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- マンタにはオニイトマキエイとナンヨウマンタの2種類がいる
- オニイトマキエイを水槽で見られるのは沖縄美ら海水族館だけ!
- 沖縄美ら海水族館ではナンヨウマンタの飼育下繁殖にも成功している
- マンタは子宮の中でミルクを飲んで育っている
大きな水槽の中を悠々と舞うように泳ぐマンタの姿。多くの人がその姿を見た記憶を持っているのではないでしょうか?
マンタの多頭展示に世界で初めて成功した水族館が沖縄美ら海水族館だということを知っていますか?
沖縄美ら海水族館はマンタの飼育に関して、世界初をたくさん持っている水族館でもあります。
今回はそんな沖縄美ら海水族館のマンタの飼育員さんにお話を聞くことができました!
目次
ダイバー憧れの「マンタ」ってどんな生き物?
マンタはエイの仲間です。エイにはシビレエイ目・ノコギリエイ目・ガンギエイ目・トビエイ目の4つの目があり、マンタはその中のトビエイ目イトマキエイ属に属する大型のエイを指します。
その形や泳ぐ姿から、スペイン語のコート・毛布を意味する「Manta」に由来して、この名前がついたのではないかといわれています。
まだまだ謎の多い生き物マンタとは、どんな生き物なのでしょうか?
「マンタ」は実は2種類のエイの総称
マンタという呼び名は、実は2種類のエイを指す名称です。
以前はマンタというのはオニイトマキエイの1種類だと思われてきました。しかし近年、別の種類がいることが明らかになりました。それがナンヨウマンタです。
この2種類のマンタにはどのような違いがあるのでしょうか?
2009年までは1種類だけだと思われていたオニイトマキエイ
世界最大のエイであるオニイトマキエイ(別名ジャイアントマンタ)は、大きいものでは大きさ9m重さ3tにもなるといわれています。
口の部分が一般的なエイとかなり違い、腹部に口があるのに対してマンタは頭部前方にあります。また口の両脇に頭鰭(とうき)があり、プランクトンを捕食する際などに使われます。


沖縄美ら海水族館を訪れたら、ぜひこの2種類のマンタの口の周りを水槽内でじっくり見比べてみましょう。
世界で2番目に大きいナンヨウマンタ
2009年にマンタにはオニイトマキエイとは別の種類のエイが存在することが発見されました。
オニイトマキエイに比べるとやや小さめの体で、世界で2番目に大きなエイ、ナンヨウマンタです。
比べると、背中の白い模様が少し違い、オニイトマキエイはT字型の模様なのに対して、ナンヨウマンタの模様はV字型になっています。
マンタって個体識別ができるって本当?
全身が真っ黒なブラックマンタ
マンタにはお腹に黒い模様があり、この模様は1匹ずつ違うため、この模様で個体を見分けることができます。
またナンヨウマンタの中には、背中もお腹も全身が真っ黒な通称ブラックマンタと呼ばれる珍しい個体もいます。
沖縄美ら海水族館には、このブラックマンタも展示されています。
オニイトマキエイの展示は世界中でも沖縄美ら海水族館だけ!
世界中でオニイトマキエイとナンヨウマンタが同じ水槽で泳ぐ姿を眺められるのは、沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」大水槽だけなんです!
機会があったら、見分け方を参考に、実際に見比べてみてください。
世界初!ナンヨウマンタの水槽内出産
沖縄美ら海水族館にはマンタに関するもう1つの世界初があります。
それがナンヨウマンタの飼育下での出産です。
初めて沖縄美ら海水族館で飼育下繁殖に成功したのは、2007年6月のことだそうです。その後、2013年の6月まで、合計10回の出産が行われたのだと飼育員さんは話してくれました。
出産に伴って準備をしたこと、苦労したこと
世界で初めてのナンヨウマンタの出産には、わからないことも多く、苦労も多かったと思います。そんな初めての出産の時の様子を、飼育員さんに聞いてみました。

本当に何もかも手探りの状態ですから、妊娠期間も、いつ産まれてくるのかも全くわかりませんでした。
以前に死亡した野生のマンタの妊娠個体のお腹に、赤ちゃんマンタがいたことから、産まれて来るのは卵ではなく赤ちゃんであることはわかっていました。
しかしそれがいつ産まれてくるのか、何が必要なのかなどは全く未知の領域のため、出産の兆候が見えてからは、スタッフが24時間体制でお母さんマンタを見守ることにしていました。

出産が近づくと、この総排泄腔の向きが変わってきます。通常は横からは見えない器官が横から見えるようになってきて、だんだん開いてくるのがわかるようになります。とはいえ一度開いたからそのまま出産になるわけではなく、少し開いてまた閉じてという状態を繰り返し、総排泄腔が完全に開いたら、出産になるという感じです。

1回目の出産は、総排泄腔が開いた時点でカメラマンが水中に潜ったり、飼育員も総出で準備をして、閉館後の午後10時過ぎに出産になりました。
2010年からはエコーが使えるようになり、妊娠中のお腹の状態をエコーで確認できるようになったのだそうですが、それまではずっと目視で確認していたというのはすごいお話です。
マンタの赤ちゃんについて教えて!
実際に10回の出産を経て、沖縄美ら海水族館生まれの1匹のマンタが現在飼育(展示はされていません)されています。
マンタの赤ちゃんは生まれると数日で親と同じものを食べ始めるのだそうです。
そんなマンタの赤ちゃんについて飼育員さんに話してもらいました。
最初の出産の時に学んだのですが、生まれてすぐの赤ちゃんはまだ泳げません。そのため、そのままの水槽に置いておくと、他の魚やオスのマンタに追われて弱ってしまうことがわかりました。 移した水槽が小さいと、ガラスに体をぶつけたりして弱ってしまう原因になるため、水槽の大きさもある程度必要だということもわかっています。
25年のマンタ飼育実績でわかった、びっくりなマンタの生態ベスト3
常にマンタの研究の最先端にいる沖縄美ら海水族館の飼育スタッフだからこそ知っている、驚きのマンタの生態について聞きました。
その中でも特に驚いたこと3つを飼育員さんにあげてもらいました。
3位:マンタの赤ちゃんは、お母さんの半分もあるビッグサイズ!
世界初の飼育下での出産では、今まで謎に包まれていたマンタの生態の一部が明らかになりました。
ナンヨウマンタの妊娠期間が1年であることや、卵ではなく赤ちゃんを生むこと、1度の出産で1匹、全幅およそ1.8m・体重推定60kgもの大きな赤ちゃんを産むことが世界で始めて確認されたのです。
そのナンヨウマンタから生まれた赤ちゃんの全幅がおよそ1.8m・体重60kg。お母さんの半分の大きさの赤ちゃんが生まれてきたことになります。
人間で言うと身長80cmくらいの赤ちゃんが生まれてくる感じでしょうか。出産も大変そうです……。
2位:ナンヨウマンタは子宮内でミルクを与えている
2010年からエコーが使えるようになり、子宮内の様子を見ることでわかったこともあるのだそうです。
その中でも飼育員さんが驚いたというのが、マンタは子宮の中で赤ちゃんにミルクを飲ませているという、聞いただけでもびっくりしてしまうようなお話。


確かに哺乳類は臍帯を通じてお母さんから栄養をもらいますが、魚には臍帯がないので、代わりにミルクが子宮の中で吸えるようになっているのでしょうか。
魚類がお腹の中でミルクを吸収して育つというのは、本当に「目からウロコ」のびっくりな事実でした。
1位:マンタには学習能力がある
マンタには知能があるのだと飼育員さんは話します。
その具体的な内容を聞くと……。

1回の食事で、ひしゃくにオキアミを入れたものを4回に分けてあげるのですが、この4回というのをマンタはちゃんと認識しているようなんです。
4回食べると離れて行ってしまうので「今日は5回にしようかな」と、思っても、どこかに行ってしまってなかなか戻ってきてくれません。
逆に4回までは近くにいて次を待っているようなんです。
今回は3回で終わり!と思っても、マンタにじっと待たれてしまったらあげない訳にはいかなそうですね(笑)
ますます沖縄美ら海水族館の黒潮の海大水槽が見に行きたくなりました!
飼育員スタッフおすすめの「マンタのココが見どころ!」
見どころいっぱいのマンタですが、飼育スタッフならではの視点で「ここはぜひ見てほしい!」というポイントについて飼育員さんに聞いてみました。
こうすると、マンタが後方宙返りをしながらエサを食べるんです。後方宙返りを繰り返しながら食事をする姿はなかなか圧巻なので、その姿はぜひ見てほしいですね。
自由に海の中を泳ぐ姿の美しさに見惚れてしまうばかりで、その行動に意味があることまで思いつきませんでしたが、ちゃんと意味があるということに驚きです。
子宮ミルクや学習能力など、次々明らかになるマンタの生態から目が離せない!
25年以上の実績に裏付けられた、沖縄美ら海水族館が発信するマンタの生態について、飼育員さんに教えてもらいました。
びっくりするようなお話ばかりで驚いた人も多かったのでは?
海の中を悠々と泳ぐ優雅な姿のマンタは、まだまだ謎の多い生き物です。
これからも沖縄美ら海水族館が発信する新しいマンタの情報から目が離せません!
沖縄美ら海水族館のジンベエザメの飼育員さんにもお話を伺いました!あわせてチェックしてみてください!
◆今回インタビューに答えてくれたのは

沖縄美ら海水族館
所在地:沖縄県国頭郡本部町石川424 国営沖縄記念公園(海洋博公園)内
入館料:大人2,180円・高校生1,440円・小中学生710円・6歳以下無料