まとめ
  • 猫や人の安全・安心を守るためには爪切りが必要
  • 一度に全部切れなくてもOK
  • 猫の爪切りは3週間~1ヶ月に1回程度
  • 「爪切り=怖くない」と覚えてもらうことが大切


ペットは「可愛い!」という気持ちだけでは飼育できません。ごはんや排泄のお世話はもちろん、お散歩やトリミング、お風呂、お掃除などさまざまなケアが必要になります。

中でも、飼主にとって悩みの種になりやすいお世話が「爪切り」です。特に猫の爪切りは、犬と比べて嫌がってしまう子が多いものです。

今回は、猫の爪切りの必要性やポイント、注意点などを紹介します。猫は自分で爪とぎができる生き物ですが、飼主が介入する必要はあるのでしょうか?猫の爪切りについて学び、より安心・安全な猫ライフを送ってください!

猫に爪切りは必要?

猫はもともと単独で狩りをしながら生活する生き物です。猫にとっての爪は犬の牙と同様に大切な攻撃手段であり、鋭く尖った爪で獲物を狩り捕食します。また猫の種類や生活スタイルによっては、木に昇ったり壁をよじ登ったりするためにも尖った爪が必要です。

しかしペットとして飼育されている猫は、獲物を狩らなくてもごはんを食べられます。高い場所に登る習性はありますが、爪が尖ったままだと家具や壁を無駄に傷つけてしまいます。またカーテンや布などに爪が引っかかり、根本から剥がれてしまう可能性もあるでしょう。

思わぬ事故やトラブルを防ぐために必要な手段が、爪切りです。爪の先端を滑らかにすることで家具や人を傷つけにくくなり、猫自身の安全も守ります。

家庭猫は野生の猫とは異なり、爪が鋭利である必要性はほぼありません。猫や家族がより安全に過ごすためにぜひ爪切りをしてあげましょう。

爪とぎと爪切りの違いは?

「猫は爪とぎをするから爪切りはいらないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実は爪とぎと爪切りの役割はまったく異なります。

まず猫の爪は、玉ねぎのように薄い層が重なり合って構成されています。内側はツルツルで割れにくい新しい爪で、外側になるほどパサパサで割れやすい古い爪になることが特徴です。

猫が爪とぎで削ぎ落すのは、外側の古い爪です。強度が低い爪を払うことで、新しく使い心地がよい爪の状態をキープしようとします。そのため、爪とぎをしても先端は尖ったままになります。

対して爪切りは、爪の長さを短くしたり先端を平にしたりするケアです。猫にとって安全な部分まで爪を切ることで、爪とぎだけでは守りきれない安全面のケアが可能になります。

猫の爪切りの頻度とタイミング

猫の爪の伸びる早さは年齢によってやや異なります。一般的な成猫の場合は、3週間~1ヶ月に1回程度の爪切りが適切といわれています。子猫の爪は伸びるスピードが早いため、2週間に1回程度のペースでも構いません。

また普段からあまり爪とぎをしない子やシニア猫の場合は、本来落とすべき古い爪が残りがちです。古い爪は割れやすく事故やけがの原因になるため、こまめにチェックしつつ早めに切ってあげましょう。

切るタイミングに迷った場合は上記の期間を参考にしつつ、猫の爪を触って「尖っているな」と感じたときが目安になります。子猫の頃から爪切りに慣れさせると、成猫になったときのケアが楽になるでしょう。

猫の爪切りを成功させる3つのポイント

ここでは、猫の爪切りを成功させるためのポイントを3つ紹介します。

猫にとって爪は本能的にとても大切な体のパーツであるため、爪や足先を触られた際には抵抗感を抱くことが一般的です。猫自身がいかにストレスを感じずに爪を切れるかを優先しつつ、人間のほうから感覚を合わせてあげましょう。

1.猫が活発に動く時間は避ける

猫の爪を切る際は、猫が活発に動く時間は避けることをおすすめします。猫は夜行性というイメージがあるかと思いますが、正しくは明薄暮性動物(はくめいはくぼせいどうぶつ)です。

薄明薄暮性動物が活発な時間帯は、真夜中よりも明け方と夕方になります。とはいえ人間と一緒に暮らしている猫の生活リズムは野生の猫とは異なる可能性があるため、愛猫の様子を観察しつつ大人しい時間帯に爪切りをするとよいでしょう。

2.1回で全部の爪を切ろうとしない

猫にとって、人間に拘束されながら無理やり手を捕まれる行為はストレスです。思わず逃げたくなったり動きたくなるのは自然なことです。猫が爪切りにネガティブなイメージを抱いてしまうと、次回以降の爪切りがさらに困難になってしまうでしょう。

1回のタイミングで全部の爪を切ろうとするのではなく、猫の機嫌を損ねない頻度で少しずつ切っていくことをおすすめします。猫は前足よりも後足のほうが敏感な傾向にあるため、まずは後足から少しずつ切ってみてくださいね。

猫の爪切りでは「無理をしない」が大切です。もしも猫が逃げてしまったら潔く諦めて、また別の日にチャレンジしてみましょう。

特に初めての爪切りは、猫も飼主もプレッシャーを感じるものです。お互いにリラックスできるタイミングを探しながら、徐々に一度に切れる本数を増やしていきましょう。

3.普段から脚をさわられることに慣れさせておく

猫の爪切りを成功させるためには、普段からスキンシップを行うことが大切です。日頃あまりふれあうことのない人に突然拘束されるのは、人間でも不安や怖さを感じますよね。

特に爪切りで長時間さわることになる前足・後足は、普段のスキンシップでもふれることで、日頃の生活の中で慣れさせておきましょう。特に後足は触られることを嫌がる子が多いため、日常的にタッチしておくことをおすすめします。

最初は、頭や体を撫でるのと同じように、足に軽くふれてあげる程度でも構いません。また猫にとって初めて目にする爪切りには恐怖を抱くものです。普段から机や棚の上など猫の目に入る場所に置き、存在を認知させましょう。

猫の爪を切るときの5ステップ

ここでは、猫の爪を切るときの具体的なステップを紹介します。初めての愛猫の爪切りは誰でも緊張するものです。しかし緊張感は意外と猫にも伝わっています。お互いにリラックスした状態で行えるように、ステップを覚えて予習しておきましょう。

ステップ1.おやつと爪切りを準備する

まずはおやつと爪切りを準備します。爪切りや爪切りの練習では、できるだけこまめにおやつを与えることが大切です。長持ちするおやつを与え、猫がおやつに気を取られているうちに切ってしまうのもよいでしょう。

猫用の爪切りには、キレがよく短時間で切りやすい「ギロチン型」と初心者向けの「ハサミ型」があります。初めて行う際は、安全度の高いハサミ型から始めるとよいでしょう。

ハサミ型の爪切りを使うコツは、輪の中に親指と薬指を浅く入れることです。目安はそれぞれの指の第一関節までです。この持ち方に慣れると、爪を正確に素早く切ることが可能です。あらかじめハサミを正しい指で浅く持つ練習をしておくことをおすすめします。

ステップ2.肉球を押して爪を出す

猫の爪は見えている部分だけではありません。猫の爪先の肉球を優しく押してあげると、ヌルリと爪の全体像が出てきます。長毛猫の場合は被毛で爪が隠れやすいため、事前に足先部分をカットするかペット用シートで少し湿らせてあげると、爪の全体を把握しやすくなるでしょう。

ステップ3.「クイック」を確認する

猫の爪をよく見ると、白くて透明な部分の中に薄い赤色の部分が確認できると思います。赤い部分は「クイック」と呼ばれ、神経や血管が通っています。この部分まで切ると出血や痛みを伴うため、絶対に切ってはいけません

ステップ4.「クイック」の2ミリ先の爪を切る

神経や血管は「クイック」の中ちょうどに納まっているわけではなく、2ミリ程度伸びていることがあります。爪切りのベストな長さは、赤い血管の部分の2ミリ先です。慣れないうちはもう少し先端よりでも構いません。半透明な部分は切っても痛みは生じないため安心してくださいね。

ステップ5.こまめにおやつをあげる

はじめのうちは爪切りができなくても、足先を触らせてくれただけ、爪を出させてくれただけでもおやつを与えます。

猫にとって「爪切りする=嬉しいことが起こる」と学習してもらえれば、次回の爪切りもスムーズになります。本人にとって利益があると思ってもらえるプロセスが重要です。

猫の爪切りで注意したい2つのこと

ここでは、猫の爪切りで注意したいポイントを2つ紹介します。どんなに安心してもらおうと頑張っても、猫の性格によっては全身で拒否をされてしまうことがあるでしょう。切らせてもらえないからと放置せず、猫にとってベストな方法を探すことが大切です。

1.爪を切ろうとすると、嫌がって暴れるときはどうしたらいい?

爪切りを嫌がってしまう子に対しては、無理に行う必要はありません。猫が嫌がっているのを無視して爪切りを行うと、けがのリスクが上がるだけではなく飼主との関係性も悪化してしまいます。

猫の機嫌が良いときやリラックスしている時間帯を狙いつつ「まずは一本」を目標に距離を近づけていきましょう。眠そうなときや食後のリラックスタイムなどがおすすめです。

猫は、何かに包まれたり、視界が少し暗くなると安心します。暴れるときは、バスタオルで体を覆ったり、洗濯ネットに入れて落ち着くのを待つのも良いでしょう。洗濯ネットの場合、網目ごしにそのまま爪を切ることも可能です。

またトリミングサロンや動物病院によっては、爪切りのみの来店・来院が可能なケースもあるため、最寄りのサロンや病院を調べてみましょう。

2.血が出たときの対処法は?

血管まで切ってしまった場合には、指先からの出血が見られます。清潔なコットンで5分程度圧迫しながら、猫の様子を観察してください。もしも5分経っても出血が治まらないときは、自己判断せず動物病院に相談しましょう。

愛猫の安全を守るために…少しずつ爪切りに慣れてもらおう!

今回は、猫の爪切りの必要性やポイントについて紹介しました。

爪とぎやグルーミングなど、自分のケアを自分で行える自立心の高さも猫の魅力です。さらに飼主が手を加えてあげることで、今よりも安全に快適に暮らせるようになります。

最初は爪切りが苦手な子でも、根気強く向き合って少しずつ慣れさせることが大切です。なかなかコツがつかめないときは、獣医師さんやトリマーさんにも相談してみましょう。

 

◆この記事を解説してくださった獣医師プロフィール

ttm 医師

岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

猫の肛門しぼりについてもまとめているのでぜひチェックしてみてくださいね。

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