この記事は2024年7月時点の内容です。
- 自然界には、オスが中心的な子育てをする生き物も存在している
- 120日間飲まず食わずの壮絶な子育てをするオスも!
- オスが子育てをする動物を知り、生き物への理解を深めよう
自然界には、認識されているだけで約175万種類もの生き物が存在しています。生態や環境ごとに生殖・子育ての方法も多岐に渡りますが、多くの生き物はメスが子育ての役割を担います。しかし、なかにはオスが主体的に子育てをする生き物もいるものです。
今回は、オスが育児をする意外な動物9種類を紹介します。比較的身近な生き物から、意外なあんな生き物まで、微笑ましい「お父さん」の姿を見せてくれます。人間の父子関係とは一味違った、面白い生き物たちの子育てを学んでみましょう。
目次
家族と一緒にオスが子育てする哺乳類
オスが子育てする生き物の中から、まずは哺乳類3種類を紹介します。
- ヨザル
- マーモセット
- オオカミ
体の作りや食べるものも、私たちと近い哺乳類。彼らがどのように生き、子育てを行うのかをチェックしてみましょう。
母親想いの子育てをするヨザル
人間に近い霊長目にも、オスが子育てをする生き物がいます。オマキザル科のヨザル亜科・ヨザル属のヨザルです。あまり聞き慣れない動物だと思いますが、どんな動物なのでしょうか?
ヨザルってこんな動物
ヨザルは、ブラジルやコロンビアなどに生息する夜行性のサルです。昼間は木の洞(うろ)や目立たない場所で眠り、夜になると活発に動き出します。跳躍力に優れており、30〜40cm程度の小さな体で4mほどの樹の間も飛び回れるのだとか!
授乳以外はずっとパパと一緒!ヨザルの子育て
ヨザルのオスは、生まれたばかりの100g程度の子どものお世話をします。移動するときは子どもを背中に乗せ、授乳以外はほとんどオスが面倒を見るようです。オスが子育てをする理由は、出産後のメスの負担を増やさないためだといわれています。ヨザルのコミュニケーション力の高さがうかがえる特性です。
家族愛にあふれた子育てをするマーモセット
ヨザルと同じく、霊長目のマーモセット科に属する動物もオスが積極的に育児に参加する動物です。マーモセットの生態とその子育てについて紹介します。
マーモセットってこんな動物
マーモセットは、網霊長目マーモセット科に属する動物の総称です。ブラジルやアマゾン川付近などの熱帯多雨林を中心に住み、集団で生活しています。鳴き声は一見小さく聞こえますが、実は人間が可聴できる周波数を超えた声(超音波)を用い、頻繁にコミュニケーションをとっています。
家族で助け合い、支え合うマーモセットの子育て
マーモセットの集団は、母・父・子どもたちのファミリーで構成されることが特徴です。オスだけではなく、兄弟・姉妹も協力しながら家族で支え合って子育てをしています。家族同士での食べ物の分け合いや声でのコミュニケーションなど、人間と類似する行動が観察されています。
家族で協力して子育てをするオオカミ
イヌ科・イヌ属のオオカミ。オオカミが人間に飼い慣らされて家畜化されたものが犬だという考え方が一般的だと思います。犬とは違う、野生に生きるオオカミの生態と子育てとは?
オオカミってこんな動物
オオカミは、いわずと知れたイヌ属の哺乳類です。一般的なオオカミとはハイイロオオカミを指し、ユーラシア大陸や北アメリカに生息しています。一夫一妻と子どもたちという家族の群れで生活しており、成長した子どもたちは自らの群れをつくるために家族の元を離れ、放浪の旅に出ます。
オスを筆頭に群れで子育て!オオカミの子育て
オオカミの子育ては、オスや他の家族たちが食べ物を与えたり、遊び相手になったりすることが特徴です。母親のオオカミが狩りに出かけている間も、他のオオカミが代わりに面倒を見ます。オオカミの子どもは、オスをはじめとする群れ全体で大切に育てられるのです。
オスが命懸けの子育てをする鳥類
次は、オスが子育てする鳥類3種類を紹介します。
- エミュー
- アメリカレア
- コウテイペンギン
鳥は身近な生き物ですが、飼育したことがない人にとっては少し遠い存在でもあります。なかでも変わった子育てをする鳥たちを通じて、鳥の生態の面白さにふれてみましょう。
オスが命を削って子育てをするエミュー
世界で2番目に大きいと言われる鳥類のエミューオスは、献身的な子育てをする鳥です。ここではエミューとはどんな鳥なのか、どんな子育てをするのかを紹介します。
エミューってこんな動物
エミューは、オーストラリアに生息する二足歩行の鳥です。ダチョウに次ぐ体高(平均1.6~2m)を持つ大型の鳥で、空を飛べない代わりに時速50kmの早さで走ります。人間に対しては比較的温厚な性質を持ちますが、他の動物には強い警戒心を持っています。
ほぼ2ヶ月間飲まず食わずで卵を守る!エミューの子育て
エミューのオスは、まさに動物界の「イクメン」です。メスは産卵を終えると立ち去ってしまうため、卵を温めて孵すのはオスの役目なのです。約60日間も飲まず食わずで卵を守り、その間はなんと排泄もしません。孵化後もオスと雛は約7ヶ月もの間一緒に生活し、生きるために必要な手段を子どもに教えます。
全身全霊でオスが子どもを守るアメリカレア
エミューに似て大きな鳥ですが、ヒクイドリ科のエミューとは違い、レア科レア属の鳥であるアメリカレア。あまり聞き慣れないアメリカレアの生態と子育てとはどんなものなのでしょう?
アメリカレアってこんな動物
アメリカレアは、南米で最大の野鳥です。一夫多妻制で、メスたちが共同の巣にどんどん卵を生み落としていく生態が特徴です。同じ巣に生み落とされた卵は、最大でなんと130個の記録が残っています。
大量の卵もオスが温める!アメリカレアの子育て
巣に生み落とされたすべての卵は、1匹のオスが面倒を見ます。大量の卵を抱きかかえて温め、子育てまで担当するのです。アメリカレアの卵は約6週間で孵化し、オスは雛の安全を守りつつ獲物を獲る方法を教えます。子育て中のオスは警戒心が高く、母鳥のメスにさえも攻撃的になります。
120日の絶食!壮絶な子育てをするコウテイペンギン
コウテイペンギンのオスが子育てに参加することについては知っている人も多いことでしょう。その子育ての様子は本当に壮絶です!
コウテイペンギンってこんな動物
コウテイペンギンは、南極大陸で生活するペンギンです。エンペラーペンギンとも呼ばれ、魚・イカ・オキアミなどを食べながら生活しています。潜水スキルが高く、餌を探すときは深い場所まで12分以上も潜ります。南極の厳しい寒さから身を守るために群れを形成し、お互いに体を寄せ合う生態が特徴的です。
極寒の中で省エネモードの120日!コウテイペンギンの子育て
コウテイペンギンは産卵時期になると、集団で50km以上歩き内陸を目指します。産卵したメスが餌を獲りに海まで往復する間、オスは約60日間飲まず食わずで卵を温めます。メスが戻るまでの間、オスは体力を消費しないために眠るように過ごすのだそうです。
メスが戻ってきたらオスも海に餌を探しにいきますが、食べ物にあり付けるまでの絶食期間はトータルで脅威の約120日間。極限の自然環境が織りなす、凄まじい子育てだといえるでしょう。
オスが献身的な子育てをする水の中の生き物
ここでは、オスが子育てする水の中の生き物3種類を紹介します。
- オオサンショウウオ
- タツノオトシゴ
- セーシェルコオイガエル
とくに上の2種は「名前は知っているけれど詳しい生態はよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。水中生物ならではのミステリアスな生態にふれつつ、子育ての秘密を学んでみましょう。
オスが体を張った子育てをするオオサンショウウオ
日本の特別天然記念物にも指定されているオオサンショウウオ。その生態にはまだ謎も多く、名前は知っているけれど、どんな動物かよくわからないという人も多いのでは?
オオサンショウウオってこんな動物
オオサンショウウオは、世界最大の両生類です。川に住んでいますが、魚ではなくイモリやカエルの仲間になります。夜行性であり、昼間は暗がりでじっと息を潜め、夜になると元気に泳ぎだします。水族館でも見かけることが多い生物で、つぶらな瞳と短い手足、たくましい体のギャップが魅力的です。
子育て準備は巣作りから!オオサンショウウオの子育て
オオサンショウウオは、オスが掃除した洞穴の中に巣を作り、そこにメスが産卵します。卵を産む場所の確保からオスが協力するだけではなく、オスは孵化するまでの約1ヶ月間、天敵から卵を守り、常に新鮮な水が卵にいき届くように水を掻き回して過ごします。
卵を狙ったカニやカメを追い払い、孵化後も2ヶ月ほど子どもと一緒に過ごします。体外受精する生き物のなかで、これ程までにオスが子育てに関わる生き物は稀であり、極めて珍しい動物です。
神秘!オスが赤ちゃんを産むタツノオトシゴ
水中にふわふわと揺れるように浮かぶタツノオトシゴ。水族館でその姿は見たことがあるけれど、どんな子育てをしているかまで知らない、という人も多いのでは?そんなタツノオトシゴの神秘の子育てを紹介します。
タツノオトシゴってこんな動物
タツノオトシゴは、ヨウジウオ科タツノオトシゴ属の魚の仲間です。水族館の人気者でありながら、伝統的な漢方の材料としても知られています。環境変化に敏感な生き物で、沿岸域の環境破壊によって生息数が減少傾向にあります。タツノオトシゴの生息量は、その地域の環境変化におけるバロメーターの1つです。
出産もオスの仕事!?タツノオトシゴの子育て
タツノオトシゴは、なんとオスが赤ちゃんを出産します。オスのお腹には育児嚢(いくじのう)という袋があり、メスが生んだ卵を保護する役割があります。卵を受け取ったオスのお腹は、数週間後にはちきれんばかりに膨れ上がり、大量の稚魚(一度に約2,000匹!)を放出するのです。
安全第一の子育てをするセーシェルコオイガエル
カエルは誰でもその名前を聞いたらすぐに思い浮かべることのできる動物です。でもセーシェルコオイガエルって?日本ではあまり知られることのないカエルですが、その子育ての内容はちょっと変わっているんです。
セーシェルコオイガエルってこんな動物
セーシェルコオイガエルは、おもに熱帯雨林の落ち葉のなかに生息するカエルです。一般的なカエルと同様に卵からはオタマジャクシが生まれますが、変態して小さなカエルに成長するまでは親カエルの背中に乗って生活します。
名前の通り子どもたちを背負うセーシェルコオイガエルの子育て
セーシェルコオイガエルの子育てでは、オスが背中の育児室(鳴囊:めいのう。オスのカエルが持つ柔らかな皮膚の膜)でオタマジャクシを育てます。鳴囊の中が子カエルでいっぱいになるまで面倒を見、変態終了まで世話をするケースも。環境によっては、卵の時期から体に付着させて外敵から守る場合もあります。
どの動物も、みんな素敵な「お父さん」!
今回は、オスが子育てする生き物を9種類を紹介しました。
子どものために絶食をしたり、排泄を我慢したり、外敵を追い払ったり、卵を温めたり……。自然界のオスたちは、時に命を賭してまで我が子を守ります。
壮絶な子育ての背景に隠された環境を知ることで、生態への理解に近づけます。今日もどこかで奮闘する「お父さん」たちに想いを馳せながら、動物たちの不思議について学びを深めていきましょう!
以下の記事では、2023年最新版日本の絶滅危惧種についてまとめています。気になる方はぜひチェックしてみてください。