まとめ
    • 馬術競技は動物と一緒に競う数少ない国際競技
    • 馬術競技は大きく分けて3種類
    • 馬と人の息の合った演技が馬術競技の魅力
    • 馬術競技にも資格がある

馬術競技は国際大会もある競技になっているため、聞いたことがある人も多いと思います。でも競技内容まで詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか?

「聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない」そんな人にもわかるように、馬術競技について芦峅(あしくら)ホースヴィレッジの中村さんに解説してもらいました。

ジャンプの美しさや技術はもちろん、馬と人との信頼関係も見どころの馬術競技。実際に競技にも出場する中村さんが語る馬術競技の魅力は必見です!

馬術競技は何を競う競技?

馬術競技は世界的なスポーツの祭典で行われる競技の中で、唯一動物と一緒に行う競技です。また男女の区別がなく、同じ条件のもとで男女が同じ競技を行うことも特徴です。

馬術競技には主に3種類の競技があり、それぞれ採点の基準は違いますが、共通の見どころとしては、手綱捌き・脚の使い方・体重の移動などにより馬にいかに小さな動きで的確に指示を出すのかという点と、それに対する馬の反応になります。人の指示と馬とのコンビネーションと信頼関係が織りなす演技が何よりの見どころなのだと中村さんは話してくれました。

馬術競技とは?出場するのに資格は必要?

馬術競技には大きく分けて3つの種目があります。

  • 馬への指示とその馬の動きの美しさを競う馬場馬術競技
  • 大小さまざまな障害を飛び越えるダイナミックな障害馬術競技
  • 3つの競技要素を3日間にわたって行う総合馬術競技

それぞれの競技会はおおよそ月に1〜2回程度行われており、大会に出るのには資格が必要な場合があります。

また乗馬の資格には2種類あり、全国乗馬倶楽部振興協会の発行する各種1級〜5級資格と、日本馬術連盟の発行するA〜C級資格があります。

全国乗馬倶楽部振興協会の資格は乗馬の技量を測るもので、日本馬術連盟の資格は公認競技に出場するために必要になる資格です。

2種類の資格には互換性もあり、全国乗馬倶楽部振興協会の1級は日本馬術連盟のB級に移行が可能なのだそうです。

人馬一体の華麗な動きが見どころの馬場馬術競技

馬場馬術競技について、観ていて動きの美しさや、統制のとれた感じはわかりますが、ルールやどこに注目すればいいのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか?

そんな馬術競技の見どころについて中村さんに聞いてみました。

「競技は20m×60mの長方形の競技場で行われます。演技の内容が決められている規定演技と、一定の決められた動き(エレメンツ)を組合せて構成を決め、そこに音楽をつけて行う自由演技があり、演技の正確さと美しさを競います。

常歩(なみあし)・速歩(はやあし)・駈歩(かけあし)の3種類の歩き方を基本として、リズムに合わせてステップを踏みます。調教された馬がまるでダンスをするように演技する姿の美しさには目を見張るものがあります。

そんな人馬一体の美しさにぜひ注目して観てほしいですね」

人と馬の息の合ったジャンプが魅力の障害馬術競技

何となく「馬が障害物を上手く越えられれば点数が高くなりそうだな」くらいの想像はできますが、何をすると点数につながるのかなど詳しくはわからないのが障害馬術競技ではないでしょうか。

こちらも実際に競技も行う中村さんに、詳しく障害馬術について話してもらいました。

「競技場内に設置された大小さまざまな障害を、決められた順番に飛越(ひえつ)し、規定の時間内に走破することが求められます。途中に障害物の落下・馬の停止・不従順などのミスがあると減点対象になります。

障害物は大きいもので高さ160cm×奥行き200cmとかなり大きい物も。ちょっとタイミングが合わないとミスにつながってしまうため、選手は踏切位置ぴったりに馬を誘導することが求められます。難しい障害を飛び越える選手と馬の姿は見応えあると思います」

障害馬術競技をメインで行うという中村さんならではのお話をしてくれました。

躍動感あふれるダイナミックなジャンプは本当に見応えがありそうです!

3日間にわたりタフさと頭脳を競う総合馬術競技

馬場馬術と障害馬術の両方をやる競技なのかなと思っていたら、もっともっと奥の深い競技の総合馬術競技

この競技の奥の深い魅力について話してもらいました。

「馬場馬術と障害馬術にクロスカントリーを加えて競技を行う総合馬術競技。3日間にわたって同一人馬で競う競技です。最終的な減点の少なさを競います。

3日間かけて行われる競技のため、人馬ともにコンディションの調整やスタミナの配分にも気をつけなければなりません。

一番の見せ場となるクロスカントリーは、野外に設置された40を超える障害のあるコースを走り抜けます。水に入るような障害も設置されており、コースをどこまで攻めて走り抜ければミスなく行けるかを考えながら進む、頭脳戦でもあります。

その日の馬と人と競技場のコンディションを考慮に入れて、コース取りを考えます。

時速30kmを超えるスピードで野外の障害コースを走り抜ける迫力満点の競技です」

3日間かけて行う競技というのも驚きましたが、馬も人も交代できないというのもびっくりでした!

体も心も強くないとできない競技だということがよくわかりました。

馬術競技の採点ポイント・面白さとは?

実際に競技を行う際の採点方法はどのようになっているのでしょうか?

採点方法を知ってこそ、競技を観る際の面白さもわかるというもの。

競技を観る視点と競技者としての視点の両方をあわせ持つ中村さんならではのお話を聞かせてもらいました。

競技によって違う馬術競技の採点方法

競技の内容についてはだいたい理解できたと思うのですが、競技の内容をどう採点して順位をつけるのでしょうか。

次にその採点方法について聞いて中村さんに解説してもらいました。

「競技によって採点方法は違います。

馬場馬術は複数の審判が各動きにつき10点満点の採点を行い、それぞれの得点を満点で割ったパーセンテージの大きさで順位がつきます。

障害馬術競技とクロスカントリーは合計の減点の少なさを競います。障害物を落下させたり、馬の停止や不従順などがあると減点されます」

競技によっても採点方法が違うんですね。

馬術競技の面白さはココ!

10歳から乗馬を始め、大学時代は障害馬術競技をメインに活動していたという中村さん。馬術競技の魅力についてお話を聞いてみました。

「馬術競技は馬と人の息が合わないと落馬も増えますし、何よりも馬との信頼関係が大事な競技です。私も今まで何度も落馬しましたし、うまく行かないこともありましたけど、そのたびに馬が頑張ってくれる姿を見て「自分も頑張ろう!」って思ってきました。

馬術競技は馬と人が一緒に戦うスポーツです。馬との信頼関係が何よりも大切で、馬術競技は信頼がなければ成立しません。

馬術競技は馬の演技の美しさとともに、人と馬の信頼関係を目にみえる形で見せてくれる競技だといえます。その信頼関係をぜひ感じていただきたいですね」

実体験をともなったお話は説得力があります。馬術競技を観るときはぜひ、その辺りを観てみたいと思います。

競技に出られる馬に適性ってあるの?

いろいろな競技に出場する馬にも適性はあるのでしょうか?競技向きの馬やそうでない馬などについて聞いてみました。

競技によって適性も違う!競技馬とは

それぞれの競技によって競う内容も違うため、馬の適性にも違いがあると中村さんは言います。その辺りを掘り下げてお話を聞いてみました。

「馬術競技に出場する馬は、品種によって向き不向きがあります。低めのクラスだと元サラブレッドもいます。

障害馬術競技に出場する馬には障害を飛び越えるために必要な勇気や、気持ちの強さが求められます。

総合馬術競技に出場する馬にはメンタルの強さと同時にスタミナも必要になります。

馬術競技全般にいえることですが、高いクラスに出場する馬は生まれた時から競技用に調教された馬がほとんどですね」

馬術競技の見どころを教えて!

実際に障害馬術競技に出場してきた中村さんに、馬術競技の見どころについて聞いてみました。

「とにかくなんでも馬と一緒に行う競技です。口で話すことはしない馬ですが、感情表現はとても豊かな動物なんです。その馬の顔の表情や耳の動きにうれしそうな表情が出ますし、とても素直に人と一緒に競技を頑張ってくれます。

うまくいく時もいかない時も、馬と一緒に分かち合えることが何よりも魅力の競技です。

馬の動きの美しい動きももちろん見どころですが、人との信頼関係やコミュニケーションの取り方、人馬の一体感を見てほしいです」

そう中村さんは話してくれました。

馬と人との信頼関係を魅せてくれる馬術競技

馬と人が一体になって初めて越えられる障害競技や、的確な指示で規定通りの動きをする馬場馬術競技、野外で行われるクロスカントリー。どの競技も馬と人の信頼関係が全ての土台になっています。

華麗な馬の演技とともに、その演技を支える人とのコミュニケーションが見どころです。

また馬術競技は国際大会の中でも珍しい、動物と一緒に戦う競技です。

これからの国際大会でも競技を観戦することはあると思うので、そのときには中村さんのお話を参考に、今までとはちょっと違った視点で観戦するとより楽しめるのではないでしょうか。

 

◆この記事の取材を受けてくれた乗馬インストラクタープロフィール

中村 舞乃さん

・全国乗馬俱楽部振興協会 初級指導者
・日本馬術連盟 A級騎乗者
乗馬歴は15年以上で、学生時代から馬術競技の障害をメインに取組んでいる。馬術競技は馬と人が一体となって取組む競技。日頃の馬との信頼関係が大切な馬術競技の魅力や、馬そのものの魅力に惹かれて今に至ると話す。

中村 塁さん

・全国乗馬俱楽部振興協会 初級指導者
・日本馬術連盟 馬場B級騎乗者
芦峅ホースヴィレッジ代表。学生時代から馬術競技に取組み、現在も馬術競技に取組む人をサポートしながら芦峅ホースヴィレッジを運営している。

 

芦峅(あしくら)ホースヴィレッジ

乗馬レッスンのほか、ホースレンタルやウエディングフォトなどを扱う乗馬クラブ。経営している中村さんご夫妻は馬術競技の経験も豊富で、乗馬レッスンのほかに、障害レッスンなども可能。馬に乗ってのウエディングフォトにも対応してくれる。

所在地富山県富山市婦中町友坂318 スターライトステーブルス内

料金

  • 乗馬

引き馬(1周) 1,000円(中学生以下500円)

常歩コース(20分)3300円

体験レッスン(20分)3300円  ※1回限り

通常レッスン(40分)6,600円(中学生以下5,500円)

障害レッスン(40分)8,800円

  • ウエディング

レンタル料 20,000円/1頭

スタッフ付き添い料 10,000円/1人

※頭数や騎乗の有無によりスタッフ人数は変動します

事前レッスン料 3,000円/1人

※完全予約制

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