まとめ
  • 猫の介護は犬の介護とは異なる
  • 猫の日々の生活に合わせて生活環境を整えよう
  • 愛猫と一緒に過ごす時間を飼主が楽しむことが大切


猫は犬とは違って、高齢になっても環境を整えておけば基本的に自分のことは自分でできる動物なのだそうです。しかし高齢になればなるほど「できなくなること」や「しなくなること」が増えるのも事実。

今回は猫の老化の過程と、飼主に必要な心構えや対応策について、獣医師の酒井先生にお話を聞きました。

◆取材・監修:獣医師プロフィール

TOMOどうぶつ病院 酒井和紀(さかい あき)先生
東京都内の小動物病院において長年一般診療を担当、あわせてどうぶつ眼科専門病院における研修や2次診療施設での眼科診療を担当。現在は複数の病院で一般診療と眼科診療を主に担当する、柴犬と猫をこよなく愛する獣医師。

愛猫の変化や老化のサインを見過ごさないような配慮を

老化は思っている以上に早くやってきています

猫の老化に伴う症状や、猫の介護の内容、必要なサポートにはどのようなものがあるのでしょうか。

猫の介護とは?

猫にはあまり介護されているイメージがわかない……そんな風に思う人も多いのではないでしょうか。

実際に犬に比べて高齢になっても自分のことは自分でできることの多い動物なのだと先生は話します。そんな猫の介護とはどのようなものなのでしょうか。

酒井先生
酒井先生

愛猫の様子に合わせて、飼主が適切なサポートをしていく、これが猫の介護のイメージです。

高齢になってくると「今動けているから大丈夫」ではないことを覚えておきましょう。

「しなくなること」には飼主の適切なサポートが必要

高齢になると、若い頃のように毛づくろいや爪とぎをこまめにしなくなる傾向があるのだとか。

このように「しなくなること」が増えてき愛猫と過ごすには、どんなことに注意が必要なのでしょうか。

酒井先生
酒井先生

猫は本来とてもきれい好きな動物です。しかし年齢を重ねてくると、だんだん自分の体をきれいにするための行動が減ってくることがあります。

そのため、若い頃よりも頻繁に爪や被毛の状態を確認し、必要に応じて爪切りやブラッシングを行いましょう。口元やお尻まわりなど、身繕いが不十分になりがちな場所のチェックも欠かさずに行ってください。

高齢になった愛猫と快適に家で過ごすために

小さな変化を単に「年のせいだから」と見過ごさず、愛猫が過ごしやすい環境になるように生活空間を見直すことがとても大切です。では、具体的にどういったことができるのでしょうか。

家の中の環境を年齢や体調に合わせて整えていく

若い頃は家の中を縦横無尽に自由に走り回っている子も多いと思います。そんな生活も高齢になった猫には危険になることも。

酒井先生
酒井先生

高齢になると、これまで簡単にできていた上下の移動が難しくなってくることがあります。登ったけれど降りられない、ということもあるかもしれません。

猫自身が行動を制限することもありますが、これまでの生活空間を見直し、事前に落下事故につながりそうな場所には登れないような工夫をしましょう。

お留守番の際には安全な場所を作って、移動できる空間を仕切っておくのも1つの方法です。

猫は高いところに上がるもの、と当たり前のように思っていたことも、愛猫の高齢化にしたがって当たり前ではなくなるようです。

高さ以外に気を付けるポイントはありませんか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
酒井先生
酒井先生

長時間過ごす場所の環境にも注意が必要です。夏場は冷房や日光が直接当たる場所ではないか、冬場は保温も大切ですが、ヒートマットによる低温火傷にも要注意です。

トイレ同様、出入りがしやすいベッドで、安心できる環境を整えてみてください。

毎日生活するお部屋の中こそ、高齢になった愛猫のために整えてあげる必要がありそうです。

高齢になっても利用しやすいトイレ

若い頃には苦もなく越えられた高さが、加齢とともに越えられなくなるのはよくあることなのだそうです。高齢の猫にとっては今までのトイレが徐々に使いづらくなることも。

酒井先生
酒井先生

愛猫が高齢になったら、出入りのしやすいトイレを用意してあげてください。高さがなく、広めのトイレがおすすめです。

それに加えて、トイレの設置場所や数を見直し、トイレに行きたいと思ったら我慢せずすぐに排泄できる環境を整えましょう。

トイレが汚れているとトイレを我慢してしまう子も多いため、汚れた状態を放置せず、トイレは常にキレイに保つことも重要です。

食事や水の与え方にも工夫を

食べたり飲んだりすることは生きていくうえで当たり前の行動ですが、高齢になるとそんな日常の動作にも負担が生じることがあるのだとか。

愛猫の様子を見ながら、餌の内容や器などに配慮が必要だと先生は言います。

酒井先生
酒井先生

年齢や基礎疾患に合わせて食事の内容を変えることも大切ですが、与え方そのものを見直すことも大切です。

首を下げなくても食事や飲水ができるよう、器の高さや傾き、形を変えてみましょう。

また、食事を取るのに以前より時間がかかるようになるので、多頭飼いの場合には落ち着いて食事がとれる環境を整えましょう。

食事の他に、飲み水についても何か注意点はありますか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
酒井先生
酒井先生

お水は飲みたいと思ったらすぐに飲めるよう、水飲みの個数を増やしたり、常に新しいお水が飲めるようなツールを用いたり、愛猫の好みに合わせた工夫を考えてみてください。

猫の介護と認知症

寝たきりなどにはなることは少ないといわれる猫ですが、認知症によって鳴き続けたりウロウロ歩き回ったりという症状に悩まされる飼主は少なくないようです。

そんな猫の認知症についても解説してもらいました。

愛猫が認知症になったら

高齢になると、猫にも人と同じような認知症の症状が現れることが知られています。猫の認知症の症状とその対策について先生に聞きました。

酒井先生
酒井先生

一般的な症状として、夜泣き・徘徊・トイレ以外での排泄・性格の変化などがあげられます。大切なのは、これらの変化の根底に何らかの病気が隠れていないかをきちんと確認することです。

また、認知症はある日突然発症するわけではありません。

老化に伴う自然な変化と初期の認知症は区別がつきにくいことが多いため、気になる症状がある場合には早めにかかりつけの先生に相談してみてください。

最初の症状が自然な老化による変化となかなか区別ができないというのは、人の場合と同じですね。

症状を抑えたり、進行を遅らせるような方法はあるのでしょうか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
酒井先生
酒井先生

認知症には特効薬はないので、普段の生活の中で適度な刺激(おもちゃで遊ぶ、狩りごっこをする、など)を与えたり、ストレスのない環境を整え、サプリメントなどを用いることで進行を緩やかにすることを心がけてみましょう。

人を頼るという選択肢

あまり介護に手のかかることが多くはないという猫ですが、老化にともない飼主の負担が増えることも。そんな時には、人を頼るという方法があると酒井先生は話してくれました。それにはどのような方法があるのでしょうか。

酒井先生
酒井先生

まずはかかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。

健診を含めて、今の愛猫の状態を的確に判断してもらいつつ、日中のお預かりや数日単位でのお預かりが可能か、早めに確認しておくとよいでしょう。

まだ数は少ないですが、動物のデイサービスを利用したり、介護ホームを利用するという方法もあります。

人に「預ける」ということに抵抗感を持つ人もいるようですが……

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
酒井先生
酒井先生

「預けてしまうのはかわいそう」という人もいると思いますが、介護をする飼主の負担を軽くし、前向きな気持ちで愛猫の介護をすることはとても大切です。

介護は長く続くこともありますので、一人で抱え込まず、周囲の方々と一緒に楽しく愛猫との介護生活を過ごしていただけたらと思っています。

預けることが必ずしも悪いことではないので、前向きに検討してほしいですね。

愛猫との生活を楽しむこと。それが一番の介護になることを忘れずに

猫の介護について、獣医師の酒井先生に聞いてきました。

愛猫と過ごす時間を誰よりも飼主が楽しみ、毎日を笑顔で過ごすことで、愛猫も元気になれることを忘れないようにしてほしいと酒井先生は言います。

年齢とともにさまざまな変化が訪れますが、今一緒にいられる時間を楽しみ、愛猫も自分も無理なく生活できることを考え、必要ならば人の手を借りればいい。

そのための準備を少しずつ、愛猫が元気なうちから考えておくことで、安心して愛猫の老後を楽しめるはず。まだまだ関係ないと先延ばしにせず、余裕のあるうちから情報収集しておきましょう。

 

酒井先生に、愛猫がシニアになったらどんな準備が必要かを伺いました。猫を飼っている方はぜひ参考にしてみてください。

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