まとめ
  • 思っている以上に早くシニア期はやってくる!
  • 猫は痛みや不調を隠すことが上手
  • 元気に見えても定期的な健康診断を

猫は犬に比べると長生きでシニア期はずっと先、と思っている人も多いのではないでしょうか。見た目や行動が変わらなくても、実際には体の中で徐々に加齢は進んでいます

今回はそんな猫のシニア期について、注意点や日常生活の中で変えていくべきポイントを獣医師の酒井先生に解説してもらいました。

◆今回インタビューに答えてくれたのは

獣医師:酒井和紀(さかい あき)先生

TOMOどうぶつ病院 (ともどうぶつびょういん)

東京都内の小動物病院において長年一般診療を担当、あわせてどうぶつ眼科専門病院における研修や2次診療施設での眼科診療を担当。現在は複数の病院で一般診療と眼科診療を主に担当する、柴犬と猫をこよなく愛する獣医師。

猫は7歳を過ぎたらシニア期

猫の場合、おおむね7歳を過ぎたらシニア期の入り口と考え、食事・生活環境・健康診断の頻度を見直す時期という考え方が一般的になってきました。

まだまだ若いと思っていても、体にはさまざまな老化のサインが表れてくると酒井先生は言います。

7歳を過ぎたら、シニア期の過ごし方に

7歳を過ぎたからといって、何かが急に変わるわけではもちろんありません。

ではどんなことに気をつければいいのでしょうか?

酒井先生
酒井先生

これからやってくるシニア期に向けて、少しずつ準備を始めましょう。

若い頃のようにおもちゃで活発に遊ぶことが少なくなり寝ている時間が長くなるシニア期

「大人になった」だけでなく、体にはさまざまな変化が生じ始める時期です。ちょっとした変化の中に不調や病気のサインが隠れていることもあります。

変化が少しずつやってくるシニア期の兆候

なかなか体調の悪さを教えてくれない猫ですが、普段の生活の中で変化が現れやすいポイントがいくつかあるようです。

酒井先生
酒井先生

飼主が気づきやすいポイントとしては

      • 口・耳・目など顔の汚れや臭いのチェック
      • 毛玉ができていたり、被毛に汚れはないか
      • 爪は伸びていないか
      • 食事の量に増減はないか
      • 体重の増減(特に減少)

などがあります。

ぜひ毎日のスキンシップの中で確認してみてください。

猫の場合被毛に毛玉ができるほどになると、かなり体調が悪いことが多いため、以前よりグルーミングの頻度が減ってきていたら注意が必要です。

また爪研ぎをあまりしなくなった・食事の量は増えたのに体重は増えていない(減っている)など、毎日のコミュニケーションから気づけることを増やしましょう。

シニア期になると余裕が無くなってくるので、猫自身が自分に構う時間が減ってきます

爪切りやブラッシングなどは、若い時から飼主がやってあげる癖をつけておくとシニア期に急に慌てることが少なくなるでしょう。

7歳を過ぎたら検査を組合せて多角的に健康チェックを

酒井先生
酒井先生

猫は腎臓の病気にかかりやすい動物です。

中でも慢性腎臓病は、10歳以上で30~40%、15歳以上では80%を超える罹患率とも報告されています。

参考文献:ISFM consensus guideline. JFMS (2016) 18: 219–239

慢性腎臓病は、血液検査だけでは正しい診断はできず、見逃されることも多くあります。若い頃はもちろん、シニア期に入ったら定期的に、かつ尿検査や超音波検査など複数の検査を組合せて行うことがとても大切です。

愛猫の体重のチェックは欠かさずに

猫は犬に比べて体重の増減の少ない動物だと酒井先生は言います。体重に変化があったら、そこには何かが隠れている可能性も。

酒井先生
酒井先生

猫は体重の変化の少ない動物です。そんな猫の体重に変化があったら、何か理由があると考えた方がいいでしょう。

もちろん体重が変化していないから健康といえるわけではないので、一般的な健康診断も必要です。

他の部分もちゃんと見てあげる必要はありますが、体重の変化は自宅でも手軽に確認できるので、日頃から体重のチェックはこまめに行っておくといいでしょう。

もし体重に変動があったら、かかりつけの獣医師に相談してみてください。

シニア期の猫のお手入れは?

シニア期になると少しずつ今までできたこと、習慣にしていたことができなくなることがあります。その変化のペースは猫によって異なりますが、そんな時には飼主の手を少し貸してあげましょう。

ブラッシングや爪切りは若いうちから自宅でできるようにしよう

シニア期になってから急にブラッシングをしようとしても、なかなかさせてくれない子も多いでしょう。若いうちからある程度自宅でできるようにしておくといいようです。

酒井先生
酒井先生

猫は元来とてもきれい好きな動物です。前述しましたが、これまでにはなかった毛玉や被毛の汚れ、特に口や耳、眼の汚れや臭いには注意が必要です。

被毛の汚れや毛玉に気づいたら、早めに病院を受診することをおすすめします。

こういった変化に早く気がつくためにも、若いころから自宅でブラッシングや爪切りなど簡単なグルーミングやスキンシップが取れるようにしておくことは非常に大切ですね。

嫌な思いをさせない病院通いの習慣をつけよう

猫は病院(外出や知らない環境)が苦手なことが事が多く、飼主も気軽に病院に連れていくことは少ないのではないでしょうか。

そうなるのを防ぐためには、元気な時の習慣が大切だと酒井先生はいいます。

酒井先生
酒井先生

「病院=イヤな場所」こんなイメージを愛猫に持たせないことが大切です。

注射や検査といった猫が嫌いなシチュエーションだけでなく、難しいとは思いますが、病院にもっと気軽に遊びに来て欲しいと獣医師も思っています。

犬や他の猫のいない時間帯など、病院を訪れるタイミングをかかりつけの獣医師と相談してみたり、キャットフレンドリー認定のクリニックを利用してみるのも1つの方法かもしれません。

猫は体調の悪さを隠そうとする動物

猫は犬以上に体調の悪さを見せないようにするのだそうです。そのため、飼主が変化に気づいた時には、すでに手遅れということも少なくありません。

愛猫の変化により早く気づき、対応するためにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。

猫は痛みや不調に気づくためには

猫は元気に見えても実は不調を隠していることが多いのだとか。

そんな猫の隠している痛みや不調には、どうやって気づけばいいのでしょうか。

酒井先生
酒井先生

猫は痛みを感じていてもそれを表に出すことが非常に少ない動物です。

単に年をとったせいと思っていた行動の変化が、実は痛みのせいだったということもよくあります。

日頃のチェックに加えて、猫の表情で痛みの程度を測定するアプリや、首輪で活動量を測定することで異常を飼主に伝えてくれるアプリもあります。

最近では猫の痛みを検出するAIを用いてより早く猫の不調を見つけることができるようになってきました。そういったツールを上手に活用するのも良いかもしれませんね。

シニア期には関節炎を患う猫が増えるそうです。そんな時にもAIは強い味方になってくれそうですね。

転ばぬ先の杖としてサプリを利用する

体調が悪くなってしまう前に、飼主が手を打てる1つの方法としてサプリメントの利用があると酒井先生は話します。

酒井先生
酒井先生

定期的な健康診断や自宅での工夫のほかにも、サプリメントを上手に使用することでシニア期の猫の健康をサポートすることができるかもしれません。

昔と違って、サプリメントとはいっても、エビデンスレベルの高いサプリメントや、動物病院で獣医師が処方するサプリメントなどその質は高まっています。

不調が出る前に、目に見えないところで進んでしまう病気の種を抑えるという意味でサプリメントを利用するのもいいでしょう。

元気に見えるうちから安心して続けやすいサプリメントを、定期的に給餌していくのも1つの方法だと思います。

多頭飼育の場合の注意点

猫を飼っている人の中には、多頭飼育をしている人も多いでしょう。複数の猫を一緒に飼っているからこその注意点について、酒井先生に聞きました。

酒井先生
酒井先生

多頭飼育をしている場合、パワーバランスの変化からこれまでの関係性が崩れることでシニア期の猫にストレスがかかることがあります。

こういった変化はある程度仕方のないことですが、シニア期になると、環境の変化に適応するのに時間がかかったり、適応しきれずに体調を崩すということが増えるため注意が必要です。

先住のシニア猫に負担をかけないように、ずっと同じ部屋で生活させるのではなく、ケージをうまく利用したり、一人で安心して過ごせる環境を整えるように工夫をしてあげましょう。

愛猫の変化を前向きにとらえて、楽しく毎日を過ごそう

シニア期の猫とのつきあい方について、獣医師の酒井先生にお話を聞いてきました。

加齢は生理現象ととらえて、毎日の生活の中で変化の兆しに気づける準備が大切なのだということを教えてもらいました。

日頃から体調の悪さを教えてくれない猫だからこそ、飼主が変化を感じ取れる毎日のコミュニケーションが大切です。

少しでも長く、健康で楽しい毎日を一緒に過ごすために、愛猫と過ごす毎日の生活の中で、この記事の内容を参考にしてください。

 

以下の記事では、愛犬がシニアになったらどうするか、必要な準備と心構えなどをまとめています。犬を飼育している人はぜひ参考にしてください。

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