まとめ
  • 犬の病気の種類は200種類以上ある
  • 犬種や犬の大きさによってもかかりやすい病気は違う
  • 毎日のスキンシップで早期発見できることも多い


犬を飼っている人にとって、自分の愛犬の体調管理は最大の関心事といえるのではないでしょうか。この記事では愛犬家に知っておいてほしい「犬の病気」について解説します。

犬の病気には、人獣共通感染症(Zoonosis)、犬種や品種によって発症しやすい病気、幼若期や高齢期などの年齢によって発症しやすい病気、性特有の病気などがあります。

このように種類も原因も多岐にわたる病気について、症状や対策などを獣医師の森先生に解説してもらいました。

◆取材・監修:獣医師プロフィール

森 聖(もり さとる)

帯広畜産大学畜産学部獣医学科 を卒業し、その後修士課程を修了。
獣医師の知識を活かし、40年以上にわたり塩野義製薬ほかの企業にて、動物薬のほか医薬品・植物薬の毒性検査と安全性の管理を担当。2016年からは自身の持つ動物に関する知識を動物愛護活動に活かしたいと、動物保護活動を行う団体や、動物病院やペットショップの健康診断などを精力的に行っている。

犬がかかる可能性のある病気は200種類以上ある

実は犬がかかる可能性のある病気は200種類以上もある(参考:犬の病気事典)のだそう。

この中でも特に飼育下の犬に多い病気について森先生に解説してもらいました。

犬が獣医師にかかることの多い病気10種

  1. 皮膚炎
  2. 外耳炎
  3. 胃腸炎
  4. 下痢
  5. 異物誤飲
  6. 腫瘍
  7. 心臓病
  8. 歯周病
  9. 骨折
  10. 膝蓋骨脱臼(パテラ)

参考:犬の傷病ランキング2021

上から病気の多い順になっています。皮膚炎は飼主が発見しやすいこともあり、どの年齢でも多く見られる病気です。

また、それぞれの病気にはかかりやすい犬種や体の大きさがあります。

それについては次の章でふれていきます。

重大な病気が隠れているかも!?気をつけたい愛犬の変化

病気に気づくためにやっておきたいことについて、森先生に聞いてみました。

  • 週1回の体重測定(体重の減少・増加)
  • 毛つや
  • 食欲
  • 便状態
  • 尿量
  • よだれ
  • 口臭
  • 目やに
  • 眼球の位置
  • 鼻汁
  • 運動後呼吸状態
  • 触診による体幹の体温
  • 体表のしこり
  • 散歩時の異常行動などの有無
  • 動画記録

森先生
森先生
毎日の状態の観察記録をつけ、狂犬病や予防接種時の前後に、定期的に健康診断を受けましょう。観察記録を健診時に持参することで、病気の早期発見にも役立ちます。

【犬種・大きさ別】気をつけたい病気

犬種はそれぞれに交配を続けてきた背景から、遺伝的にかかりやすい病気や、体の特性的にかかりやすい病気があります。

ここでは体型や遺伝的な要素を含めて、犬種によって気をつけたい病気について森先生に聞いてみました。

【全犬種共通】関節や心臓に負担がかかる肥満

近年の傾向として、メタボな犬が増えています。そのため関節・心臓・気管などの病気が増加していると森先生は言います。

森先生
森先生
生活習慣が乱れることで人間がメタボリック症候群になるように、犬もメタボになるのです。

犬が肥満になると、もともと持っている病気の要素が増幅され、体重の増加により関節を痛めたり、心臓に負担がかかったり、気管を圧迫したりする原因になります。

また近年増加しているミックス犬は、それぞれの犬種の遺伝的な病気になりやすいので注意が必要です。

【小型犬】椎間板ヘルニア・糖尿病・心臓病・パテラに注意

小型犬の多くは椎間板ヘルニア・糖尿病になりやすい傾向があります。これらの病気は肥満が原因になることが多いようです。

また、膝蓋骨脱臼(patellar luxation・通称:パテラ)にも注意が必要です。パテラは、膝蓋骨が外れる状態を指します。犬の膝蓋骨脱臼は、膝のお皿が溝から内側に外れる膝蓋骨内方脱臼、溝の外側に外れる膝蓋骨外方脱臼、両側に外れる両側性膝蓋骨脱臼の3種類があるのだそうです。

森先生
森先生

小型犬には膝蓋骨内方脱臼が多く、チワワ・ポメラニアン・トイ・プードル・パピヨン・ヨークシャテリアなどが膝蓋骨内方脱臼になりやすい犬種です。

膝蓋骨外方脱臼のパテラはチミニチュアダックスに多い病気です。

ほかにも小型犬のかかりやすい心臓の病気に心内膜炎や、僧帽弁閉鎖不全などの弁膜の障害があります。

小型犬は大型犬に比べ、歯周病にかかる犬が多いことが、原因になっていると考えられてます。

小型犬の心拍数の平均は60〜80回/分といわれているため、安静時に心拍数をはかり、80回/分を超えていたら病院の受診を考えましょう。

【大型犬】心臓の病気に注意が必要

森先生
森先生
大型犬には心臓に病気を持つ犬が多く、大型犬の心臓疾患の場合、まず心臓の筋肉が薄くなり収縮力が低下する拡張性心筋症を疑います。

一部の拡張性心筋症は心内膜炎も併発している場合もあるため、合わせて検査が行われることが多いでしょう。

【犬種別の傾向】

  • ドーベルマン・ピンシャー:咳から始まり、心室性早期拍動や頻脈で失神することがある
  • ボクサー:心室性不整脈の早期拍動が多い
  • グレートデン:腹水がたまりやすい傾向あり
  • ジャーマン・シェパード:肥大性心筋症で死亡するケースがある

心臓病を早期発見するためには、日頃から心音を聞く習慣をつけること。ドキンドキンという心音の場合は正常ですが「シャーシャー」や「ドシャー・ドシャー」というような心雑音が聞こえたら病院を受診しましょう。

大型犬も、犬種によってパテラに注意

心臓の病気以外の大型犬が気をつけるべき病気について、森先生に聞きました。

森先生
森先生
小型犬に限らず、大型犬もフラットコーテトレトリバーやグレート・ピレニーズなどはパテラにも注意が必要です。

大型犬のパテラの場合は、膝蓋骨外方脱臼になりやすい傾向があります。

【軟骨異栄養犬種】遺伝的に椎間板ヘルニアになりやすい

以下の犬種は軟骨異栄養性犬種に分類され、遺伝的に椎間板ヘルニアを起こす危険性が高い犬種です。

  • ダックスフンド
  • フレンチブルドッグ
  • ウェルシュコーギー
  • ビーグル
  • シーズー
  • コッカースパ二エル
  • ペキニーズ など

この場合、どのような症状に気をつければいいのでしょうか?

森先生
森先生

症状としては、

  • 脊髄が圧迫されることによる激しい背中の痛み
  • ふらつき
  • 麻痺
  • 感覚消失 など

があげられます。

この症状には1〜5までのグレードがあり、

グレード1:動きが悪くなる・震える・さわられると嫌がる

グレード2:背中を丸めながら歩く・ふらつく

グレード3:後ろ脚で立てなくなる・後ろ脚は動かせる

グレード4:痛みはあるが、後ろ脚を動かせない・立てない

グレード5:後ろ脚は動かず、立てない・痛みも感じない

このようにグレードごとに症状が分けられています。

椎間板ヘルニアの怖いところは、段階的に進むというよりは、突然グレード2から5になるということもあるという点なのだそうです。

愛犬の歩き方や普段の動きに注意して、特に上記の犬種を飼っている場合は、少しでも動きがおかしい場合は受診を検討しましょう。

日々の健康チェック・スキンシップが早期発見のカギ

今回は特に飼育下の犬に多い病気について、獣医師の森先生にお話を聞きました。

少しでも愛犬の様子がおかしいと気づいたら、病院に相談すること・診察を受けることが大切だとも先生は話してくれました。

毎日の健康チェック・観察・スキンシップを怠らず、愛犬に長生きしてもらって、楽しい犬ライフを続けましょう!

参考文献

1. 犬の病気事典

2. 犬の傷病ランキング2021

 

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