まとめ
  • ラッコは絶滅危惧種に選定されており、世界的に保護活動が行なわれている
  • 日本の水族館のラッコは3頭のみ。見られる水族館は2施設のみ
  • ラッコが個体数を減らした原因はおもに人間
  • ラッコが海に浮いていられるのは、空気を含んだ体毛に覆われているから

水族館の人気者といえば、どんな動物を想像しますか?イルカやペンギン、アシカなどさまざまな生き物が思い浮かびますよね。

なかでも、子どもから大人にまで愛される動物といえばラッコです。しかし、実はラッコが絶滅危惧種に選定されていることは知っていますか?

今回は、絶滅の危機に瀕しているラッコの生態や、ラッコに会える数少ない日本の水族館を紹介します。絶滅が危ぶまれている背景について学びつつ、動物と人間の共存について考えていきましょう。

ラッコって日本のレッドリストに載ってるって本当?

絶滅のおそれがある生き物をまとめたレッドリストでは、程度に応じて生き物を9つのカテゴリーに分けています。この中でも、ラッコは上から4番目の「絶滅危惧ⅠA類(CR)」に選定されています。

絶滅危惧ⅠA類(CR)とは、ごく近い将来における野生で絶滅の危険性が極めて高い生き物です。レッドリストの最上位はすでに絶滅した生き物が該当するため、現存する生き物の中でラッコは「将来的に絶滅の可能性が非常に高い」といっても過言ではないのです。

石で貝を割る姿が愛らしいラッコってどんな動物?

ラッコは、食肉目イタチ科ラッコ属に分類される哺乳類です。生息域や個体数の減少を受け、世界的に保護対象となっている生き物の一種です。現在はワシントン条約で取引が制限されています。

ラッコはロシア東部や北太平洋沿岸などの寒い地域で生息していますが、約8億本もの体毛に覆われているため、冷たい海でも体温を保てます。またラッコが海にプカプカと浮ける理由は、豊富な体毛に空気が含まれているためです。

ラッコは無脊椎動物や魚介類を多く食べる動物です。なかでも硬い貝殻を持つ貝類などは、石を使い、殻を割って食べる習性があります。このときに使われる石は、見つけた獲物に応じて必要な時に拾ってきて使います。

日常的に道具を使う生き物は、霊長類以外の哺乳類では非常に珍しく、ラッコには高い知能があるといわれています。

ラッコはどんなものを食べているの?

ウニや貝類などはラッコの餌としてよく知られていますがそれらの他には、カニのような甲殻類や時には泳ぎの遅い魚などを食べて生活しています。

甲殻類や魚を食べる際には石は使わず、カニも殻ごとバリバリと食べます

なかには、海面で海鳥を捕殺することもあるそうですが、海鳥を食べるという報告はないようです。水族館の可愛らしいラッコだけを見ていると、なかなか想像できないですよね。

ラッコは体温を維持するために、ウニや貝類などを大量に食べます。そのため地域によっては漁業者から害獣扱いされてしまうことも。

しかしラッコたちが海藻を食べるウニや巻貝などを食べて数を調整することで、藻場が健全に保たれ、海を豊かにするともいわれています。そのことからラッコは地域にとって重要な役割を担う「キーストーン種」とされています。

ラッコが絶滅危惧種といわれている理由とは?

ラッコが絶滅危惧種になった原因は諸説あるようです。ラッコの毛は世界で最も密度が高いといわれており、肌触りもよく、防寒性にも優れていて良質なため、18世紀以降毛皮を目的とした乱獲でどんどん数を減らしました。

1911年の国際条約により捕獲が禁止になると、生息数は回復してきましたが、1989年にアラスカ沖で発生したエクソンバルディーズ号原油流出事故(原油タンカーが座礁により積荷の原油を流出させた事故)により、ラッコを含む多くの海洋生物が命を落としたといわれています。

その後もラッコの生存を脅かすさまざまな問題が増加してきたことなどから、2000年に国際自然保護団体(IUCN)によって絶滅危惧種にも選定されました。

現在は保護活動が功を奏し、個体数はやや回復傾向にあるものの、いまだに予断を許さない状況が続いています。

日本にある水族館で、ラッコに会える水族館は2館だけ!

日本の野生のラッコは、北海道の東部でわずかに観測できるのみとなっています。水族館のラッコはピーク時には122頭飼育されていましたが、アメリカの海洋哺乳類保護法で野生のラッコの捕獲ができなくなり、輸入が途絶えたことに加え、少しずつ飼育下での繁殖頭数が減少し、現在では3頭となりました。

国内でラッコを観察できる水族館は、三重県の『鳥羽(とば)水族館』と福岡県の『マリンワールド海の中道』の2館です。鳥羽水族館には2頭、マリンワールド海の中道には1頭のラッコが展示されています。

日本の水族館にラッコは現在3頭しかいない

「日本に残っている3頭のラッコで繁殖はできないの?」と考える人もいるかもしれませんが、現実問題として非常に困難です。

まず鳥羽水族館には、2頭の雌のラッコが展示されています。1頭は現在19歳の高齢なラッコであるため、繁殖は不可能です。

さらにもう1頭の雌は、国内唯一の雄のラッコと兄弟です。近親交配になってしまうため、この場合も繁殖は不可になります。

水族館でのラッコの展示は近い将来途絶えてしまうかもしれません。しかし現在、日本では北海道で野生のラッコの生息が確認されています。

野生下での繁殖に期待しつつ、見守っているというのが現状です。

乱獲によって姿を消したラッコたちがもとの生息地に戻ってきたことはとても喜ばしいこと。ラッコの種としてのこれからの繁栄に期待しましょう。

鳥羽水族館【鳥羽市】

鳥羽水族館には、雌のラッコ「メイ」と「キラ」を展示しています。さらに、ラッコ同様に絶滅危惧種に選定されているジュゴンも飼育している珍しい水族館です。

ジュゴンを見られる水族館は、鳥羽水族館を合わせて世界でたった2施設のみ。鳥羽水族館を訪れることで、楽しみながら動物との共存について考えられる、貴重な時間を過ごせるでしょう。

世界初の水上透明チューブからアシカ・アザラシの仲間たちを観察できたり、ジャングルや珊瑚礁の生き物に出会えたりするエリアも。公式サイトでは各エリアの様子を360°カメラで観察できるため、来園前にぜひチェックしてみてください。

所在地 三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
アクセス JR/近鉄「鳥羽駅」より徒歩約10分
ラッコの頭数 2頭
料金 ・大人:2,800円

・小中学生:1,600円

・3歳以上:800円

営業時間 9:00~17:00

※7月20日~8月31日の夏期は8:30~17:30

駐車場情報 普通車500台

マリンワールド海の中道【福岡市】

マリンワールド海の中道には、雄のラッコ「リロ」を展示しています。国内外の海の生物はもちろん、九州の近海・川・外洋・深海など、所在地に応じた生き物の展示も特徴的です。

特に、九州南部の温暖な海を再現した大水槽は必見です。上層・中層・低層と、それぞれの生き物が自然界で生き残るためのライフスタイルを観察できます。

癒しのクラゲエリアや人気のイルカショー・アシカショーなど、バラエティー豊かな展示を楽しめます。来園の際は、ペンギンやイルカのエサやり体験にもぜひ参加してみましょう。

所在地 福岡市東区大字西戸崎18-28
アクセス JR「海ノ中道駅」より徒歩約5分
ラッコの頭数 1頭
料金 ・大人:2,500円

・小中学生:1,200円

・3歳以上:700円

営業時間 9:30~17:30

※時期によって変動あり。要確認

駐車場情報 普通車622台

ラッコが水族館からいなくなる…その未来はすぐ目の前かも

今回は、絶滅危惧種に選定されているラッコの現状や、ラッコが見られる水族館について紹介しました。

ラッコの個体数減少には、人間が関与しています。動物と人間が共存し続けていくためには、エネルギーや資源についての思考や技術をアップデートし続ける必要があります。

壮大な話に聞こえるかもしれませんが、一人ひとりの行動によって救われる命もあるのです。ぜひこの機会に、動物を取り巻く環境や自分にできることを考えてみましょう。

 

以下の記事では、日本の絶滅危惧種ついてまとめています。

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