まとめ
  • 犬・猫の体型については環境省がまとめているBCSという指針がある
  • 体重は増えすぎても減りすぎても問題がある
  • 健康のために、ペットの体重はきちんと把握・管理する必要がある

近年「肥満の犬や猫が増えている」という話を聞いたことはありませんか?

動物の肥満は人と同じで、いろいろな病気を引き起こす原因になります。

逆に体重が減ってくる理由にはどんなものがあるのでしょうか?

今回は犬や猫の適正体重や体重管理の方法について、獣医師の森先生にお話を聞きました。

 

◆取材・監修:獣医師プロフィール

森 聖(もり さとる)

帯広畜産大学畜産学部獣医学科 を卒業し、その後修士課程を修了。
獣医師の知識を活かし、40年以上にわたり塩野義製薬ほかの企業にて、動物薬のほか医薬品・植物薬の毒性検査と安全性の管理を担当。2016年からは自身の持つ動物に関する知識を動物愛護活動に活かしたいと、動物保護活動を行う団体や、動物病院やペットショップの健康診断などを精力的に行っている。

犬種・猫種別の適正体重とは?

犬・猫それぞれの適正な体格については、環境省が出しているガイドラインがあります。

横から見た見た目と、上から見た見た目がそれぞれイラストつきで解説されているため、とてもわかりやすいので、愛犬・愛猫の体格と比較してみるといいでしょう。

犬種別の適正体重とは?

引用:環境省・飼い主のためのペットフード・ガイドライン  P16

犬種ごとにもおおよその標準体重があります。

もちろん体重には個体差があり、同じ犬種でも大きさの違う個体がいることはみなさん知っていると思います。

以下に犬種ごとの体重の目安を掲載しましたので、愛犬の体重管理の参考にしてください。

犬種 体重
アメリカン・コッカー・スパニエル 11~13kg
イングリッシュ・コッカー・スパニエル 12~15kg
ウェルシュ・コーギー・カーディガン 11~17kg
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル 5~8kg
ゴールデン・レトリバー 25~34kg
コリー 23~34kg
シー・ズー 4~8kg
シェットランド・シープドッグ 8~10kg
シベリアン・ハスキー 18~27kg
ジャーマン・シェパード・ドッグ 26~38kg
ジャック・ラッセル・テリア 5~8kg
スタンダード・プードル 23~25kg
セント・バーナード 54~91kg
ダルメシアン 22~29kg
チャウ・チャウ 18~32kg
チワワ 2~7kg
トイ・プードル 3kg
ドーベルマン・ピンシャー 30~40kg
パグ 6~9kg
パピヨン 4~6kg
ビーグル 8~14kg
ブル・テリア 20kg
ブルドッグ 23~25kg
ボーダー・コリー 18~24kg
ポメラニアン 2~3kg
マルチーズ 2~4kg
ミニチュア・ダックスフンド 4~5kg
ヨークシャー・テリア 3kg
ラブラドール・レトリバー 25~34kg
柴犬 7~10kg
秋田犬 38~42kg
土佐犬 89.5~90.5kg
日本スピッツ 7~11kg
4~5kg

猫種別の適正体重とは?

引用:環境省・飼い主のためのペットフード・ガイドライン  P16

猫も同じように猫種ごとのおおよその標準体重を掲載しました。

猫の場合は犬ほど種類ごとの体重にばらつきはないので、参考にしてください。

サイベリアンなどの大型な猫以外は、ほぼ4〜5kg前後が標準ですが、猫の場合はBCSをより参考にするといいでしょう。

猫種 メス オス
アビニシアン 3~5kg 3~4kg
アメリカン・カール 2.5~3.5kg 2.5~4.5kg
アメリカン・ショートヘアー 3~5kg 4~6kg
エキゾチック・ショートヘアー 3.1~5.5kg 4~7kg
サイベリアン 6~10kg 7~12kg
シャム 2~4kg 3~4kg
シンガプーラ 2kg~3kg 2.5~3kg
スコティッシュ・フォールド 3~5kg 3~6kg
ソマリ 2.5~4kg 3~5kg
ノルウェージャン・フォレスト・キャット 3.5~5.5kg 4.5~7kg
ヒマラヤン 3~5kg 3~5.5kg
ブリティッシュ・ショートヘアー 3~6kg 4~8kg
ペルシャ(チンチラ) 3~5kg 3~5.5kg
ベンガル 4~6kg 5~8kg
ボンベイ 3~4kg 4~5.5kg
マンチカン 2~4kg 3~5kg
ミヌエット 2~3kg 3~4kg
メイン・クーン 4~6kg 6~8kg
ラガマフィン 4.5~7kg 6.5~9kg
ラグドール 4~5kg 5~7kg
ロシアンブルー 2.5~4kg 4~5.5kg

体重が増え過ぎると起こる弊害とは

体重が増え過ぎた際の問題点について、森先生に聞きました。

森先生
森先生

一般的に犬も猫も、標準体重を15〜20%上回ると肥満と考えられます。

肥満になるとかかりやすくなる病気に以下のような病気があります。

  • 糖尿病
  • 心疾患
  • 尿結石

これらは犬・猫共通で肥満が原因でかかりやすくなり、犬の場合はこれにプラスして、関節炎などが増える傾向があります。

猫の場合は上記にプラスして、脂肪肝や椎間板ヘルニアなどが増える傾向があるため、注意が必要です。

 

肥満は内臓に負担をかけることはもちろん、足腰の骨にも負担をかけ、病気やケガを引き起こす原因にもなるそうです。

体重が少な過ぎると起こる弊害とは

逆に体重が少なすぎる際の問題点についても森先生に聞きました。

森先生
森先生

栄養が足りない、体力に余力がないなどの弊害はもちろん、体重が減ることには理由が考えられます。

  • 口内炎
  • 腎臓病
  • がん

上記は犬・猫に共通して考えられる病気です。

犬の場合は上記以外に、寄生虫の可能性も考えられるそうです。

また猫の場合は、上記以外に猫エイズウイルス感染症(FIV)や猫白血病ウイルス感染症(FeLV)なども考えられると森先生は話してくれました。

体重をきちんと管理するために必要なコト

体重を適正に管理するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。

飼主にできることについて、森先生に聞きました。

1.食事管理のポイント

引用:環境省・飼い主のためのペットフード・ガイドライン P15

環境省が、犬と猫の体重別におおよその必要カロリーを出してくれています。あくまでも目安なので、特に犬の場合は散歩などの活動量を加味して増減を決めるようにしてください。

森先生
森先生

子犬・子猫の場合は食べ過ぎよりも栄養不足に注意しましょう。

成犬・成猫になってからはフードの質に注意が必要です。「総合栄養食」と表示のあるもので、良質のタンパク質を多く含んだものを選びましょう。

特に犬のフードの場合、トウモロコシや大豆を主原料にしているフードには注意が必要です。

ダイエット用やシニア用・療法食なども、筋肉をつくるために必要な良質なタンパク質が不足する可能性があると森先生は話してくれました。

2.運動のさせ方のポイント

犬の場合は体重や犬種によって必要な運動量が変わると森先生は言います。

犬の散歩時間の目安

体重 回数・時間 備考
5kg以下 1日1回・15〜30分/1回 チワワなどの超小型犬の場合、室内を自由に動き回れる環境であれば散歩の必要のないことも
5〜10kg 1日2回・30分/1回 コーギー・ミニチュアピンシャー・テリア系などの犬種は長めの散歩が必要です
10〜25kg 1日2回・30〜45分/1回 ドッグランなども利用して、思い切り走れる環境を用意するなど、工夫をしましょう
25kg以上 1日2回・45〜60分/1回 大型犬の場合、思い切り走らせるというよりも、ゆっくり長く歩かせることを心がけましょう

猫の場合は散歩の必要はありませんが、室内である程度動けるような家具の配置やキャットタワーの設置などである程度の運動量の確保を考えましょう。

おもちゃなどで一緒に遊んであげるなどでもいいでしょう。

長毛種に比べて短毛種の猫の方が運動量が多い傾向にあるので参考にしてください。

3.おやつ管理のポイント

かわいい顔ですりすりされると、飼主としてはついついおやつをあげたくなる気持ちは痛いほどわかります。

でもちょっと待って!それを続けてしまうと、大事な愛犬・愛猫がどんどん太ってしまうことに!

太ってしまうことの弊害はすでに森先生に解説してもらいました。

森先生
森先生

おやつをあげる場合は、1日の必要カロリー量の範囲にするようにして、おやつをあげたらその分ごはんを減らすようにしましょう。

その場合も、おやつをあげすぎてごはんからの栄養が不足してしまわないように、おやつの量に注意が必要です。

4.体重測定の習慣をつける

見た目で変化がわかるほど体重が増えてしまうと、元に戻すのは大変です。それを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

森先生
森先生

できるだけ毎日体重を測定する習慣を心がけましょう。

少しの増減も毎日増え続けたり減り続けると、あっという間に取り返すのが難しい状態になります。

少し体重が増えたらエサの量を少し減らすなど、体重を把握することで、毎日の食事管理に役立ちます。

体重のある超大型犬などは難しいかもしれませんが、猫や中型犬くらいまでの大きさなら飼主が抱っこして体重を測り、飼主の体重を引くというような方法でもいいので、ペットの体重を把握するようにしましょう。

毎日の健康管理が愛犬・愛猫の寿命を延ばすカギ

大事な愛犬・愛猫の健康を守るために、体重の管理は必須だということを森先生は教えてくれました。

かわいい顔ですり寄って来られると、どうしてもおやつをあげずにはいられない……という人も多いと思います。

でもそれは結果的に愛犬・愛猫の寿命を縮めてしまうということも、理解できたのではないでしょうか?

楽しい愛犬ライフ・愛猫ライフをできるだけ長く続けるためにも、誘惑と上手につき合いながら、愛犬・愛猫をかわいがっていきましょう!

【参考資料】

愛犬のケアについて

猫の適正体重は何キロ?猫の体重と健康管理

 

森先生に、猫がかかりやすい病気についても詳しくお話を伺いました。合わせてチェックしてみてください。

【あわせて読む】

【獣医師監修】猫がかかりやすい病気|注意すべき症状や年齢別のケアも解説