まとめ
  • 人間と馬の共生の歴史は5000年以上
  • 馬は臆病だけどおとなしくて穏やかな性格をしている
  • 馬は地球上でも数の少ない奇蹄目の動物
  • 馬の近くにいるときは大きな声を出したり、大きな物音をたてない

馬は干支にもその名を連ねている動物で、人と生活を共にするようになってからおよそ5000年以上になると言われている、人にとってとても身近な動物です。とはいえ、なかなか馬のことを詳しく知っているという人は少ないのでは? そこで今回は長年馬のお世話をしている芦峅(あしくら)ホースヴィレッジの中村さんに、馬について詳しくお話を聞いてみました。 穏やかなイメージのある馬ですが、接し方の注意点も!さらに、俊足で知られる馬たちの“脚”の秘密にも迫ります。 ◆取材・監修:乗馬インストラクター

中村 舞乃さん
・全国乗馬俱楽部振興協会 初級指導者 ・日本馬術連盟 A級騎乗者 乗馬歴は15年以上で、学生時代から馬術競技の障害をメインに取組んでいる。馬術競技は馬と人が一体となって取組む競技。日頃の馬との信頼関係が大切な馬術競技の魅力や、馬そのものの魅力に惹かれて今に至ると話す。
中村 塁さん
・全国乗馬俱楽部振興協会 初級指導者 ・日本馬術連盟 馬場B級騎乗者 芦峅ホースヴィレッジ代表。学生時代から馬術競技に取組み、現在も馬術競技に取組む人をサポートしながら芦峅ホースヴィレッジを運営している。

馬ってどんな生き物?その特徴とは?

馬は哺乳類の中でも数の少ない奇蹄目(きていもく)に属する動物です。美しいたてがみをなびかせながら走る姿は観る人の心を虜にします。 「馬はおとなしくて穏やかな性格の動物です。ただ臆病なところがあり、怖がりな一面を持っているため、大きな音に驚いてしまうことがあります」そう中村さんは話してくれました。

おとなしいイメージの馬だけど蹴られることがあるって本当!?

「穏やかな性格の動物なので、何もなければ人間を攻撃しようとするようなことはありませんが、大きな音などに驚いたりすると、自分の身を守るために後ろ足で蹴ることがあります。自然界では捕食される側の動物なので、逃げるための方法でもあるんです」 中村さんに馬に接する時の注意点を教えてもらいました。

  • 大きな音をたてない
  • 急に触らない
  • ゆっくりと動く
  • 真後ろから近づかない
  • 後ろに立たない

馬の視野は広いですが、真後ろだけは見えないため、死角から急にさわられたり声をかけられると驚いて蹴ることがあるそうで、注意が必要なのだと中村さんは話してくれました。

視野が350度もある?

馬の目は顔の左右にあり、別々に物を見られるのだそうです。その分視野は広いのですが、視野に重なっている部分が少ないため、距離感がつかみづらいのだと中村さんは言います。 「視野はかなり広く、350度くらい見えていると思います。ただ真後ろだけは見えないようで、その方向から急に声がしたり、急にさわられるとびっくりしてしまうので、真後ろからは近づかないようにしています」 後ろから近づいてはいけない理由は視野の広さにもあったようです。

日頃の馬のお手入れって何をしてる?

美しいたてがみやさらさらと風になびく尻尾、光沢のあるきれいな体など、馬はとても美しいイメージのある動物です。そんな馬の美しさを保つために、日頃から気をつけているのはどんなことなのでしょうか? 馬の美しさの秘密を、中村さんに聞いてみました。

たてがみや尻尾のお手入れってどうしてる?

いつもサラサラに仕上げてあるしっぽやたてがみですが、普段はどうやってお手入れしているのでしょう? 尻尾やたてがみは毎日ブラシをかけてあげています。尻尾やたてがみだけシャンプーしたり、毛をサラサラするスプレーをかけたり、背が届かない場所は脚立に乗ってお手入れしています。特に競技会の前は念入りに。白い馬は汚れが目立ってしまうので、よりマメなお手入れをしています」 やはりあのサラサラの尻尾やたてがみは毎日のお手入れの賜物だったのですね!

馬は甘いものが大好物?虫歯にならない?

馬といえば人参が好き!そんなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか? 実際にどんなものが好きなのか中村さんに聞いたところ、人参はやはり好きなのだそうです。それ以外にりんごやバナナも好きなのだとか。草もよく食べるそうで、柔らかいものが好きなのだと話してくれました。 甘いものをたくさん食べていると虫歯が気になるところですが、馬の歯は1年に2〜3mmほど伸びるのだそうで、歯が尖ってきてしまうため、整歯する必要があるのだそうです。そのため、年に1度は歯医者さんに診てもらい、整歯を行います。虫歯がある場合は治療することもあるそうですが、めったに治療が必要なほどの虫歯にはならないそうです。

馬の足には秘密がいっぱい!

馬は哺乳類の中でも珍しい奇蹄目の動物です。奇蹄目の動物(蹄の数が奇数である動物)は馬以外にはサイとバクだけと言われています。 馬の蹄(ひづめ)にはどんな役割があるのか?馬の蹄にはどうして蹄鉄が必要なのか?馬は立ったまま眠るとも言われており、眠っている時も馬の脚はどのように使われているのか?そんな馬の脚について聞いてみました。

いつも脚を1本休めている?3本足で眠る?

馬は警戒心の強い動物のため、立ったまま眠る馬もいるのだそうです。立ったまま後ろ脚を左右順番に休めながら眠る馬や、人がいると眠らない馬も。馬が爆睡している姿を見ることはめったにないと中村さんは言います。 「朝などたまに寝た形跡が残っていることもありますが、そんな形跡すら残さない子もいます。だいたいの子は1回30分程度の睡眠を何回かに分けてとっているようです。 よほど安心していると横になって眠ることもあるようです。日なたぼっこや砂浴びををしながらごろんと転がって眠る姿はよく見ますが、眠ってしまうことはめったにはないですね」 警戒心の強い馬が安心して日なたぼっこをしながら眠ってしまう姿なんて、かわい過ぎて眺めているだけで幸せになれそうですね!

馬の蹄は中指が進化したもの!?

馬は哺乳類の中でも馬とサイとバクだけが奇蹄目に分類される動物です。奇蹄目に対して偶蹄目と言われる動物は、有蹄動物のほぼ90%を占めると言われており、牛・ヤギ・羊・イノシシ・キリンなどが偶蹄目に分類されています。 偶蹄目は蹄の先が2つに割れているのに対して、奇蹄目は蹄の先が割れていないことが特徴です。 馬の蹄は中指が変化したものなのだそうで、人間の指が一番長いように、地面を蹴るのに一番有利な指が変化し、より速く走れるように進化したのではないかと考えられているそうです。

馬の装蹄(そうてい)ってなんのために必要なの?

より速く走るために進化した馬の脚と蹄。爪を保護するために必要なのが蹄鉄(ていてつ)なのだと中村さんは話します。蹄鉄には蹄を保護して運動能力を向上させる役目があります。 蹄には1頭1頭特徴があり、それぞれの蹄に合わせて蹄鉄が付けられます。素材は鉄がほとんどですが、サラブレッドなど一部の競走馬には軽い素材のアルミが使われるそうです。それぞれの馬の蹄の特徴を理解してくれていることは大事なので、芦峅(あしくら)ホースヴィレッジでは基本的には同じ装蹄師さんに装蹄をお願いしているそうです。 おおよそ月に1回、1頭1時間程度の時間をかけて蹄鉄を付け替えるのだとか。蹄の手入れは毎日必要で、ケガの予防にも役立ちます。蹄に合った蹄鉄を付けることで、馬は歩きやすくなるのだと中村さんは話してくれました。

装蹄師(そうていし)ってどんなお仕事?

装蹄師は馬の蹄を削って形を整え、そこに蹄鉄を付ける仕事です。1頭1頭微妙に違う蹄の形に合わせて形を整え、蹄が傷ついていないか、病気になっていないかなどをチェックしながら蹄鉄を付け替えます。 馬に合った蹄鉄を付けることには、蹄の保護・ケガの予防・運動能力の向上・日常的な歩きやすさなど、いろいろな役目があるのだそうです。

馬のかわいいところを教えて!

最後に、中村さんの思う馬のかわいいところについて、思い切り語ってもらいました。 「馬は1頭1頭個性があって、相性もあります。仲のいい子同士で誘い合うようにして放牧にでたり、じゃれあったりしている姿はとてもかわいいです。 遊びの好みも1頭1頭違って、同じように放牧に出しても、ずっと日なたぼっこしている子もいれば砂浴びをしてゴロゴロしている子もいます。リラックスして遊んでいる姿はいつ見てもとてもかわいいですね。 放牧は気分転換やストレス解消のために必要なのですが、楽しみ方はみんな違うんです。仲間といつもじゃれあっている子もいれば、1人でいたい子もいて、見ていると飽きません」 とても楽しそうに中村さんは話してくれました。

知っているようで知らない馬の生態を学ぼう!

よく知っているようで意外に知らない馬について、いろいろ教えていただきました。 馬の蹄鉄の意味や蹄の進化の理由など、今までなんとなく当たり前に思っていたことにもちゃんと必要があって今の形になったことがわかりました。 人間との共生の歴史の長い馬。現在の生活ではなかなか乗ることもふれあうことも少ないですが、ふれあう機会があったらこのお話を思い出して馬に接してみてください。

◆施設情報

乗馬レッスンのほか、ホースレンタルやウエディングフォトなどを扱う乗馬クラブ。経営している中村さんご夫妻は馬術競技の経験も豊富で、乗馬レッスンのほかに、障害レッスンなども可能。馬に乗ってのウエディングフォトにも対応してくれる。
芦峅(あしくら)ホースヴィレッジ
所在地:富山県富山市婦中町友坂318 スターライトステーブルス内
料金:引き馬(1周) 1,000円(中学生以下500円)
常歩コース(20分)3300円
体験レッスン(20分)3300円 ※1回限り
通常レッスン(40分)6,600円(中学生以下5,500円)
障害レッスン(40分)8,800円