この記事は2024年6月時点の内容です。

まとめ
    • 動画から学ぶ馬の蹄ケア・装蹄師のお仕事
    • 装蹄師(そうていし)とは、馬の蹄のケアやメンテナンスを行なう仕事
    • 装蹄師が装着する蹄鉄(ていてつ)は、馬の脚を守る重要なパーツ
    • 人間の管理下にいる馬は、蹄鉄を装着することが必須

馬と人間の共生の歴史は長く、農業・交通・軍事などさまざまなシーンで文化を共にしてきました。日本では競馬や乗馬などのスポーツ・娯楽のシチュエーションで目にする機会が多いでしょう。

馬にとって脚は、命といっても過言ではないほど重要な部位です。今回は、馬の脚を守る「蹄鉄(ていてつ)」をつける装蹄師(そうていし)ついて紹介します。

普段の生活ではなかなか接する機会のない装蹄師の仕事を学び、動物との共生について考えてみましょう。

馬に蹄鉄(ていてつ)をつける装蹄師(そうていし)とは?

装蹄師とは、馬の蹄(ひづめ)のケアやメンテナンスを行なう職業です。

馬の蹄は、体の他の部位の病気や育成環境などの影響を受けながら、少しずつ劣化していきます。蹄の異常は命に関わる症状を引き起こす可能性もあり、馬の健全な心身を保つために装蹄師の仕事は欠かせません。

装蹄師が蹄に装着する蹄鉄は、蹄の破損を防止し摩擦を防ぐ役割があります。日常的なケアや蹄鉄の装着などを含む、蹄のプロフェッショナルが装蹄師なのです。

装蹄師のお仕事を動画で紹介

こちらの動画は、装蹄師の@umanootakeさんが馬の蹄鉄を装着する様子です。古い蹄鉄を外して蹄を削り、熱した蹄鉄を蹄に打ち付けます。

初めて見た人は、熱い鉄を蹄に付けたり釘を打ったりする映像に驚くかもしれません。しかし蹄は角質(ケラチン)でできているため、馬にとっての蹄は人間の爪のようなものであり、痛みはありません。

たった1つの蹄鉄を装着するだけでプロでも10分以上の時間がかかっており、日頃の蹄のメンテナンスがどれほど大変なのかがわかります。

動画提供:@umanootake

どんなところでお仕事するの?

装蹄師のおもな勤務地は、牧場や乗馬クラブ、中央・地方競馬などです。装蹄師として働くためには「認定装蹄師」の資格求められます。

装蹄師は昭和40年代までは国家資格でしたが、現在は民間資格へと以降しました。資格取得のためには、造鉄や飼養管理など幅広い知識を学びます。

馬の生産地で働く場合は、競走馬の幼駒や育成馬・休養馬・繁殖牝馬が対象です。競馬場の場合は、臨戦状態にある競走馬や予備軍が対象になります。乗用馬を対象にした装蹄師は、全国各地の乗用馬や競技馬の蹄鉄を担当します。

企業に勤める人も、独立する人もいる

装蹄師は、企業に勤める人もいれば独立する人もいる職業です。

組織や会社に所属する場合は、JRA(日本中央競馬会)やNAR(地方競馬全国協会)・牧場・乗馬クラブの職員などが挙げられます。一般的な会社員と同様に企業に勤務して給与を受け取ります。

独立する場合は、装蹄の料金と馬の頭数を掛け合わせた金額が収入です。頭数が増えれば当然収入も上がりますが、ケガや病気によって仕事が止まれば収入もなくなるリスクがあります。

資格をとったらすぐに独立できるわけではなく、技術を習得するためには一定の年数が必要です。

装蹄師のやりがいとは?

装蹄師のやりがいとしてあげられる点が、脚のケアを通して馬の心身のケアに貢献できることです。

例えばケガで立ち上がれなくなった馬や、歩くことが困難になった馬でも、装蹄師の技術によって再び自分の脚で歩き出せることもあります。もちろん、自分が装着した蹄鉄でレースに出場し、馬が素晴らしい結果を残すこともやりがいにつながります。

しかし装蹄師のにとっての最たる喜びは、やはり馬の幸福や健康に直接的に携われることではないでしょうか。

蹄鉄の役割や付け替え頻度とは

ここでは、装蹄師の仕事には欠かせない蹄鉄について解説します。

蹄鉄の目的は、おもに「蹄の保護・治療・能力の向上」の3つです。

馬の蹄は1ヶ月に約1㎝程度伸び、隙間に土や汚物なども溜まります。装蹄師の主業務である蹄の保護は、病気だけではなく傷や感染症から馬を守るためにも重要です。

馬に蹄鉄が必要な理由とは

馬は硬い蹄を持っており、草原を走ることで自然にすり減っていきます。しかし人間との共生の歴史が長くなるにつれて育成環境に変化が生じ、伸びる量とすり減る量のバランスが崩れてきてしまいました。

そこで求められたのが、蹄鉄の技術です。蹄が地面と接地する部分に鉄製(もしくはアルミニウム合金製)のカバーを付けることにより、すり減る量を防止します。

つまり蹄鉄は、馬にとって欠かせない靴のような存在なのです。

蹄鉄の付け替えはおよそ1ヶ月に1回

蹄鉄を交換するタイミングは、地方競馬の場合は約3週間に1回、乗用馬の場合は約1ヶ月半に1回程度とのことです。特にアルミニウム合金製の蹄鉄は劣化しやすいため、2~3週間に1回の付け替えが目安になります。

交換時期に蹄鉄が摩耗していない場合でも、定期的な付け替えが必要です。なぜなら蹄鉄の内側では蹄を構成する物質である角質が伸びており、形を整える必要があるからです。

蹄鉄に種類はある?

蹄鉄の種類は、おもに鉄製かアルミニウム合金製の2種です。

鉄製はアルミニウム合金製と比べて丈夫ではあるものの、重さが欠点になります。アルミニウム合金製は劣化しやすいですが、非常に軽いことが特長です。

そのためスピードを重要視する競走馬ではアルミニウム合金製を、乗用馬では鉄製を採用するのが一般的です。

また、治療の補助や肢勢(馬の脚の姿勢のこと)の矯正をサポートする際は、特別な蹄鉄が用いられるケースもあります。

ラッキーアイテムとも言われてアクセサリーにもなる蹄鉄

馬の脚を守る蹄鉄は、古くからラッキーアイテムとして愛されてきました。もともとは西洋を中心に広まった文化であり、現在もお守りや魔除けとして玄関に飾られる風習があります。

理由としては所説ありますが、蹄鉄を蹄に打ち付ける際、使用する釘の数が7本であることから「ラッキーセブン」になぞらえているそうです。また馬は人間を滅多に踏まないため、交通安全のお守りとしても親しまれています。

日本でも、インテリアやアクセサリーのデザインとして人気ですよね。ぜひこの機会に、蹄鉄のデザインを取り入れたファッションを楽しんでみてはいかがでしょうか。

世の中には色んな仕事がある!馬に関わる仕事について知ってみよう

今回は、馬の蹄のケアを行なう装蹄師について紹介しました。

馬は、誰しもが知っているほど有名な動物です。しかし多くの人は、馬の生態について知らないことがまだまだたくさんあるのではないでしょうか。

以下の記事では、生き物としての馬の特徴やお手入れの方法などを紹介しています。今回の記事で馬に興味を持った人は、ぜひ今回の記事と合わせて参考にしてください。

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