まとめ
  • エミューはオーストラリアの固有種
  • エミューは前にしか進めない鳥で、飛ぶことができない
  • エミューはオスが子育てをする
  • エミューは生命力が強く、ケガの治りが早い

エミューという鳥を知っていますか?羽が退化してほとんど見た目ではわからない、飛ぶことのできない鳥、エミュー。一見、地味に見えるエミューですが、意外な一面を持つ魅力的な鳥です。

今回はそんなエミューについて、五月山動物園でエミューの飼育を担当している三輪さんに、お話を聞きました。

オーストラリアのシンボル・エミューとは

画像:PM&C「Commonwealth Coat of Arms」

オーストラリアの国章にカンガルーと一緒に描かれている鳥、これがエミューです。オーストラリアの固有種であり、ダチョウに次いで世界で2番目に大きな鳥だといわれています。

エミューは後ずさることができないため、前進あるのみ!という意図を込めてオーストラリアの国章に使われているのだそうです。

世界で2番目に大きな鳥エミューには羽がない?

エミューはヒクイドリ目ヒクイドリ科エミュー属の鳥で、体重ではヒクイドリには及びませんが、体高はエミューの方が上回っています。体高およそ2.5mのダチョウに次ぐ高さ、およそ1.9mほどの体高があります。

ダチョウ・ヒクイドリ・レアの中で最も翼が退化しており、目で見ただけではほとんど翼を確認することはできません

性格は大人しく、人にも慣れるため日本でも多くの動物園で飼育されています。

エミューって何を食べているの?

体の大きなエミューですが、普段はどんなものを食べているのでしょうか。三輪さんに聞いてみました。

三輪さん
三輪さん

雑食なので野生下では虫なども食べています。

五月山動物園ではさつまいも・人参・りんご・白菜・小松菜・キャベツと、ダチョウ・エミュー用のペレットをあげています。

虫も食べるんですね。

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
三輪さん
三輪さん

野生下では食べているようですが、五月山動物園の子たちはミミズを見せると逃げていきます(笑)

体の大きなエミューが、ミミズを怖がるというのは、ちょっとかわいいですね(笑)。

エミューはとても生命力の強い鳥

エミューは生命力の強い鳥だと聞きますが、どういったところから生命力の強さが感じられるのでしょう?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
三輪さん
三輪さん

とにかくケガの治りが速いんです。

ケガをしても翌日にはカサブタになってますし、目にキズがついたりしてもすぐ治ります。

大きな病気もほとんどないんです。

体の大きないきものなので、ケガなどすると保定するのは大変なため、元気でいてくれるのは助かります。

ただ、脚だけはケガをさせないように気をつけています。脚は命の次に大事な部分で、立てなくなってしまうと命に関わるので。

なるほど。ケガの治りが速いというのは生き抜くためにとても有益な特長ですね。

2本脚で生活するエミューにとって、脚が重要なのは納得です。

エミューの子育ての秘密

エミューの卵は深緑色の独特な色をしています。

エミューはとても特徴のある子育てをするのだと三輪さんは話してくれました。

ここでは動物としては珍しい、エミューの子育てについて紹介します。

エミューの子育てはオスの役割

エミューの赤ちゃん。2ヶ月くらいのほんのわずかな期間だけのかわいい姿です。

エミュー子育ては変わっていると聞きますが、どんな子育てをするのでしょうか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
三輪さん
三輪さん

エミューの子育てはオスがするんです。

オスの作った巣にメスが卵を産みに来て、卵を産むとどこかに行ってしまいます。

野生下では複数のメスが巣に卵を産んで行くこともあるので、大量の卵を育てるオスもいるようです。

エミューの卵は孵化するまでにおよそ2ヶ月かかるので、その間オスは飲まず食わずで卵を温めます

えっ!?

2ヶ月飲まず食わずで大丈夫なんですか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部
三輪さん
三輪さん

ヒナが孵化した後も、オスはヒナを育て続けますので、孵化までで終わりではないんです。

エミューのオスはイクメンなんですね!

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

人工哺育で育ったエミューは飼育スタッフを親だと思っている!?

五月山動物園では、エミューの人工哺育にも成功しています。

人工哺育で育ったゲンくんはちょっとほかのエミューとは違った動きをするのだそうです。

三輪さん
三輪さん

人工哺育の子(ゲンくん)は飼育スタッフをメスのエミューだと思って、求愛行動をしているようなんですよね(笑)

飼育スタッフの後をついて歩くんです。

エミューのメスには寄って行かないのに、飼育スタッフにはついて来るんですよ(笑)

それはものすごく可愛いですね。

飼育スタッフの後をついて歩く姿はぜひ見てみたいです。

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

エミューの赤ちゃんは大人と全然違う柄をしている

エミューの卵は深緑色をしているのを知っていますか?これは草原で暮らすエミューにとって、卵を隠すための保護色の意味があるのだとか。

この卵から孵ったヒナは親とは違う色をしているのだと、三輪さんが教えてくれました。

三輪さん
三輪さん

エミューのヒナの体には縦縞が入っていて、頭には斑点の模様があります。

ですがこの模様は2ヶ月くらいですぐ消えてしまいます。

とても可愛い柄なのに2ヶ月で消えてしまうのはもったいない気がしますね。

この柄にも、草原で生きるエミューを風景に溶け込ませて、敵から見つかりにくくする効果があるのだそうです。

エミューの意外な一面

エミューの飼育スタッフだから知っている、エミューの意外な生態について、三輪さんに聞いてみました。

エミューは前にしか進まない鳥

エミューは後ろに下がることのできない鳥だと聞きますが、本当に前にしか進めないのでしょうか?

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

三輪さん
三輪さん

そうですね。後ずさりをしているのは見たことがないです。

狭いところに入ってしまってもなんとか回って前に進んで出てきます。

この特性は、放飼場から寝室までの帰り道へ誘導するときにとても便利なんです(笑)

さすがオーストラリアの国章に描かれている鳥ですね。

前進あるのみ!ということがよくわかりました。

エミューには警戒心がない!?

エミューのいるオーストラリアには、大型の鳥であるエミューの天敵になるような動物がほとんどいないのだそうです。

普段のエミューはどんな風に人と接してくれるのか、三輪さんが話してくれました。

三輪さん
三輪さん

五月山動物園にはオスのエミュー3羽とメスのエミュー1羽がいます。

それぞれに個性がありますが、エミューは元々穏やかな鳥なので、こちらから何かしない限り攻撃してくるようなことはめったにありません。

臆病な鳥なので、驚かせるとパニックになって走り回ってしまうことはありますが、それ以外では大人しい鳥です。

なかでもオスのゲンくん・ハクくんはかまってちゃんですね。

エミューは光るものや普段見慣れないものを持っているとすぐつつきに来ますよ。

臆病な鳥なので警戒心が全くないわけではないですが、人には寄ってきてくれますね。

エミューはフレンドリーな鳥なんですね!

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

実はダチョウよりも賢い!?

ダチョウは物忘れがひどくてあまり頭のいい動物ではないと聞きますが、エミューはダチョウよりも賢いようです。

実際に毎日エミューに接している三輪さんから見て、エミューの賢さはどのように感じられているのでしょうか?

三輪さん
三輪さん

エミューはダチョウよりは賢いと思いますね。

放牧場から寝室まで50mほどの道のりなのですが、エミューはちゃんとその道を記憶しているようなんです。

例えばその道の途中に普段はないものが置いてあったりすると寝室に帰ってくれなかったりするので、道をちゃんと記憶していると思います。

なるほど。道がいつもと違うことが理解できるのは、エミューは記憶力がしっかりしている証拠ですね!

Tierコラム編集部
Tierコラム編集部

エミューの賢さが分かるエピソード、ありがとうございます!

エミューの見どころはココ!

意外なことの多いエミューの生態でしたが、実際にエミューを観る場合、どこに注意して観ればいいのか、三輪さんのおすすめを聞いてみました。

三輪さん
三輪さん

全部観てほしいです!

まずエミューは足の指の本数がダチョウと違います。ダチョウは2本ですが、エミューは3本あります。この恐竜のようなたくましい脚もみどころです。

オスとメスでは鳴き声が違うので、その辺も聞いてほしいですね。朝はあまり鳴かないですが、日中から夕方にかけて比較的鳴き声が聞きやすいと思います。

エミューはおとなしい鳥です。近くに寄って観ていただいて大丈夫なので、ぜひ近くで観てほしいです。ただ、鳥インフルエンザ対策をしている時期(10月から春先まで)は近くでは見られなくなっています。

ただ、大きな音にはとても敏感なので、近くで大きな声や音を出さないように注意してください。

エミューの鳴き声って想像がつきませんが、ぜひ聞いてみたいですね!

五月山動物園を訪れたら、ぜひ近くでじっくりエミューを観察してみましょう。

穏やかな性格で人懐こいエミューは高性能な鳥だった!

エミューは穏やかで人懐こい鳥だということが三輪さんのお話からよくわかりました。

またケガの治りが早かったり、知能も発達していたり、イクメンだったりと、意外な高性能ぶりもたくさん紹介してもらいました。

日本の動物園には比較的多く展示されている鳥でもありますので、エミューのいる動物園に行った際にはぜひ、じっくりとエミューを観察してみてください。

◆今回インタビューに答えてくれたのは

エミューの飼育スタッフ 三輪(みわ)さん

五月山動物園に勤務して4年目。オス3羽メス1羽のエミューの飼育を担当している。現在はエミューとワラビーを担当。以前はポニーやアルパカの飼育も担当していたそう。エミューはとても力強い鳥だと話してくれる。

五月山動物園

池田市が運営する動物園。「日本で2番目に小さい動物園」のキャッチコピー通り、敷地面積は4,500m2ながら、34歳のウォンバット・ワインがギネス世界記録に登録され、一躍有名に。動物とのふれあいなどもでき、ケヅメリクガメやエミューなどの動物が展示されている。入園料無料ということもあり、地元からも観光客にも愛されている動物園。
所在地大阪府池田市綾羽2-5-33(五月山公園内)

料金:無料

営業時間:9:15~16:45(ふれあい広場やイベントなどが雨天など天候条件により休止することもあります)
休園日:火曜日(火曜日祝日の場合はその翌日)

※詳細は公式HPをご覧ください

 

以下の記事では五月山動物園にいるウォンバットの飼育スタッフにもお話を聞きました!

五月山動物園には、ギネス記録を持つウォンバットもいるので、ぜひ合わせてみてください!

【あわせて読む】

世界最高齢のウォンバットを飼育する秘訣とは?