隔で更新されます。国内のレッドリストは、環境省・地方公共団体・NGOが作成しています。

 

生物の増減や地球環境の変化によって内容が変化するため、最新情報はIUCNや環境省が発表している内容を参考にしましょう。

絶滅の危機に瀕している生物「絶滅危惧種」

レッドリストの内容は随時更新されています。2024年現在では、全世界で44,000種類以上もの生き物が記載されています。

 

レッドリストに記載されている生き物は動物(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類・無脊椎生物)だけではありません。植物や菌類など、地球環境を構成するほぼすべての生物が対象となっています。

 

レッドリストは、絶滅の危険性がある生き物を共有する資料であるだけではなく、地球における生物多様性を維持するための重要な指標です。

 

各国の政府や機関が、生物多様性の保全のために必要な意思決定を行う際に、大きなサポートとなるツールといえるでしょう。

 

参考:国際自然保護連合「RED LIST」

絶滅危惧種には9つのカテゴリーがある

国内・国外にかかわらず、絶滅危惧種は9つのカテゴリーに分類されます。

絶滅(EX)

すでに絶滅している(と考えられている)

野生絶滅(EW)

人間の管理環境下(もしくは自然分布域の明らかに外側の野生)でのみ存続している

絶滅危惧I類(CR+EN)

絶滅の危機に瀕している

絶滅危惧IA類(CR)

ごく近い将来で野生での絶滅の可能性が非常に高い

絶滅危惧ⅠB類(EN)

IA類ほどではないが、近い将来で野性での絶滅の可能性が高い

絶滅危惧II類(VU)

絶滅の危険が増大している

準絶滅危惧(NT)

今後の生息条件の変化によって絶滅危惧に移行する可能性がある

情報不足(DD)

生き物の状態を評価するための情報が不足している

絶滅のおそれのある 地域個体群(LP)

地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高い

このカテゴリーは「レッドリスト」と呼ばれ、判断基準や現在のリストは環境省にて公開されています。絶滅危惧種について気になる人は、環境省の最新情報もチェックしてみましょう。

参考:環境省「レッドリスト・レッドデータブック」

日本の絶滅危惧種・準絶滅危惧種は全部で51種

レッドリストは現在も新しく更新され続けていますが、改訂版として最新の情報が公開されているものは2020年版になります(2024年1月現在)。

2020年版の環境省公開最新レッドリストによると、日本の絶滅危惧種・準絶滅危惧種は全部で51種類とのことです。

すべての種の命は尊重されるべきという前提の上で、レッドリストは「自然保護の優先順位を決定するための資料」としての役割を担います。

参考:環境省「環境省レッドリスト2020」

日本の絶滅種7種

日本固有に生息していた生き物の中で、絶滅種として記録されているものは以下の7種類です。

  • オキナワオオコウモリ
  • ミヤココキクガシラコウモリ
  • オガサワラアブラコウモリ
  • エゾオオカミ
  • ニホンオオカミ
  • ニホンカワウソ(本州以南亜種)
  • ニホンカワウソ(北海道亜種)

画像:エゾオオカミ

絶滅の原因は生き物によってさまざまですが、多くの場合人間の介入が影響していると考えられます

例えば生息地の開発・駆除目的の過剰捕獲・森林伐採・捕殺の奨励など、本来は危険にさらされる必要のなかった命が人間の都合によって奪われているのです。

日本の絶滅危惧IA類12種|絶滅の可能性が高い生物

環境省によると、日本で確認されている生き物の種類は約9万種といわれています。その中で絶滅危惧種IA類に選定されているのは12種類です。

数年、数十年の間に絶滅する危険性が高いといわれている生き物たちについて学んでいきましょう。

センカクモグラ Mogera uchidai 

センカクモグラは1979年に模式標本(種の規格となる標本)として採集された、メスの個体のみが発見されているモグラです。分布が非常に限定的で、植生の変化や土壌の流出などの環境変化による絶滅が懸念されています。

ダイトウオオコウモリ Pteropus dasymallus daitoensis 

ダイトウオオコウモリは、南北両大東島にのみ生息するコウモリです。両大東島の開発に伴って生息数が激減しており、黄金色の頸部を持つダイトウオオコウモリは日本で最も美しいオオコウモリともいわれます。

エラブオオコウモリ Pteropus dasymallus dasymallus 

エラブオオコウモリは口永良部島・宝島・中之島・平島・悪石島にのみ生息しているコウモリです。

現在の生息数は200頭以下といわれており、近年における生息確認も減少の過程にあります。絶滅危惧の原因は主に森林伐採で、生息環境の縮小が懸念されています。

クロアカコウモリ Myotis formosus 

クロアカコウモリは、日本では対馬にのみ生息するコウモリです。1968年以来、約40年ぶりの2006年に4個体の発見報告がありました。

朝鮮半島・中国・インドなどのアジア特有のコウモリで、もともとは外国から迷い込んできた個体が繁殖したと考えられています。

ヤンバルホオヒゲコウモリ Myotis yanbarensis 

ヤンバルホオヒゲコウモリは、奄美大島・沖縄島北部・徳之島のみに生息するコウモリです。

1996年に発見され、分布が限定的であることから生態の情報が少なく、絶滅が懸念されています。森林伐採・ダム建設・道路建設などにより、生息地が減少中です。

セスジネズミ Apodemus agrarius 

セスジネズミは背中の中心に一本の黒いスジがあることが特徴のネズミで、尖閣諸島魚釣島にのみ生息しています。生息地は主に草地ですが、人間によって持ち込まれたヤギにより、草地の減少が進行しています。

オキナワトゲネズミ Tokudaia muenninki 

オキナワトゲネズミは沖縄県北部の固有種で、草やシダに覆われた環境に生息するネズミです。

国の天然記念物に指定されていますが、犬・猫・マングースなどによる捕食で個体数が減少傾向にあります。また土地開発による生息地の破壊も懸念されています。

ツシマヤマネコ Prionailurus bengalensis euptilurus 

ツシマヤマネコは対馬にのみ生息する野生の猫です。また大陸が地続きだった約10万年前に日本に渡ってきたと考えられています。

過去には「ヤマネコといえばツシマヤマネコ」といわれるほど繁栄していましたが、現在は食物となる小動物が減少したことで絶滅の危険性が高まっています。

イリオモテヤマネコ Prionailurus bengalensis iriomotensis 

イリオモテヤマネコは沖縄県西表島にのみ生息しており、特別天然記念物に指定されている生き物です。

現在の個体は100頭前後といわれており、個体減少の主な原因は交通事故です。生息地付近の道路には、注意を促す標識や動物用の人口トンネルなどが設置されています。

ラッコ Enhydra lutris 

水族館で人気のイメージが強いラッコですが、実は現在の国内頭数は3頭のみです。世界規模でラッコの個体数が減少していることから捕獲・輸入が禁止になり、水族館育ちの国内のラッコは繁殖能力が低下しています。

ピーク時には120頭以上が飼育されていましたが、個体数減少を受けて飼育展示を継続することが困難になっています。

実は絶滅危惧種!?ラッコに会える日本の水族館

ニホンアシカ Zalophus japonicus 

ニホンアシカは、現在では絶滅したともいわれているアシカです。分類は絶滅危惧種ですが、生存している個体数は推定でも10頭以下と考えられています。

個体数減少の背景には、20世紀以降ニホンアシカの油や皮を採集するために乱獲が進んだことが関連しています。

ジュゴン Dugong dugon

ジュゴンは沖縄諸島周辺に生息している海獣です。漁業の網に誤ってかかってしまうことや、餌場の藻場の減少などで個体数減少が加速しています。

世界で2ヵ所の施設だけが飼育展示しており、そのうちの1つが日本の鳥羽水族館です。

トキって絶滅したの?ニッポニアニッポンの今

日本固有生物の絶滅危惧種といえば、トキ(学術名:ニッポニアニッポン)が有名ですよね。野生のトキは1981年を最後に絶滅し、管理保護下にあった最後のトキも2003年に絶滅してしまいました。

そのため、国内産のトキには残念ながらもう二度と会うことはできません。しかし現在、中国から提供を受けた親鳥からの繁殖・放鳥が進んでおり、約480頭の国外産トキが佐渡にて生息しています。

世界の絶滅危惧種は?

ここでは、世界の絶滅危惧種について紹介します。小さな島国である日本ですら、レッドリストに記載された種の総数は580種を超えました。地球全体で見ると、4万種類以上の種がレッドリストに指定されているのです。

世界一絶滅危惧種の多い国は?

世界一絶滅危惧種の多い国は、2021年時点で3,717種類を超えているマダガスカルです。マダガスカルでは絶滅危惧種が食用にされていたり、かつての森林の90%が失われてしまったりなどの深刻な状況が発生しています。

マダガスカルには固有の生き物が多く生息しており、世界の全植物・動物のうち5%が分布しています。発見直後から絶滅危惧種に選定される種も珍しくありません。

またマダガスカルに生息する生き物のなんと80%が、マダガスカル固有の種です。種を守ろうとする活動の傍らで、クーデターや密猟などが横行していることから、環境への影響が懸念されています。

参考:総務省統計局「世界の統計2022」

実はパンダも!?意外な世界の絶滅危惧種

動物園で人気者のパンダは、世界的に見ても頭数が少ない絶滅危惧種です。しかし現在、さまざまな保護活動の成果によって野生の個体数が復活しつつあります。

まだ予断を許さない状況ではありますが、2016年には「絶滅危惧種」から「危急種(絶滅危惧II類とほぼ同義)」に引き下げられました。生息環境はいまだに厳しい状況ではありながら、今後の動きが注目されています。

人間と生き物の共存について考えよう

今回は、日本や世界の絶滅危惧種について紹介しました。絶滅危惧種の多くは人間が与える影響により命を奪われていますが、一部の悪例を除き人間が面白半分に絶滅を推進させたわけではありません。

 

人間の繁栄の歴史の中で、住む場所や働く場所を確保するために開拓が必要になったケースや、獣害対策として捕獲・殺害を推進したケースも多いのです。現在も、害獣駆除のために野生動物を殺害する資格が認定されています。

密猟のような違法行為においても、なぜ密猟者が犯罪に手を染めなければならないのかまでを考えることで、より本質的な課題解決に目を向けられます。

闇雲に「生き物を殺すのはだめだ」と主張するだけでは、人間と動物の共存共栄は難しいといえるでしょう。

絶滅危惧種の背景を分析し、人間と生き物がお互いに安全に暮らし、種を存続し続けられる可能性を模索していくことが大切です。

 

以下の記事では、アニマルウェルフェアについてまとめています。動物との真の共生に欠かせないアニマルウェルフェア。

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