まとめ
  • 猫には泌尿器疾患が多い
  • 7歳を過ぎたら腎臓病に注意
  • 毎日のスキンシップで病気を早期発見できる
  • 月齢・年齢によってかかりやすい病気は変わる


猫を飼っていると「なんかいつもと違うかも?」「病気になったらどうしよう」と不安に感じる方もいるはず。

今回はそんな、猫を飼っている人や飼いたいと思ってる人が、心配に思うような「猫の病気」について、初期症状やかかりやすい病気などを紹介します。

普段の生活で気をつけられることや、つい見落としてしまいがちな初期症状について、獣医師の森先生に解説していただきました。先生の解説を日頃の猫との生活に活かして、楽しい猫ライフを満喫しましょう!

◆取材・監修:獣医師プロフィール

森 聖(もり さとる)

帯広畜産大学畜産学部獣医学科 を卒業し、その後修士課程を修了。
獣医師の知識を活かし、40年以上にわたり塩野義製薬ほかの企業にて、動物薬のほか医薬品・植物薬の毒性検査と安全性の管理を担当。2016年からは自身の持つ動物に関する知識を動物愛護活動に活かしたいと、動物保護活動を行う団体や、動物病院やペットショップの健康診断などを精力的に行っている。

毎日の生活からチェックしておきたい!猫に多い病気

愛猫にはできるだけ健康で長生きしてほしいと願うものですよね。

ここでは猫がかかりやすい病気について森先生に解説してもらいます。森先生は猫のかかりやすい病気として以下の3つの病気をあげています。

  • 歯肉口内炎
  • がん
  • 腎臓病

歯肉口内炎】口臭やよだれに注意!なかなか治らず再発も

愛猫の口臭が気になったり、よだれが増えたりしたことはありませんか?

それは、猫特有の口内炎の症状かもしれません。口の中に細菌やウイルスが感染することによって、免疫の異常を起こして口腔内の粘膜に潰瘍や炎症を起こします。

喉の奥の粘膜にも炎症を起こすため、食欲が落ちたり、よだれが増えたりという症状が。猫の6〜7%に歯肉口内炎が見られるといわれています。

森先生
森先生
悪化すると歯を抜かなければならなくなるケースもあり、あくびをすると痛がる・食欲が落ちた・よだれが増えたなどを感じたら病院を受診してください。

内科治療で改善されても、再発することの多い病気のため、最終的に抜歯に至るケースが多いようです。

がん】日頃のスキンシップで早期発見!がん

細胞分裂の過程で生まれる異常な細胞であるがん細胞は、ほとんどの場合は免疫によって排除されます。しかし排除されずに増殖してしまうと、がん細胞として大きくなっていくのです。

がん細胞には良性のものと悪性のものがあります。良性の場合は手術で取り除けば再発の心配はまずありませんが、悪性の場合腫瘍の大きくなる速度が早く、血管やリンパ管に入り込んだり、他の部位に転移することがあります。

また、がんのできる部位によっては、避妊手術や去勢手術で発症のリスクを抑えることも可能です。

森先生
森先生
進行する前の早期発見が非常に重要なため、日頃から体調管理やスキンシップなどを行ない、異常や変化に気づける習慣も大切です。

猫が普段と異なる行動や症状を示す場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。

がんは早期発見が何よりも大切な病気です。

森先生が言うように、早期発見の重要性は人間のがんと変わりません。日頃から十分なスキンシップをとり、しこりの有無・皮膚の変化・被毛の荒れ・口内出血・血尿・血便などに注意することで、早期発見を可能にしましょう。

腎臓病】7歳を過ぎたら定期的な検診を!

慢性腎臓疾患は、7歳を超えると徐々に発病率が上がり、15歳以上の高齢の猫の30%がかかるといわれる代表的な猫の病気です。

気づかないうちに進行してしまうことの多い病気のため、少しの状態の変化に気づけるように、日頃から注意をすることが大切です。

7歳を過ぎたら年に1回、10歳を超えたら半年に1回程度、定期的に尿検査や血液検査を受けるようにしましょう。

森先生
森先生
腎臓病の症状としては食欲不振・体重減少・多飲多尿などがあげられます。

腎臓が肥大するとお腹が膨らんで見えたり、腹水が溜まると太って見えたりします。食欲が落ちているのに太ったように見えたら要注意です。

病気の進行状況によって症状は変わるので、愛猫が7歳を超えたら定期的な検診を受けましょう。

性別や猫種によって変わる、猫がかかりやすい病気

猫種や性別によって、違った病気にかかりやすいケースもあります。

ここでは雌雄や猫種によってかかりやすさの違う病気について森先生に説明してもらいました。

  • 泌尿器疾患
  • 肥大型心筋症
  • 軟骨や骨の形成異常(骨瘤)

【泌尿器疾患】オス猫や避妊手術後のメスは要注意!

猫はシュウ酸カルシウム結晶という、尿石の元ができやすいのだと森先生は話してくれました。特にオスや避妊手術後のメス、高齢猫はリスクが比較的高いのだそうです。

泌尿器疾患には尿路感染症・尿石症・突発性膀胱炎などがあり、猫の病気としては最もよく知られています。

森先生
森先生
特にオスの場合は尿道に結石が詰まりやすく、排尿がうまくできなくなることも。治療が遅れると尿毒症を発症して死に至ることもあります。失禁やトイレ以外の場所でのおしっこなどの症状が現れたら、まず病院に相談しましょう。
再発も多い病気なので、食事に気をつけ、尿検査などを定期的に受けることをおすすめします。

食べ物によっても予防が可能なのだそうです。心配な場合は病院で食事について聞いてみるとよいでしょう。

【肥大型心筋症】中高齢のオスは特に気をつけたい

心筋症は猫の心臓に起きる病気の中で、最も多い病気です。心筋症は心臓の筋肉に異常が起き、心臓の働きが悪くなる病気です。

心臓の筋肉が分厚くなる肥大型の他に、筋肉が薄くなる拡張型・筋肉が固くなる拘束型などがあります。

森先生
森先生
特に肥大型心筋症は、猫に比較的よく見られる疾患で、中高齢以降のオスによく発症します。

呼吸の異常や咳といった症状や、健康診断での心雑音などから病気が見つかることがあります。

森先生の解説によると、オス猫を飼っている場合は中高齢以降には注意が必要なのだそうです。

この病気も初期は症状がなく、進行すると疲れやすさなどが出てきますが、気づかれないケースが多いそうです。重症化すると死に至ることもある病気。

少し元気がなくなったなと思ったら、病院に相談することをおすすめします。

軟骨や骨の形成異常(骨瘤)】手足の短い種類の猫は特に注意

関節の腫れなど、手足の短い猫に起こりがちな疾患が軟骨や骨の形成異常(骨瘤)です。症状としては手足の腫れ、かかとが腫れるケースが多いです。

軽症の場合は無症状のことが多いですが、関節の触診で固さがみられたり、可動域が悪くなっている場合があります。

重症化すると炎症が起き、足を引きずる・高いところに登らなくなるなどの症状が出てきます。

森先生
森先生
なかでも、マンチカンのような手足の短い品種は、遺伝的に関節疾患になりやすいと言われています。

品種によっては関節疾患を防止するために、検査の際には手足ではなく、首の血管から採血することもあります。

マンチカンやスコティッシュ・フォールドなどの手足の短い種類の猫を飼う場合には、関節の可動域などには日常的に注意したほうがいいでしょう。

病気に早く気づくために、気をつけたい症状やサイン

もしも病気にかかってしまったとしても、できるだけ早く病気に気づいてあげたいものですよね。

日頃の生活で気づける病気のサインにはどんなものがあるのか、森先生に聞いてみました。

  • 糞便・尿
  • 食欲
  • 被毛
  • 歯茎の色
  • 呼吸
  • 体重

この7つのポイントには日頃から注意をしてほしいと先生は話します。

森先生
森先生
定期的な健康診断で、体重の増減や糞・尿を調べたり、毎日の食事の様子や被毛の確認など、普段の生活の中には症状に気づけるヒントが隠れていることが多いです。

上記の6つ以外に眠る時の姿勢や場所などが普段と違っていないか、などの行動パターンや歩行異常の有無にも病気のサインは隠れています。

糞便・尿の異常

形・状態・色・量・回数・匂い・寄生虫や結晶の有無などが判断の基準になります。

  • 便や尿に血液が混じっていないか
  • 色は黒っぽくないか
  • 回数は多過ぎないか
  • 腐敗臭はしないか
  • 便の場合は寄生虫
  • 尿の場合は結晶が混じっていないか など

このようなチェックポイントがあると森先生は話してくれました。

食欲

量・回数は減っていないか、増えていないかなど、食欲の減退にはいろいろな病気が隠れています。

口内炎やがんの症状としても見られる症状のため「たかが食欲がないくらい」と軽く考えず、数日続く場合は病院に相談しましょう。

被毛

毛並みの荒れ、フケの有無や増加、のチェックすることで皮膚の乾燥や栄養状態を知ることができます。肛門周辺の汚れからは下痢の状態などがわかるそうです。

また毛並みの悪さや、皮膚をつまんだあと、すぐ戻らないようであれば、脱水あるいは水腫状態であると判断できるそうです。

歯茎の色

歯茎の色が白っぽい場合、貧血の可能性があるのだそうです。合わせて普段よりも動きが悪かったり、寝てばかりいるなどの症状があれば、何か病気が隠れている可能性もあります。

口内炎のチェックも兼ねて、日頃から口の中をチェックする習慣をつけましょう。

呼吸

口を開けて呼吸している場合、熱中症の疑いがあるそうです。犬と違い、猫が口を開けて呼吸している場合は苦しい思いをしていると考えましょう。

他にも呼吸の速さや「ゼーゼー」など喘鳴(ぜんめい)の有無、数回続くくしゃみなど、呼吸のチェックポイントは多数あります。

体重

体重の増減は健康状態を知るバロメータです。週に1回程度の体重測定が望ましいそうです。特に離乳前の仔猫は毎日測定したい時期だといえます。

太り過ぎも病気のもとになりますし、減少する体重には病気が隠れているケースが多いため、体重のチェックはできるだけするようにしましょう。

月齢・年齢別の気をつけたい猫の病気

猫の月齢や年齢によってかかりやすい病気は変わります。

ここでは月齢・年齢別の猫のかかりやすい病気について、森先生が解説します。

【子猫期】まだ免疫が安定しない・6ヶ月未満

  • 風邪
  • 下痢
  • 寄生虫
  • ウイルス感染3種

重症になりやすいウイルス感染には、猫免疫不全ウイルス(FIV)・猫白血病ウイルス(FeLV)猫伝染性腹膜炎(FIP)の3種類があげられます。これらのウイルスはコアワクチンで予防できません

コアワクチンでは、猫汎白血球減少症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症の3種類の病気を予防でき、これは3種混合ワクチンとも呼ばれます

森先生
森先生
子猫の場合には日光浴で紫外線を浴び、ビタミンDを活性化させ、骨形成の促進を。

また16時間以上よく眠れる環境を与え、ストレスの増加は生体免疫力を低下させるため、できるだけストレスの少ない生活を心がけましょう。

子猫の寝る場所の高さが25℃以下の室温は、免疫力低下を招き、下痢やかぜ症状を誘発させる可能性が高まります。

【青少年期】だんだん体ができてくる・6ヶ月~2歳

  • 風邪
  • 寄生虫
  • ウイルス感染3種(6ヶ月未満と同様)

必要なワクチンをきちんと受けることを徹底し、便に寄生虫がいないかも気をつけておきましょう。

【成猫期】精力的に活動する・3歳~6歳

  • 風邪
  • 排尿障害
  • 口内炎

尿石に注意が必要な時期です。口内炎も増えてくるので、普段の食事中の様子などもチェックしましょう。

【中年期】そろそろシニア期のための準備が必要・7歳~10歳

  • 腎臓病
  • 甲状腺機能亢進症
  • 口内炎

腎臓病の発症率の上がってくる年齢のため、定期的な健康診断を受けるようにしましょう。

【高齢期・シニア期】日々体調に注意したい・11歳以上

  • がん
  • 腎臓病
  • 認知症

だんだん介護の必要性も考える時期です。毎日の体調チェックを心がけましょう。

愛猫との楽しい生活は毎日の観察から

今回は獣医師の森先生に、猫がかかりやすい病気を解説してもらいました。

どんな病気の場合も、早期発見には猫を毎日しっかり観察することが大切です。

毎日の観察・食欲・飲水量・尿と便の状態・眼の状態・歩行・寝る場所・触診などに異常があるかどうかを、同じ時間帯で行うことが大切だと森先生は話してくれました。

できれば、日誌に記録する習慣があると、病気の早期発見につながることもあるのだとか。

異常な排便や排尿・流延・流涙を見つけたら、動画撮影で記録しましょう。これは動物病院での問診の際、客観的な所見となり、診察の参考になるのだそうです。

日々の生活の中で愛猫とスキンシップをとりながら、体調や様子を観察することが、結果的に愛猫を病気から守ってくれます。

ぜひこの記事を、愛猫ライフの参考にしてください。

 

猫の「吐く」については別の記事で詳しく紹介しています。

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